4-47【ナスタール森林地帯3】



◇ナスタール森林地帯3◇


 早朝に目覚めて、身体を起こして出発の準備だ。

 テキパキと顔を洗い、軽く運動をして意識を覚醒させる。

 トレイダもレイナ先輩も同じく、自分なりの朝のルーティンをこなして、キャンプ場を出発した。


 【ナスタール森林地帯】への道のりは意外と近く、然程時間もかからずに到着した俺たち。

 現在は依頼の最終チェック中だ。


「倒す【ファングタイガー】は合計三体だね~。集める素材は牙と革、それぞれ一つあればいいよ」


「「了解です」」


 三体か。もしかして、そうそう出てこないのか?

 半日もあれば終わると思ってたけど、見込みが甘かったかな。


「……それにしても、暑いですね」


 まるでジャングルのようだ。

 大きな葉っぱの木々やつた、見たことのない植物やデカいキノコ。

 カラフルな熱帯動物。

 アマゾンにいそうだと……思った。行った事はねぇけど。


「地盤がね……熱を持ってるんだよ~」


「地盤?」


 俺はしゃがんで地面を触る。


「本当だ……あたた、いや……熱いくらいだな」


 熱をびている?それとも、温泉的なものか?

 とにかく地面が熱いんだ。きっと、森の中全体がそうなんだろうな。


「……【マグマタートル】のせいだね~。この森の主なんだってさ、見たことはないけどね~」


 【マグマタートル】か……溶岩の、亀だよな?

 写真的なものがあれば分かりやすいのにな……魔法で何とかならんのか?


希少きしょうなんですか?」


 俺の問いに、レイナ先輩はニヤリと笑って。


「寝てんだよ~。この下でさ」


 ちょいちょいっと、指を地面に向け言う。

 なるほど……地中にいるのか。

 それで土が熱いんだ。


「とにかく、気を付けていればいいんですよね……」


「そうだね。余程の事が無ければ起きないらしいから大丈夫だよ。よし、じゃあ行くよ~、ついてこ~い!」


 軽いなぁ。大丈夫か?

 俺と同じように、トレイダも。


「だ、大丈夫かな……」


「な。まぁ精々頑張ろうぜ……【ファングタイガー】探し」


「……うん。そうだね」


 トレイダは心配そうだ。

 初の実習だし、俺も緊張……は、してないな。


「行くか……」


 そうして、俺とトレイダの……初の依頼サポートが始まったのだ。





「……すっげぇ。動物園かよ」


 様々な動物が逃げ惑う、森林地帯。

 魔物から逃れる動物は皆カラフルで、それこそアマゾンだ。


 【ステラダ】の街から数時間程度しか離れて無いのに、ここまで環境変わるか?

 魔物の影響があるにせよ、これじゃ別世界だって!


「――ほら来るよ~!警戒してっ!!」


「りょ、了解ですっ!」


 戦闘が始まった……ただし、【ファングタイガー】ではない。

 【フォレストタンク】という魔物だってさ。


さなぎ?」


 その爆弾のようなフォルムに、俺は困惑していた。

 だってさ、今まで戦ってきた魔物は……動物型が多かったじゃないか。

 それが急に……なにこれ?


「ミオっ!お願いっ!!」


「分かった――【石の槍ストーンスピア】!」


 転がる石に【無限むげん】を使い、突出する石の槍。

 ドドドッ――と、【フォレストタンク】に突き刺さる……のだが。


「……あれ?」


 何本もの石の槍でつらぬいたのだが、消滅しない。

 ピクピク震えて、まるで……今にも爆発しそうな……爆発?


「――うっおりゃああああああっ!」


 可愛らしい叫び声が、耳をつんざいた。

 レイナ先輩が、震える【フォレストタンク】を、得物えものの槍で……打った。


 カッキーーーーーン――!!


「お、おお……」


 飛んだなぁ――などと吞気のんきな感想を心の中でべていた、その瞬間。


 ドカァァァァァァン――!!

 と、空中でぜた【フォレストタンク】。


「――うおっ……!!びっくりしたぁ!」


 すげぇ威力だった……あのままそばにいたらヤバかったかも。


「……【フォレストタンク】の核は物凄く小さいんだよ~。狙いはいいけど、魔法の細かい操作はまだまだみたいだね、ミオくん」


 すいません。

 完全に、今まで戦ってきた獣型の魔物と一緒にしてた。


「助かりました、レイナ先輩……」


 弓で援護をするトレイダはともかく。

 前線の俺はしっかり魔物を倒さないとな……くそっ。早速失敗だっ。

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