6-38【帰ってきたよ3】



◇帰ってきたよ3◇


 【竜人ドラグニア】の女の子を背負って、俺は村を歩く。

 知らない人が増えてて、なんだか別の場所のようだ。


「……建物も増えてる。まだまだ途中な物が多いけど、ちゃんと建てられてるな」


 でも、建て方と言うか構造と言うか、【ステラダ】とは違う感じだな。


『この建築方法は、西……【サディオーラス帝国】のもののようです』


「帝国の技法、って事か。どうりで……見た事ない訳だ」


 高床式の別荘のような村の建物と違い、新しく建てられている建物は、まるで集合住宅のような感じだ……懐かしい。前世のガキの頃を思い出す。


「ミオ~~~~~!」


「――お?」


 この柔らかい声音……癒しのボイス。

 この声は……ヒーリングマイシスター!!レイン姉さんだ!!


 笑顔でこっちに近付く……俺と同じ、明るい金髪を持つお姉さん。

 なんてまぶしい笑顔、こっちが溶けちまうよ!


「レイン姉さんっ……久しぶ――」


「ミオっ!!」


「――うぶっ!」


 バッフ~ンッ――!!


 レイン姉さんはジャンプして、その凶悪な胸でダイブしてきた。

 当然、背に女の子をおぶっている俺は無防備で……その柔らかい衝撃を受けた。

 ……わざとじゃねぇから――わざとじゃねぇから!!


「あははっ、ミオ……ミオだわっ!もうっ、こんなに大きくなって!お姉ちゃん感動しちゃったわ……もう、あ~もう!」


 足を浮かせたまま、レイン姉さんは俺の頭部にスリスリと頬を寄せる。

 あ~やばい……癒される……マジで浄化されるわ。


「ぷはっ……レ、レイン姉さん……久しぶり」


「ええ、久しぶりね~……お姉ちゃん嬉しいっ!」


 俺もだよ。


「うん、熱烈な歓迎ありがと……所で、そろそろ離れてもらえるとありがたいんだ。ほら」


 俺は目線で後ろを示す。

 背中で眠る(気絶)、女の子を。


「あ――ご、ごめんね……お姉ちゃん嬉しすぎて、見えて無くて……」


 バッ――と離れて、シュンッとしてしまうレイン姉さん。

 ちょっ――な、なんなんだこの人……半年前よりも可愛いんですけど!!可愛いんですけどぉぉぉぉ!!


 別にミーティアへの思いが揺らぐとかそう言うのじゃなくて、人が持つ感性の問題だ。

 だって可愛いもん、俺の姉ちゃん。


「いや、いいんだけどさ……それよりも、もしかしてガルスに聞いた?」


 俺が帰って来ている事を、だ。


「ん?……ええ、そうよ。ガルちゃんったら、走りながら皆に触れ回ってるよ?そろそろうちにも着くんじゃないかしら」


 おいこらガルス。騒がしいの止めろって言ったろ!

 話聞けよ……まったく。


『それだけ嬉しいのでしょう。ご主人様がこの村で愛されていたという事です』


「まぁ、そうか……」


「え?」


「あ、いや……それも嬉しいなってさ」


「うふふ、そうでしょ?」


 俺はウィズへの返答を誤魔化ごまかすようにレイン姉さんに笑いかけて、姉さんも笑い返してくれる。

 なんだろうな……【ステラダ】にいた半年の忙しさが、一気に解放された気分だったよ。

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