7-59【前準備4】



◇前準備4◇


 荷台には結構な量が乗った。

 数日分の食料は、生野菜に干し肉、果物も数種類ある……俺の【豊穣ほうじょう】で育ったものではなく、この森で採れた……質の良くないものだ。

 昔ジルさんが言ったように、一度焼かれた森では作物が最良に育たないんだろう。


 ああそうだ、【豊穣ほうじょう】と言えば、俺が咄嗟に育てた西瓜すいか……覚えてるか?

 あれさぁ……未だに【ステラダ】の公園の土の中なんだぜ?

 種だけは後で回収するとしても、三ヶ月か……腐らない事は無いよな、流石に。


『【無限インフィニティ】で地面操作はしましたが、腐乱耐性は付与していませんでしたので、おそらくですが』


 だよな……種の回収だけで、今回は諦めだな。

 あの後すぐに公園に行ければよかったんだけど、身体中いてえし、いつ【リューズ騎士団】の奴らが現れるか分かったもんじゃなかったからな。


「……【豊穣ほうじょう】が使えればなぁ」


「豊穣?……ミオくんの村の名でしたよね?」


 せてしおれた野菜を見る俺に、ルーファウスはそんな事を言う。


「ああそうだな、でも俺が言ったのは……能力、魔法みたいなもんかな?」


「そうなんですね。珍しい魔法です……【テスラアルモニア公国】では、戦闘用の魔法がほとんですから」


 腕組みをして考えるルーファウスだが、他の国でも同じだよ。

 基本的に、魔法は攻撃と防御の二択……回復は存在せず、補助魔法は中々に見ない。


「――待たせたな、二人共。荷物はどうだ?」


「あ、ジルさん……荷は積み終わりましたよ。でもどうします?」


「何がだ」


「何って……乗車するのは?女の子のティアと、ファルに乗るジルさんはいいですけど、俺とルーファウスは?」


 一応、ミーティアはリハビリを隠しているし……女の子って事にしておこう。

 別に男女差別ではないが、怪我や不調を考えればな。


「何を言っている……お前が乗るんだぞ?」


「はえ?」


 『――だから言ったでしょう』と、ウィズが言うが。

 もしかして、俺以外はそう思ってた?


「歩くのも疲れるんだもの、ミオが乗った方がいいわよ。ね、ルーファウスさん」


「ですよね。なら僕が歩きますよ……旅をして来たときは、ずっと歩きでしたし」


「いや、でもさ――」


 ちょっと待ってくれって。

 それじゃあ俺は、何もしないで荷台に乗って数日過ごすのか?

 そんなのルーファウスに悪すぎるだろ。仲間になってくれたんだから、平等に――


 ルーファウスの言葉を聞いた俺に、ジルさんは手で俺を制して。


「いや、それには及ばないぞルーファウス……まぁもう少し待て、いいプレゼントがあるからなっ」


「「……?」」


 ジルさんはニヤッと笑い、俺とルーファウスの少年二人を見る。

 プレゼント……ねぇ。これは嫌な予感か、それとも最善の予兆か、どっちだろうね……それとも、両方とか――だったり?

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