4-49【ナスタール森林地帯5】



◇ナスタール森林地帯5◇


「――え。えええぇぇっ!!」


 【ファングタイガー】のフン!?ウ〇コやんけ!!

 俺はその丸薬がんやくのような小さなフンを、思わず遠くに投げた。


「――ああああああ!!貴重なのにっ!!」


「えっ!?」


 貴重なの?だってフンだろ?汚いじゃないか。

 しかし、俺が投げたその方向に……白い何かがいた。

 三人で……同時に。


「「「あっ」」」


 小さな身体の小動物だ。まるでウサギのような感じ。

 しかし、どう見てもその小さな身体にそぐわない……大きな

 齧歯類げっしるい特有の前歯ではなく、獰猛どうもうな獣の牙だ。


 いやいや……まさか、なぁ?


 しかし、俺の考えは一瞬でくつがえされる。

 レイナ先輩の興奮こうふんによって。


「――いたぁぁぁぁぁぁ!!あれが【ファングタイガー】だよっ!いくよ二人とも~っ!」


 マジかよ……!?

 どう見ても虎では無いぞ!


「――タ、タイガーじゃないじゃんっ!!」


「「タイガーだよ!?」」


「ええ!?」


 二人にハモられて言われ、俺の脳内知識の齟齬そご露呈ろていした。

 言葉だけで判断するなって事なのだろうけど、どう見てもウサギです。

 しかし、ならしょうがない!同じ言葉の別の物だ!

 そう切り替えていくしかない!!


「ほらほら、行くよ!!」


 先行するレイナ先輩。俺たちも続く。

 冷静に、的確に行くぞっ!!





「私が回り込むから、ミオくんは反対側!トレイダくんは援護っ!!」


「「了解ですっ!!」」


 レイナ先輩は素早い動きで草むらの中に入って行った。

 後ろに回ったんだな……なら俺は、逃げられないように【無限むげん】で退路を断つ!


「【砂の壁サンドウォール】!!」


 両手を左右にかざして、同時に発動。

 数メートル先から盛り上がり、円形の形に整える。

 これで、超ジャンプでもされない限り逃げられないだろ。

 逃げたとしても、その時は別の方法でやるっ!!


「……ナイスゥゥ!」


 草むらの中から聞こえて来たレイナ先輩の声。

 よかった……向こうでも砂の壁は出て来てたようだ。


「よしっ、俺たちも動くぞ!トレイダ」


「わ、分かった!」


 トレイダは弓での援護だ。

 他の魔物もいるし、【ファングタイガー】だけに集中していたらやられてしまう。


「……おわぁぁぁ~お!こっちにもまだ数体いるよっ!だからそれは任せたよ~!」


 それって、これ?

 草むらから、追われるように出てきた……ウサギっぽい見た目のタイガー。

 なるほど、こいつを任せたって事か。


「分かりました!」


 この【ファングタイガー】は、俺とトレイダで倒す!


「――【土の階段ランドステアーズ】!!トレイダっ!上から狙えっ!」


「分かった!ありがとうっ!」


 俺は【無限むげん】で迫り上げた地面を階段状にし、トレイダに言う。

 トレイダも直ぐに俺の考えを理解し、階段を駆け上がっていく。


「……うわっ!す、すごい数がいるよ!ミオっ!!」


 マジで?あれだけ見つからなかったのに……なんで急にこんなに現れたんだ?


「だけど、それだけいるならっ!」


 一気に依頼を達成できるチャンスだ!

 ここでさっきのミスも帳消しにしてやんよ!


「行くぞっ、トレイダ!」


「――うんっ!!」


 挽回ばんかいのチャンスだ。

 【ファングタイガー】を倒して、一気に終わらせてやるっ!!

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