7-76【里までもう少し】



◇里までもう少し◇


 翌朝、旅に出て三日目……サーベラスとファルの調子を見つつ、俺たちはエルフの里を目指す。

 順調に進んでいるとは思っているが、今日は少しミーティアの体調がナナメだ。

 気怠けだるそうな表情と、少しだけ熱っぽい感じの息づかい。

 俺とジルさんは視線をわし、ペースを考え、休憩を増やしながら進んだ。

 幸いにして魔物の出現は少なく、今日の遭遇エンカウントは二回。

 全てルーファウスが撃退し、つつがなく進行……ルーファウスも考えながら戦ってたな、いいことだ。


「よし!休憩っ」


 手綱をグッと引いて、ジルさんが停止する。

 ファルは素直にしたがい、合わせてサーベラスに騎乗するルーファウスも止まる。


「ティア、平気か?」


「ええ……平気だけど」


 どうしてもう休憩?ってのが顔に出てるな……自分では気づかない疲労や消耗は、周囲が気付かないといけない。

 今のミーティアがそれだ。【オリジン・オーブ】を取り込んだ副作用で、ミーティアは体温調整や身体の魔力バランスが上手く調整できない。

 気付かせないようにしているんだろうけど、俺はウィズから、ジルさんは経験からさっして気を配る。


「ふぅ……疲れましたね、休憩はありがたいです」


 サーベラスから降りたルーファウスが、汗を拭きながら言う。

 お前も気を利かせられる男だなぁ……ありがたい。


「それならいいけど……もう少しなんでしょう?いいの、急がなくて」


 ミーティアが心配そうに言う。

 その言葉にジルさんは、ファルに人参もどきを与えながら言った。


「心配ご無用です。今晩中には着ける予定ですし、迂回が無ければもう着いていますからね」


 正直言えば、もっと時間が掛かると思っていた。

 三日間で到着できるとはな……案外近かった。


「あと二回休憩を挟んで、夜に到着ですね」


 俺は疲れた様子でしゃがみ込み、荷台に背を預けて言う。


「そうだな。魔物が出なければ、だが……」


「そんな不安そうに言わないでくださいよ」


 確かに、大樹に近付いてから魔物の出現が減っているんだよな。

 世界樹って言われても納得してしまいそうな、あの大樹……神聖なものだって言うのはジルさんの言葉で理解できるし、出ないに越したことはない。


 しかしながら、森を熟知するジルさんにそんな風に言われてしまうと、どうしてもな。


「ふふっ……なにがあるかは、その時まで分からないさ」


「……それはそうですけども」


 ジト目でジルさんを見る俺だが、本音を言わせてもらえば、「頼むから出ないでくれ」だ。

 そうでなくても俺の活躍が減っているのに、これ以上お荷物はきついだろ?

 え?……自己中?いやいや、仕方ないだろ。


 だってそうでもしないとさ……この三ヶ月の自分の不甲斐ふがいなさに、ぽっきりと折れちまいそうだよ……心が。

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