6-99【ステラダの冬2】



◇ステラダの冬2◇


 本当は俺が荷物持ちをして、ミーティアの買い物に付き合う予定だった。

 新しく商会を設立する為の準備の一環で、まぁ雑用品とかの買い出しだったんだけど……そこに割って来たのはクラウ姉さん。

 問答無用で付いて来て、イリアまで巻き込んでお買い物だ……なのに。


「二人で行って来いとか言ったのクラウ姉さんだろ?話をしたいからとか言っても、ティアの事とか聞いてこないし、俺が話せば不機嫌なるし!どうしろとっ!?」


「……そ、それは……」


 ぐぬぬ……と、クラウ姉さんは眉間にしわを寄せて唸る。

 何か言いにくそうにし、視線を彷徨さまよわせて。


「私にも色々とあるのよ……いいでしょ別に」


 それは俺にもあるよ。

 それこそ話だ。クラウ姉さんとは転生者の事を話そうと思ってた。

 だけど、時間も暇もなく秋が過ぎて……少ないチャンスを作ってもお互い話せなかった。

 多分……俺もクラウ姉さんも、怖かったんだ。

 確認する事が、前世をさらすという事が。


「それじゃあ、話は?」


「するわよっ!」

(人の気も知らないでっ!)


 ドゴスッ――!


「いってぇっ……!」


 激ギレ!?なんでなんだよっ!

 肩にグーパンを食らった……意外と痛いんだが。

 天上人になって……ん?ああそう言えば……超越者の事も、か。

 これなら言いやすいかも。


「そう言えば……姉さん【超越ちょうえつ】って知ってる?」


「――!……な、なんでミオがそれを……」


 クラウ姉さんは異常なまでにおどろいた。

 その反応は予期してないんだが……なんでまた。


「もしかして……ラクサーヌに聞いたの?」


「はい?ラクサーヌさん……?」


 俺の事じゃ……ないっぽいぞ、これ。

 クラウ姉さんは一人考え込みながら「まったくあの子……自分から『面倒くさいからいいや』とか言ってたくせに、ミオに言うなんて」……と。


「え……ラクサーヌさん、【超越ちょうえつ】したの?」


 そうとしか取れないクラウ姉さんの独り言に、俺はたまらず言葉を掛ける。

 あの人……魔族から魔人に【超越ちょうえつ】したって事になるけど。それを黙ってたのか……って、俺にもブーメラン刺さってる!


「え……ラクサーヌに聞いたんじゃないの?」


「いやいや……そもそも秋から会ってないよ」


「は?じゃあ誰の話……って……まさか……え?」


 【超越ちょうえつ】の存在は知っていたか、最近知ったかは分からないが、俺が話を振った事でさっしが付いたのか、クラウ姉さんは信じられないような顔をして。


「――マジ?」


「……うん。マジだよ」


 クラウ姉さんにしては珍しい口調だった。

 それだけおどろいたのかもしれないし、素かもしれない。

 だけど、これは事実なんだ。


 俺……天上人らしいよ?

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