第26話誰の子だ




トニー領都の邸宅で皆と食事している最中に、ララが目配りをして合図を送っている。


「何か言いたいことでもあるのか?」


「ニーナ、諦めてあなたの口から言いなさい」


「えーーと、子供が出来たみたいなの」


「何!誰の子だ」


「王子の子なの」


俺はガバッと立ち上がり、目の前の王子を睨み付けた。


「申し訳ない。しかしニーナが好きなんだ。わたしは絶対にニーナをきさきする」


「国王が許すと思いですか?」


何故なんだ、何故こうなったのか、たしかニーナに往復ビンタをされていた王子を思い出した。

それが切っ掛けなのか?王子はMなのか?訳が分からない。

ちょくちょく遊びに来ると思っていたが、こんなことに成っていたとは思いもしなかった。

どうすれば良いのだろ。王子を連れて電信室に入ってゆく。


「宰相を呼び出してくれ。今の時間だと執務室にいる筈だ」


「繋がりました。こんな遅くに失礼だと怒ってます」


「王子から直接、言って下さい。どうにかあやまって協力して貰う様に」


「分かっている。男としてのけじめは知っているつもりだ」


王子は汗だくになりながら、ああだこうだと説明して1時間も話し込んでいた。

結局、俺とニーナと王子は、明日の朝早くに大型ドローンで王都に行くことになってしまった。




城の2キロ手前で許可が下りるまで、空中で止まり続けている。


「やっと許可が下りました」


城の中庭に出来た真新しいヘリポートへ、徐々に高度を下ろして行く。

中庭に下り立つと、宰相と王妃と後ろには衛兵5人が待っていた。

俺は妙に居た堪れない気持になって来た。


「母上、申し訳ありません」


「わたしは、甘やかし過ぎたようね。あの子がそうなの気立ては良さそうね」


「あ、彼女がニーナです」


「始めまして王妃さま、ニーナです」


「わたしがこの子の母親です。礼儀も知らない息子で困ってます」


そして俺の顔をギロリと見てくる。

ああ、神経が疲れてくる如何にかしてくれ。

仕方ないので挨拶でもしておくか?


「王妃様にはご機嫌うるわしく」


「挨拶はもういいわ。本題を話したいので行きましょう」


城に入り、入りくねった廊下を進み通された部屋。

ここは防音魔道具が使われ、一切の音が外に洩れないようになっている。


「結論から言うわ。わたしはこの結婚には賛成よ」


「本当ですか母上」


「情けない声を出さないで、分かったわね」


「はい、すいませんでした」


「もう、甘えん坊なんだから。わたしは心配で仕方ないわ。だから反対しない理由ね」


「それはどのような理由で?」


「今回の大事件を貴族達は解決の糸口さえ見つけられなかった。危機感がなかったと言いたくはないわ、だからその子を王家に入れて危機感を作りたいのよ」


王妃は王妃なりに今回の事件を大きく捕らえているのだろう。

決められた人選で決められた結婚。そこには危機感はなかった。

国に対しての危機感と同列に考えて入るのだろう。



話しはトントンと進み、腹が大きくなる前に盛大に行なわれた。

ニーナは俺の養女として養子縁組ようしえんぐみをして、ニーナ・サルトスと名乗り結婚に望んだ。

俺はまだ独身だったのだが、王族も今回の貢献者こうけんしゃとして有名な俺と形なりにも関係を持てた形になる。

そして戦勝ムードが混じりあって、結婚ムードも高まった感じであった。

帝国の王子も結婚の場に参加したのも、色々な思惑があったのかも知れない。




トニー領都の邸宅で皆と食事している最中に、ララがポツリと言った。


「ニーナが居なくなって、寂しくなったね」


「ニーナはムードメイカーだったわ」


「彼女が居るだけで会話も弾んだわ。ニーナは今どうしているかな」


「わたし達って、もう頻繁に会えないのかな?」


話の節々で俺を見るのは止めてくれ、もう疲れてきた。


この夜は寝付けなく、もんもんとして寝返りうった時に、ドア向こうでコソコソと話し声が聞こえてきた。

なんだろうとドアを開けると、彼女ら4人が淫らな格好で立って言い争いをしていた。


そして、魔が差したのか一夜で4人と関係を持ってしまった。


そして暗黙のルールで1番に妊娠した人が正妻、2番目が第二夫人、3番目が第三夫人、4番目が第四夫人と決まってしまった。

そして夜の営みが激しくなる原因にも成ってしまった。



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