7-63【森の中は危険がいっぱい1】



◇森の中は危険がいっぱい1◇


 拠点から出発して数十分、出会ったのは魔物だった。

 大きなキノコをした、人型の魔物……【マッシュマン】。

 数は三体、そして相対するのは……


「ミオくん、サーベラスの手綱たづなをお願いします!!」


「――え、お、おお!」


 タンッ……と跳ねて着地し、三体の魔物に対して刀を抜くルーファウス。

 言われるまでも無く自分の役目を果たそうとする少年剣士に、俺は言われるままに荷台を降りて、サーベラスの手綱たづなを預かった。


「いくよ、師匠せんせいの剣!」


 【天叢雲剣あめのむらくものつるぎ】な。ところで略名って何?


『――略名ではありませんが、【草薙剣くさなぎのつるぎ】とも呼ばれます』


 へぇ……どちらにしても有名なんだな。

 つーか、【天叢雲剣あめのむらくものつるぎ】が転生の特典ギフトで存在するなら、絶対に残りの二つもあるだろ……確か三種の神器の一つなんだよな?


『その通りです……既に使用者は存在していますので、ご主人様は使用できませんけど』


「ちっ」


「――直ぐに終わらせます。三の太刀たち……【閃空せんくう】」


 俺が舌打ちをするのと同時に、ルーファウスは抜いた刀を上段で振りかぶり、魔力を刀に流す。

 蒼白い魔力が風をまとい、ヒュオーと風鳴かざなりを奏でる。


「これは……超音波か……」


 それだけじゃない、鎌鼬かまいたちだ。

 これは【天叢雲剣あめのむらくものつるぎ】の使える技なのか?それとも、ルーファウスの剣技?


『……不明です』


「流石、日本の神話に出て来る刀だ……技も日本にまつわる物って感じか」


「そう言われると、ますますミオの元居た世界が気になるわね……興味が沸くわ」


 俺の言葉に反応するミーティア。


「今度色々教えるよ」


 あの日、俺が前世の記憶を持っている事を伝えた時、俺は嫌われる覚悟もしたんだ。けれどミーティア逆に、更に興味を示してくれた……救われた気がしたよ。


「――はぁぁぁぁ!!」


 ルーファウスの刀に絡みつく蒼白い魔力の風の刃は、一刀と共に飛んで行く。

 【マッシュマン】は物凄く鈍重どんじゅうで、避けるまでもなく三体ともに直撃した。


「うわぁ……真っ二つか」


「見事だ、ルーファウス」


「すごいわ、ルーファウスさん!」


 褒める二人の女性陣と、驚異的な切れ味の威力にドン引く俺。

 【閃空】……鎌鼬かまいたちを発生させる、ルーファウスの技。

 詠唱も無く、明らかに魔法とは違うその仕様……RPGで言うところの、必殺技みたいな感じか。


「軽かったですね。これくらいの魔物なら……僕一人で対処できますよ」


 それはありがたい。

 俺もミーティアも、同じくそう思っていたが……ジルさんが言う。


「よし、それじゃあ皆……口と鼻を塞ぐんだ」


「「「はい?」」」


 その三人の返事と同時に、真っ二つにされた三体の【マッシュマン】は、ボフン――!!と爆発したのだった。

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