7-75【テスラアルモニアの神3】



◇テスラアルモニアの神3◇


 そろそろいい時間だな……外も暗いし、冷えても来た。

 それにしても、ウィンスタリアか……戦女神って、イメージだとすげぇ主神に忠実って言うか、融通が利かないってイメージだな、俺の勝手なイメージだけどさ。


「――僕、寝袋を取ってきますね」


「あ、私も手伝うわね」


 荷台に乗ったままの寝袋や毛布を取りに、ルーファウスとミーティアが向かった。

 残った俺とジルさんだが、俺は疑問に感じたことをジルさんに問う。


「なぁジルさん」


「ん?どうした?」


 食事の後片付けをしながら、ジルさんは首をかしげた。


「この国で崇拝すうはいされるのがウィンスタリアだってのは、昔からなんですか?」


 この国【テスラアルモニア公国】……約百年前は、【パルマファルキオナ森林国】って言うエルフの国だったんだし、ウィンスタリアがいつの時代から崇拝すうはいされているのか、気になった。


「……」


 重ねた食器を持ち上げ、ジルさんは。

 どこか悲しげに、こう言った。


「……違う。この森が【パルマファルキオナ森林国】と呼ばれていた頃、エルフの神のような存在としてあがめられた方が存在するよ……しかし、追いやられたのはその方も同じなのさ」


 神のような方が、追いやられた。百年前の戦時にか?

 もしかして、それが転生者か……【神木しんぼく】の能力を持っていた。


「エルフ族があがめていたのは、自然と成長の力を持つ……神の如き力を持ったお方だ……名は、【ドリュアス】と言う」


 ド、ドリュアス……?

 それって、ドライアドとかドリアードとか呼ばれる、ギリシャ神話の?

 もっと普通の名前を想像してた、これは予想外だ。


「……」


「ミオ?」


「い、いや……ちょっと考えを」


 やっぱり、名前はともかく……神様ではなさそうな気がする。

 名前だけなら、確かに神っぽいけど。でも違う……この世界の神様の名前ではないと、直感でそう思った。

 ならばやはり転生者、エルフの祖ならば、神と呼ばれてもおかしくないしな。


「お待たせしました、もう雨も止んでいますね……っと」


 ルーファウスとミーティアは、持って来た人数分の寝袋を置いた。

 ご丁寧に昨日のテントまで持って来たけど……でもこの中では使えなくないか?


「お馬さんたちも、食べ終わってたわ。今はお水を飲んでる」


「二人共ご苦労様。さてと……じゃあ明日も早いし、寝るかぁ」


 寝袋を持って来た二人をねぎらい、今日はお終いだ。

 ジルさんも作業に戻ったし、【テスラアルモニア公国】出身のルーファウスがいる時には聞きにくいからな、エルフのジルさんの話は。


 「ふあぁぁぁ」と欠伸あくびをしながら、俺は考える。

 テスラアルモニアの神、ウィンスタリア。

 存在自体は不明だが、アイズレーンにイエシアス……そしてウィンスタリアか。

 ア・イ・ウ……まさかな、こんな安直な事……ないよな?

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