7-62【エルフの里へ向けて】



◇エルフの里へ向けて◇


 サイグス・ユランドさんは、【豊穣の村アイズレーン】へ向かった。

 クラウ姉さんに『俺たちはエルフの里へ行きます』と、伝言を伝えて貰う為にさ。

 連絡の手段としては、唯一距離にかかわらず、アイズとウィズが連絡を取り合えるらしいが、アイズがそもそも……ウィズの言葉をクラウ姉さんに伝えているかは、分からないからな。

 信用がないんだよ、そう言った面に関してのアイツは……ズボラだしな。

 「はいはい、言っておく~」とか言って、そのまま放置してそうじゃん。


 と、不安要素はこれくらいにしておいて。

 エルフの里――【フェンディルフォート】への道程どうていは、勿論ジルさんが知っているから、旅に対しての大きな心配はないんだ。


 だから、俺たちも……出発だ。


「ほいっと!ほら、ティア」


 先に荷台に乗り、ミーティアに手を差し出す。


「あ、うん」


 少しだけ照れながらも、ミーティアは俺の手を取って荷台に乗った。

 ちなみに左手だから大丈夫。


「よっ……と」


「よいしょっ」


 荷台は大きくはないが、二人が乗って、数日分の食料と水を乗せてギリギリの積載量だと思う。道路交通法で言えば……多分アウトだけど。


「これ、馬一頭でけるのかしら……」


 ミーティアも、重すぎるのではないかと思っているんだな。


「どうかな。馬力って言うくらいだし、案外なんとかなるかもよ?もしキツイようなら、俺が【無限むげん】でこの荷台の車輪を強化するよ」


「む、無理は駄目よ?」


 俺の腕に優しく触れて、心配そうに言うミーティア。

 あいがたいな……こうして心配してくれるってのは。

 だけど、俺も少しは役に立たないとさ。


「ああ、分かってるよ。無理はしないし、我慢もしないから」


 痛い事は痛いし、魔力の循環じゅんかんも異常に悪い。

 だから多少の無理をしただけで、へとへとになってしまう。


「本当に……?」


 疑われてるぅ……日頃の行いはいいはずなんだけどなぁ。


「あのー、二人共、もういいですか?」


「「え」」


 荷台に並んだ馬の馬上から、控えめに声を掛けられた。

 そこまで時間取ってないだろ……ルーファウス。


「そろそろ出発したいみたいですよ?あの、ジルさんがね……?」


「ジルリーネ……?」


 荷台にはルーファウスが乗るサーベラスが牽引することになっている。

 ジルさんとファルは、案内の為の先導馬だ。

 そのジルさんが、ファルの上から俺とミーティアを見ていた。ジト目で。


「ジルさん……い、言いたいことは言ってくれよな」


「なんども咳払いはしてましたよ……お二人が聞こえていなかったようです」


「「え」」


 おかしい……たったの一分も経っていない筈なのに。


「――いいから出発するぞ。【フェンディルフォート】までは遠い、休憩の事も考えれば……そうだな、夕刻には中継点に着きたいからな」


「「は、はい!」」


 ちょっと怒ってるじゃん!!

 思わず背筋伸びたぞ……ミーティアと二人で。


 そんなこんなでようやく、俺たちはエルフの里に向けて出発する。

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