4-51【破壊】



◇破壊◇


 俺の能力の一つ、【破壊】。

 正式名称は――【Destroyデストロイ】だ。

 はい、以上です。


 率直そっちょく過ぎませんか?【無限むげん】とか【煉華れんげ】の時とかは、結構長かったよ?

 まぁ、それでも単語を並べただけのようなものだけど……神さま案外適当だよな。


 【破壊はかい】による魔力は禍々まがまがしく、どす黒いオーラが俺の左手から溢れていく。

 俺の周囲をただよい、チリチリとその時を待っているかのようだ。


「――【カラドボルグ】!!この虎ウサギをぶっつぶすぞ!!」


 ふと、思う事がある……この集合してデカくなった【ファングタイガー】、いったい何体でしょうか?もし俺が倒したら……ドロップアイテムが【強奪ごうだつ】で大変なことにならんか?


 だけど、そんな考えはもう遅かった。

 迫ってくる大きな影は、俺を押しつぶすつもりだ。


 影になっていて、俺の事はトレイダには見えていないだろうが、きっと個体の小さな【ファングタイガー】と戦っているだろう。

 森の中では、レイナ先輩もな。


「――うおぉぉぉぉぉ!!」


 両手で【カラドボルグ】を振りかぶり、上段から振り下ろしてやる!

 【破壊はかい】を【カラドボルグ】に乗せてだ。

 そのエフェクトは禍々まがまがしいの一言。

 黒いオーラは金色の刀身の大剣にまとわりつき、相反するかのようにバチバチと魔力の火花を発生させていた。


 そして俺はそれを、思い切って――叩きつけた。

 接触を許さない破壊の大剣カラドボルグは、【ファングタイガー】の集合体を押しつぶしていく。

 いきおいも威力もすさまじく、魔物とぶつかる直前に消滅させていく。


 そして……【破壊はかい】の効果なのか、ちりのように崩壊していく、魔物。

 黒いオーラは魔物を喰いつくすように侵食しんしょくしていき、悲鳴の何も上げさせない。

 まるで、消滅している事に気付いていないようだった。


 ザンッッ――!!


 と、振り下ろされた【カラドボルグ】は、地面に接触することなく、その刀身でえぐる……【破壊はかい】の効果はえげつなかった。


 この黒いオーラは、触れるものを崩壊させていくんだ。

 いきおい良く振り下ろされて、その威力も異常なまでに上昇し……その結果。


「……う、うそだろ?」


 音も無く、地面に――大穴が開いた。

 そして、大量の【ファングタイガー】は影も形もなく……【強奪ごうだつ】で手に入るはずだった素材すらも……全てがなくなっていた。


 もしくは、この穴の中に落っこちて行ったのか?


「――は、【破壊はかい】の影響がヤバすぎる……」


 大穴は、くりぬかれた様になっていた。

 大きさは十数メートルはあるだろうか。

 俺はおそるおそるのぞき込み、その大穴の底を見る。


「……こ、怖っ――!そ、底が見えないぞっ」


 奈落だ……この一瞬で、どうしてここまでの範囲はんいに影響を与えたのだろうか。

 【破壊はかい】と言うよりも、消滅と言われた方がしっくりくる。

 もしかしなくても、これがレベル99の力なのだろう。

 今後もあつかい注意だ。


「む、村で使わなくてよかった……効果は分かっても、威力や範囲なんかは不透明だからな……」


 【豊穣の村アイズレーン】で【破壊はかい】を使用した事を想像して、俺はゾッとした。


「――ミ、ミオーーー!!」


 トレイダだ。とてもあせった声で、こっちに近づいてくる。

 遠くからでも見えたんだろうな、この大穴は。

 なんて説明しようか……この状況。

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