7-64【森の中は危険がいっぱい2】



◇森の中は危険がいっぱい2◇


 ボフン――!!と、爆発した【マッシュマン】の遺体。

 これは……キノコ胞子ほうしか!

 くそっ、RPGあるあるじゃねぇか!油断し――


「――【魔風旋マ・ウィドー】!」


 俺とミーティアが地面に伏せようとした瞬間、ファルの馬上から、大きな声が。

 ジルさんが、魔法を放ったんだ。

 相変わらずの無詠唱……一瞬だ。


 【魔風旋マ・ウィドー】と言う魔法は、風を巻き起こす魔法だ。

 ジルさんを中心に、台風のように回転して……胞子を爆発させた【マッシュマン】の遺体に迫った。


 ブオォォォォ……と、風は胞子を簡単に吹き飛ばす。

 そして治まると、ジルさんが。


「もういいぞ、三人共」


「すっげ……」

「ふぅ、びっくりした」

「……すみません、僕のミスです」


 三人それぞれで反応が違う。

 俺はジルさんの魔法に、ミーティアは突然の出来事に、ルーファウスは、自分の失敗だと反省していた。


「ははは……これくらいは対処してもらわないとな。先が思いやられるぞ?」


「すみません……」


 ルーファウス、反省しすぎだって。

 それに、俺だって気付けたはずなんだし……魔物の特徴は、見ただけで分かっていたんだから。

 それに、ルーファウス一人でだったなら、胞子だって困らないだろ。


「仕方ないって、誰にだってあるさ」


「それでも、僕は護衛として……」


 責任があるってか?

 いいんだって、そこまで考えなくても。

 ジルさんがカバーしてくれたんだし、被害は無いんだから、次を気を付ければいいのさ。


「いいって、魔物を倒してくれただろ?次も頼むぜっ」


「ミオくん……」


 下がり眉で俺を見るルーファウスは、少し泣きそうだった。

 責任感が強いんだろうな……そこまで考えてくれるのは嬉しいけど、ここまで考えて自責の念に駆られても、後には面倒臭い事しかない。


「そうよルーファウスさん、ミオだって結構ミスしてるわよ?」


「ははは、ティアの言う通り……っておい」


「ふふふっ」


 そんな事を笑顔で言ってくれるミーティア。

 空気を変えてくれる存在だな。


「その通りだ。反省は何時でも出来る……だが今ではない。よく覚えておけばいいのさ、この失敗をな」


 馬上からそのセリフを言えるジルさん、カッコいいよ。


「――はいっ!精進しますっ」


 森の中を進み、俺たちはエルフの里【フェンディルフォート】を目指す。

 数日掛かると言われた道のりは、このようにして魔物と戦い、学んで、笑って……まるで冒険しているような気分になれて新鮮だったよ。


 まぁ……俺は何もしてないんだけどさ……

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