6-94【帝国精鋭部隊3】
◇帝国精鋭部隊3◇
帝国の民なら誰でも
絶対皇帝バルザックの一人娘、皇女セリスフィア・オル・ポルキオン・サディオーラス。
「――まだかしら。流石に遅いのではない?」
冷静を装いつつもイライラを
その髪は綺麗な銀髪……白に近い色合いの
どこぞの国にいるエルフの王女よりも明るい色で、見る人が見れば金髪にも見える事だろう。
「殿下。落ち着いてください……ユキナリだって、そうそうこの距離を行ったり来たりは出来ませんよ」
「……言われなくても分かっているわよそんな事は、なんでいつもそういう事を言うのかしら、はぁ……気分の問題でしょう?」
机に肘を着いて、
仕事がうまくいかない、
「そうですか。ならば結構、仕事をしてください」
横に
耳が上向きに
「ねぇロイド。ユキナリは
「――聞いていましたか?私の話……」
軍服がずり落ちそうになるロイドと呼ばれた青年。
彼は眼鏡を掛けているが、それを直しながら。
「ユキナリは王国……【リードンセルク王国】へ仲間を集める為に
「だといいわね。それにしてもミリティの予言……天使か。種族的にはお前よりも上ね?ロイド」
ミリティ・ファルファーレ……ユキナリ・フドウの母にして、能力――【
かつては【テスラアルモニア公国】で聖女と呼ばれた、【女神エリアルレーネ】が転生させた人物。
「……強さだけならそうかも知れませんが、経験では負けるつもりはありませんよ。私も――魔人ですからね」
魔族から【
そして、彼もまた……
「まぁそうね。私もお前も……ユキナリや外にいるライネやゼクスも。皆……――転生者なのだから。負けられないわよね」
「はい。
「そういうのはいいのよ。前世で散々聞かされてきたし、飽きたわ」
「……そうですか」
寂しそうにシュンとする眼鏡男子。
そんな二人の耳に……ドォーン……と、
「この音――ユキナリかも知れないわよっ……行くわロイド!準備しなさいっ」
「いえ、あのボケナスはまだ……って殿下!くっ……このお転婆がっ!仕事が嫌なだけでしょう!!」
静止も聞かず、セリスフィアは風を纏ったかのように走って行ってしまう。執務から逃げるように。
だから仕方なく、ロイドも追いかけるのだった。
◇
そして、皇女の第一声である。
「はぁ……なんだー、エリアルレーネ様かー」
あからさまに、わざとらしくがっかりする皇女。棒読みである。
初めから知っていたのだ、ユキナリではないと。
「で、殿下……だから言ったでしょう」
出迎えた人はユキナリではなく、女神と他の仲間だった。
それだと言うのにこの顔である。一国の皇女の顔ではない。
わざととはいえ、仕事を放棄したのは事実だ。
「あらあら、どうしたのですかセリス……悲しい顔をして。またお仕事が嫌になったのですね、可哀想に」
エリアルレーネはあせあせと、セリスフィアを抱き寄せる。
皇女が仕事放棄した事も、
「どうも」
皇女は
くん……くん……と、鼻が何かを感知した。
がばっと離れる。
「――エリアルレーネ様ぁぁぁ!くっ――」
まるでゴミのような臭いだった。
しかし、自分が敬愛する
だが、そんな皇女の我慢も徒労に終わる。後ろに控えていた前髪の長い少女……ライネが、両手を上げて降参のポーズをしているのを見て。
「エリアルレーネ様、
「ああ!どうしてばらすのぉ~!
臭い事など気にせず、自分が遊んでいた事を気にするエリアルレーネ。
子供っぽく
「――くあぁぁぁっ!!可愛いいいいいいいいいいっっ!!」
その更に後ろで、悶絶するゼクス。一緒に帰ったらしい。
そんなやり取りを見ながらロイドは、眼鏡を直していた。
そして皇女は臭いを我慢しながら言う。
「エリアルレーネ様、自由過ぎるのもどうかご自愛を。父も心配しますし、あと……直ぐに入浴をお
遠慮気味に言おうか迷った挙句、直球。
「は~い♪」
それに笑顔で答えるエリアルレーネ。
後ろで女神の可愛さに悶絶を続けるゼクス。
ため息を吐いて呆れるライネ。
慣れたように、眼鏡を拭き始めるロイド。
そして、周りを見渡す皇女セリスフィアだったが。
「……気配?」と、反応しようとした瞬間。
「あっれぇ?何やってんのさ、皆……馬鹿みたいにさっ」
城の天井から、そんな気の抜けた声が聞こえた。
そこには、
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