第27話:好感度の謎 14
「……あの、ジジさん。昨日の事でお話ししたい事があります」
「ほほほ。どうしましたかな?」
明日香はアルたちに昨日の事を相談し対策を講じた事や検証を重ねた事を告げる。
そして、住み込みで働く上で相談した事がジジの力になる可能性がある事も伝えた。
「伝えられるなら伝えたい、そう思って話をしているんですが……一つ、懸念があります」
「懸念ですか?」
「その……もしかすると、相談した案件のせいでジジさんを危険に晒すかもしれないんです」
「ほほほ。こんな老いぼれに何かするような輩が現れると?」
「もしかすると、です。なので、ジジさんが知りたくないと言うなら、私は黙っていようと思っています。押し付けるような形にはしたくないんです」
隠し事をしたくないというのは明日香のエゴである。メガネの事を知ったジジが危険に晒されるかもしれないという事はアルたちからも指摘されている。
ここでジジがメガネの事を知りたくないと言えば、明日香は何があっても黙っておこうと心に決めていた。
「ほほほ。ここまで言われると、気になってしまいますなぁ」
それでもジジは微笑みを絶やす事なくいつもの調子でそう口にした。
「……いいんですか?」
「構いませんよ。どうせ老い先短い人生ですからな。この年になって初めて知る事があれば、それを楽しむのも悪くはないですなぁ」
「そ、そんな怖い事を言わないでくださいよ、ジジさん」
「ほほほ。冗談ですよ」
苦笑いを浮かべる明日香にそう口にしたジジは、明日香が何を口にするのか興奮しており自然と彼女のように居住まいを正していた。
「……実は、私のメガネが魔導具みたいなんです」
「……ほほほ?」
「……それも、私専用の魔導具で他の人には使えないみたいなんです」
「……ほほ?」
「……相手の名前や私に対する好感度が見えるんです」
「……ほ?」
いつもと同じ笑い声なのだが、それが疑問形に変化している。これほど驚いているジジを見るのは初めてだった。
「その好感度も、アル様たちにどう伝えればいいのか分からなくて、あっちには私にとってプラスかマイナスが数値になって表示されるって言っています」
「なるほどのぅ。まあ、好感度という事になると、好意を持っているのかという話にもなってきますからな。相手が殿下であればなおの事、隠しておいた方が良さそうですよ」
「ですよねぇ~」
一国の第一王子であるアルが好意を持っているとなれば規格外の玉の輿に乗れるかもしれないが、そうなると自動的に相手は将来の王様の王妃になるという事である。
巻き込まれ召喚であり平民の自分にそのような立場が相応しくない事は重々承知していた。
「そうなると、儂の好感度はまあまあの数値なのですかな?」
「はい。イーライと同じで20でした。これが高いのか低いのかは分からないんですけどね」
苦笑しながらそう口にした明日香だったが、今では30になっている事も合わせて伝える。するとジジは嬉しそうに笑ってくれた。
「ほほほ。そうでしたか」
「相手の感情を盗み見ているような気がしないでもないんですが、今の私にはとても大事な魔導具なんです」
「そうでしょうなぁ。女性が一人で生きていくというのは、とても難しい世界ですからな」
そこからは検証した内容についても触れていき、ステータスの確認に関してはジジから鑑定して欲しいとお願いまでされてしまった。
「鑑定にはお金が掛かりますからなぁ。三十年以上前に鑑定して以来、一度もステータスを確認していないのですよ」
「それって大丈夫なんですか? その、色々と?」
「ほほほ。仕事に影響が出なければ問題はありませんよ」
自分の事を理解せずに仕事を続ける事に問題はないのかと心配したが、ジジが問題ないと言うからにはそうなのだろうと納得する。
その流れからジジを鑑定してステータスを伝えると、笑いながら喜んでくれた。
「ほほほ! 調合スキルのレベルが上がっていたようじゃなぁ」
「おめでとうございます、ジジさん!」
リヒトのステータスを鑑定した時に知った事だがスキルにはレベルが存在しており、1が最低で9が最高になっている。
ジジの調合スキルは8と非常に高いレベルを誇っていた。
「さすがはイーライが認める調合師ですね!」
「ありがとう。そうそう、明日からはアスカさんにも調合をしてもらいますからね」
「本当ですか! よろしくお願いします!」
話をする前は緊張していた明日香だったが、終わってみれば普段通りの笑顔に戻っていた。
明日以降の仕事も話題に上がり気分も高揚している。
メガネについての話が終わると少しの雑談を挟んで部屋に戻った明日香の気持ちは非常に晴れやかなものになっていた。
「……よーし、明日からまた頑張るぞ!」
気合いを入れ直した明日香はこの日、とても心地良い眠りにつく事ができたのだった。
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