7-68【森の中は危険がいっぱい6】



◇森の中には危険がいっぱい6◇


 次の日、早朝直ぐに出発した俺たちは、崖の前でたたずんでいた。

 水流が流れ落ち、滝のようになったマイナスイオンの溢れるその場所に。


「この先ですか?」


「ああ、そうだろうな……崩落した場所まではまだ遠い。確認してみてもいいが……里の者たちが復旧しているのだろうし、やはり迂回して森の中を通ろう」


「……そうね、先に進んで塞がれていたら、また戻らなければいけないし」


「……」


 ここの崖から先が、サイグスさんが言っていた崩落現場らしい。

 魔力が完全に回復していれば、【無限むげん】でどうとでもなるんだけどな。

 やはり、早期の回復方法を探さないと……


「……こんな所にあったのか」


「??……ルーファウス、何か言ったか?」


 ボソッとだけど、今なんか言ったよな。滝の音で上手く聞こえなかった。


「いえ、何でもありません」


 笑顔でそう言うルーファウス。

 何でもないならいいんだが……笑顔がぎこちなくないか?


「三人共行くぞ。遠回りする以上、里はまだここから二日は掛かるからな……また夜までにキャンプ地を探すんだっ」


「ええ」

「はい」

「おーけー」


 ミーティア、ルーファウス、俺の順に返事をし、崖を後にする。

 俺は変わらず、ミーティアと荷台だが……昨日魔力を使ったことで昨日よりも辛い。しかも乗り物酔いしそうだ……畜生ちくしょう





 迂回した先は、熱帯雨林のようだった。

 三月なのに暑いし、じめじめして息苦しい……


「雨、降らないかしら……」


「降る前に休めるといいな」


 もう俺は、雨が降る前提で言っている。

 日本だったら六月の梅雨時期のような感覚だ、これは降る。


「そうなると、雨が防げませんね」


「あ……そうか、二人用のテントしかないもんなぁ」


 馬上のルーファウスの言う通り、昨日無理して作ったテントが一つ、それしか雨を防げない。


「洞窟でもあるだろう」


 ははは、簡単に言うねぇジルさんは。


「洞窟は一時的でしょ?だったら俺が頑張りますよ、どうせ乗ってるだけだし」


 雨宿り出来るくらいの洞窟、しかも四人+馬二頭……馬は外でもいいかもしれんが、なんとなく可哀想じゃん?


卑屈ひくつなんだから……もうっ」


 ミーティアにジト目で言われる。

 これは呆れている時の声音こわねだな、だんだん分かって来た。


 しかし、現状の俺はそれしか出来ない事実がある。

 魔物一体二体なら戦えるが、昨日のような大群に追われたら、今の俺は無力だ。

 なら、今回の旅はサポートにてっすると決めたんだ。


「まぁ落ち着け、この森には大樹もある。ほら、そろそろ見える頃だぞ」


「大樹……?」


 大樹って、言うほどデカいのか?

 でも、拠点のある森からは見えなかったし、昨日のキャンプ地点からも何も見えなかったけど。


「……あ」


「これは……」


「わぁ……凄いわね、これ」


 見えた。先程まで見えなかったのがおかしな程、その大樹はデカく壮大だった。

 この馬鹿デカい大樹が見えた瞬間、空気が変わった感じがしたんだ……

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