第46話悲惨は返答




砦に向かって巨大スピーカーから大音量の声で話しかけている。


『お前らの本国の海は、我々が制圧して運搬船は全て拿捕だほしている』


「こんなことで降伏してくると、思っているのかね」


「向こうは情報が無いのです。こっちが確かな情報を流し続けることで何時いつか信じますよ」


『軍船は160隻、運搬船は289隻も拿捕している。帝都で調べれば船が来てないことはすぐに分かる筈だ』


「もう軍船はいらん。拿捕してもバラン帝国は知らんからな」


「それならオーランド王国で使いますよ、後で待ったは無しです」


「こっちの領土には軍港が無いんじゃ、船を操る船員も居ないのにどうすればいい」


「それはわたしに言われても、そっちが欲しいと言いましたよね」


「それは、昔のことじゃなーー」


『食糧は既に無いのは分かっている。降伏すればたらふく食わせるぞ早く降伏しろーー』


砦で爆発が起きて、騒がしい音がここまで聞こだした。


「何が起きたのだ。こっちに攻めてくるのか?」


俺は無線を聞いてから答えた。


「砦で内乱が起きてますね。降伏派と撤退派で争ってます」


「なんと、その情報は真か?嘘偽りは無いのか?」


「嘘は言ってませんよ」


砦から沢山の兵が手を上げながら、向かってきていた。

走る元気も無いのだろう。

あとで知ったのだが、撤退派は上層部の一部の強行派で、兵の怒りを買って縛り首にあって殺されたらしい。


1日を食糧分配に費やした。

ひもじい思いをした兵達は、うまいうまいと食っていた。


次の日から領土を奪還だっかんに動き出した。

快進撃で進むが、敵兵は既に帝都へ逃げたあとだった。

食糧は我が領土から船を使って運ばれ、奪還した領土には食糧を配布しながら突き進んだ。


「帝都が見えてきたぞ」


しかし、あの綺麗な城は壊れ果てて、帝都の家々から煙が立ち上がっていた。

帝都から逃げ出した住民の言っていた話は、事実であったのかと居並ぶ重鎮は片膝を付き嘆いていた。

皇太子は皆の前に出て言い放った。


「皆!明日を目指して、今日のことは忘れろ。更なる栄光に立ち向かっていけーー」


号令に奮起して峠の頂上から、帝都に向かって駆け出してゆく。


帝都では、国別に陣地を作り、他国を牽制けんせいしつつどうにか少ない食糧で食いつないでいた。

ここまで攻めた途中でも多くの敵兵を捕虜にしつつ、前に出た皇太子はその国々に使者を送り出した。


降伏か徹底抗戦かを決めろと、使者は国々に言い放った。

国々の代表も分かっていたのだろう。

本国の救援がない、それは永遠にないと諦めていた。



その日から復興は始まった。

建設重機が持ち込まれ、廃墟になった町並みを壊し始めた。

それに同じくして、一隻の船が羅漢大陸へ向かって出航してゆく。

ラカン連合国の代表と従順な兵100人を乗せて。

代表と兵には、既に言い含めている。

偽り無く事の顛末を話すようにと、これも交渉の序盤の作戦であった。




あれから1ヵ月後、帝都の港の沖合いに、送り出した船が漂っていた。

回収された船の中は悲惨であった。

代表と兵100人が、首を切られて晒されていた。

なんと理不尽な返答であった。


捕虜になった兵も、その回収作業に参加していたので、驚愕きょうがくしていた。


「何故なんだ、なぜこんな惨いことが出来るのだ。俺は必死に戦ったのに、こんな目にあうなんて」


その話は捕虜の中にアッと言う間に広がって、捕虜は悲しみと怒りで遣る瀬無かった。



オーランド王国とバラン帝国の両国で話し合った結果、羅漢大陸を攻めることになった。


2週間後に分かったのは、今回の戦争に参加した兵や幹部達の家族は公開処刑なったらしい。

秘密裏に潜入した諜報員が、証拠の動画を24時間に及ぶ処刑風景を撮って送ってきた。

見ない方がいいと言ってもきかない捕虜達は、それを見て悲しんだ。

自分の家族で無いが、同じ運命をたどったと打ちひしがれていた。



その後の1週間後に、大船団で羅漢大陸に出航した船には、多くの捕虜が復讐に燃えて参加していた。

次の輸送待ちしている捕虜は、オーランド王国式訓練を受けていた。

捕虜全員がこの戦争に参加表明している。そして日夜訓練に励んでいる。


空母3隻、駆逐艦6隻、戦艦1隻が大船団を引き離して、20ノットで走り続けた。

ぐんぐんと距離が離れていき。既に点でしか見えない距離になってしまった。



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