4-66【私の夢3】



◇私の夢3◇


 俺も紅茶を頂くとしよう。

 リラックス効果のある、【スール】と言う香草ハーブを使った紅茶らしい。

 ミーティアは色々な紅茶を持参して来てて、よく飲ませてくれるんだ。


「……」


「……」


 俺とイリアは無言だ。

 タイミングが難しいよな、こういう時ってさ。

 しかし、ミーティアはイリアに対して。


「はい、これを溶かして飲んでみて?」


「……え、えっと、これは?」


「ドライフルーツよ。お茶に溶かせば、すぐにほどけて馴染なじむから」


「は、はい、では……いただきます」


 言われるままに、イリアはお茶にいちごのような果肉のドライフルーツを入れて、混ぜた。

 香りが一気に部屋に広がる……すげぇ。


「……おー、いい香りだな」


「ふふっ、でしょ?」


「はい……本当に落ち着きます。ありがとう、ミーティア」


「ふふっ……どういたしまして」


 ミーティア、流石さすがだ。

 イリアをリラックスさせてくれたんだな。


 それ、俺も欲し――


「はい、ミオも」


「――あ、ありがとう」


 先読みされてた。

 もう感謝しかないな。


 少しゆっくり……三人で紅茶を飲んで、落ち着いたよ。

 俺も、イリアもさ。

 だから……話をしないとな。


 俺も切り替えろ……今は考えるな。


「さてと……さっきの話の続きだ、いいか?」


「はい」


 俺は「うん」とうなずいて、自分の中で考えていた事を話す。


「心当たりはないって言ってたけど、ロッド先輩はどうだ?」


「――ぼ、坊ちゃんですか?いえ……坊ちゃんではありませんでした、それは確実です」


 と、言う事は……あの黒ずくめはロッド先輩本人じゃない可能性が高い。

 ――だが、こうは考えられないか?


「そうか……なら、ロッド先輩に仲間はいるか?一年の時の相棒とか……手下とかさ」


 二年であるロッド先輩は、依頼を受ける際はソロだ。

 これはどの先輩も言える事だが、二年になれば基本的にはソロ活動になるんだとさ。


「それは……はい、数人ほど交流があるはずですが」


「貴族か?」


「……はい」


 それは面倒臭めんどうくさそうだな。

 貴族ってだけでも、俺の中ではいいイメージは無いのに。

 偏見へんけんかも知れないけど。


 なら、こう言うのはどうだろう。


「イリアが、誰かに好意を寄せられてるってことはないか?」


 このビジュアルだ……ハーフだからってさげすまれても、好きになる男は大勢いそうだ。


「わ、私が?……ハーフエルフの私が誰かに好かれるなんて、ありませんっ」


 しれっと自分がハーフって言ったな……言わせるつもりはなかったけど。

 スルーしとくべきか?って……ミーティアもスルーする気だな、あの顔。


 だけど……イリアの言う事、それは違うって思う。

 きっと、この国のあつかいが悪いんだ。


「イ、イリアは、女子寮で一人部屋なのよね……今日はここにいた方がいいわ。話は、私が通しておくから」


「え?」


 もしかして、ジルさんに?

 あの人……いったいどこまでの権力持ってんの?


「ああ、頼む。イリアもそうしてくれ、その方が俺も安心だしな」


「で、ですが……」


「俺は床でもどこでも寝られるからさ」


 男の部屋は嫌かもしれないけど、一人で不安をかかえるよりはいいだろう。


「いいのですか?」


 イリアの視線はミーティアだ。

 もしかしなくても、俺とミーティアの関係を勘繰かんぐってるな?


「ええ、私が言いだしたのだし……それに、私も安心だから。ね?」


「……はい。では、よろしくお願いします、お二人とも」


 イリアは深々と頭を下げる。

 俺とミーティア、交互に向けて。


 よし……決まりだな。

 こうして、イリアの保護という名のお泊まり。

 更に、俺の寝床が――床に決定したのだった。

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