6-91【季節は冬へ】
◇季節は冬へ◇
ミーティアとの話を終え、俺は男子寮へ戻った。
中々にヘビーな話だと、個人的には思ったけど……でも、その話は続けないといけない。
クラウ姉さんが、どんな人生を歩んだ転生者なのか。
どんな前世だったのか……俺を、前世の俺を知っているのか。
「ティアと、もっと普通の話……したかったな……」
ベッドに腰掛けて、若干へこむ。
普通か、自分で言ってて……改めて思うな。普通ってなんだ?
普通の友人?普通の恋人?普通の姉弟?普通の幼馴染?
ははは……なにを言ってんだろうな、俺は。
「ここは……異世界だぞ。ADVゲームじゃないんだ……恋愛シミュレーションだなんて誰が言った?」
自分に言い聞かせるように、静かに声を出して……少しだけ落ち着く。
「違うよな。ああ、違うさ……誰かが言った訳じゃない、決められてなんかいない。俺が決めるんだ……クラウ姉さんが言ったように、俺が主役の、俺の物語で……」
立ち上がり、キッチンへ。
キッチンへ行くと、朝にも
俺が洗うんだもんな……当然か。
「……ああそうか……一人暮らしの部屋、思い出したんだ」
前世で高校の時から住んでいた、ボロアパート。
田舎から出て来て、一人で住み始めた自分の城。
自分一人の、寂しい部屋。
「……なるほどね。こりゃあ寂しいわ」
ド田舎で優しい家族と暮らすことで忘れていた。
親元を離れて寮に入っても、ミーティアがいた事で思い出さなかった。
そんな気持ち。前世では当たり前のように思っていた……一人という現実。
「――幸せだな、俺」
戦いがあったとしても、苦悩や困難があったとしても。
前世では経験出来なかった“幸福”と言う現象が……とても、ありがたいものだと、再認識した。
「守るさ……俺が」
ぼそりと
問題はまだまだ山積みだ……アイズやアイシアの事、ミーティアの事、クラウ姉さんの事、ユキナリの馬鹿の事。
イリアやジルさん、ジェイルの事。二年の先輩たちだって気にかかる。
全部が全部、自分でやれると思うほど
「守る……絶対に、俺が。アイシアの人生も、ティアの夢も……アイズの命も」
言い聞かせるように、一人……呪いのように
身体に、心に、沁み込ませていくのだった。
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