7-97【ミオの心境】



◇ミオの心境◇


 ミーティアとジルさんが地下にあると言う【リヨール響窟きょうくつ】へ向かった直後、時間はそこまで巻き戻らせてもらう。

 俺はルーファウスと二人で、ジルさんの従姉妹いとこであるエリリュアさんに里を案内してもらう予定だったが、ここで俺は心底不安になっていた。


 そう、ミーティア……戦闘一人でするんだよな?

 大丈夫だろうか、死ぬほど心配なんだが。

 三ヶ月前にあんなことがあって生死をさまよった彼女に、また戦闘させるだなんて、正直言って俺は反対だったんだ。

 しかしジルさんも女王陛下も、大丈夫だ安心しなさいと、そう言うんだ。


「ティアに何かあったらどうすんだよ」


 と、俺は小声でそうつぶやく。

 ルーファウスはエリリュアさんに、里に生えている花の名前を聞いていた。

 それ、気になるか?


『――無理矢理にでもついて行けばよろしかったのでは?』


「……そう言うがなぁ。見た通り、俺は今、足手纏いだ。何ができる?」


『――壁になるくらいは』


 そんな冗談を言う。

 お前、丸くなったね。


「ひでぇ。つーか、肉壁になるくらいなら無理して能力使うわっ」


 冗談には冗談で返す。

 ウィズだって俺を行かせるつもりはないだろうし、俺だって能力を無理してまで使うつもりはないさ。


『――現在の魔力安定値は、二十三パーセントです。分かりやすく言うと、MP最大値が、通常の約四分の一です』


 少ねぇ……ほぼ何も出来ないな。

 【無限むげん】の消費魔力が一だとしても、二十回使えるかどうかだ。

 それに加えて、【極光きょっこう】や【紫電しでん】に【煉華れんげ】と言った、戦闘系の能力を加えたら、マジで数分持たないぞ。

 しかも【カラドボルグ】と【ミストルティン】のような、出現させるだけでも魔力を喰う代物があるんだし。


「やるせないな……」


 俺が彼女をサポートしてやれたら、助言を与える事が出来たら、どれだけ成長の助力になるのか……考えただけで……ん?

 サポート。助言。成長。


「……なぁウィズ」


『なんでしょうか、ご主人様』


「【オリジン・オーブ】発動の際に、俺の魔力を燃料にしたから……その【オリジン・オーブ】が体内にけているティアは、お前の声が聞こえるんだよな?」


『――そうですね。ここ最近の不調も、ミーティアの身体に異物認定されたご主人様の魔力が、ご本人の魔力と交じり合って複雑化し、そのせいで安定しないと言う現象です』


 異物って言うなよっ。なんかその……複雑になっちゃうでしょーが。


「……お前さ、ちょっとティアの所に行ってこないか?」


『……』


 もしかして、言い出すと思ってた?


「どうせ俺たちは里を案内されているだけだし、お前も少しだけこっちの解析は休んで、ティアの所でだな……」


『要するに、「ティアが心配だから俺の代わりにサポートしろ」ということですね?』


「……オブラートって知ってるか?」


 人が恥ずかしさを考えて、休めって言ってるのに。


『……了解しました。ミーティアの魔力も安定を始めていますし、ウィズが話を出来るのも時間の問題です……これもいい機会かもしれません』


「だろ?」


 よかった、ウィズが乗り気だ。

 こんなに頼もしい事も無いさ。


「こっちのことは完全に切り離していいから、ティアを頼む。あーっと、ジルさんには内緒な?俺がこそっとお前を送ったとか知ったら、俺が怒られるだろ?」


『怒りはしないと思いますが、了解しました』


 よし!それじゃあミーティアは頼む。

 怪我も無理もさせないでくれよ。

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