4-40【ユキナリ・フドウと言う男】
◇ユキナリ・フドウと言う男◇
男子寮の噴水前……休憩用のベンチで頭を抱える黒髪の男。
その男に、俺は声を掛ける。
「――よっ。最後の新入生!」
俺から話しかけさせてもらう、先制だ。
それにしても、なんでそこまで
なんか嫌な事でもあったのか?
「……お?」
顔を上げたユキナリ・フドウは、実に面白い顔をしていた。
「お、おいおい……何があったんだ?昨日はあんなに暴れてたじゃないかよっ」
あまりの体調不良顔に、つい心配になってしまった。
「――あ~、昨日の場所にいたってことは……君も新入生なんか?」
「ああ。見てたよ、凄かったな」
ベンチに座るユキナリ・フドウは、本当に体調が悪そうだった。
「それはあんがとよ……でも、力を使うと腹の調子がおかしくなるんだよ……意味わかんないよな~、
「――この世界?」
トレイダが首を
俺は不動だ。顔の筋肉一ミリも動かしてはいないぞ。多分。
「ああ、俺は――
「ニホン……人?えっと……どこの国なのかな?」
やっぱりか。
でも……なんでわざわざそんな事を言うんだ?
あとトレイダ、俺に聞かれても答えらんないから。
「さ、さぁ……」
「――この世界じゃないよ。別の世界さっ……ふふふ、信じられないだろ?」
そこまで言っちゃうの?
やばい……心の中で泣きそう、俺。
「う、うん……まぁ」
「ああ……にわかにはな」
どうする?話すのが怖ぇよマジで。
俺はミオ・スクルーズ、俺はミオ・スクルーズ、俺はミオ・スクルーズ!!
言い聞かせろ、俺はこの世界の人間だと。
「あははははっ!だよなぁ……皆そうだよ、教官さんもそうだった。「
正直すぎでは?
でも、誰も信じないんだろうな。
「そしたら――「ふざけるな!そんな国はないっ!!」って怒るんだもんな~」
だろうよ。
それで腹が痛いのと合わせて、ここでへこんでいた訳か。
「それで?あんたの相棒は?」
「――相棒?」
ユキナリは俺とトレイダを二度三度見て「あ~」と納得し。
「いないよ。俺、一人だし。急な試験のせいで、部屋が空いてないんだってさ~。だから俺は物置なんだよ、へへへ」
ユキナリは黒髪を掻きながら笑う。
いや、笑えねぇよ。
「そりゃあ大変だな。物置とは……」
「へへへ。でも一人だし、気楽でいいって……あ!悪い、自己紹介まだだったな」
そう言えばそうだ。
こちらは名前を知ってたから、つい忘れてたよ。
「ああ、悪い。俺はミオ・スクルーズ、隣国【サディオーラス帝国】出身だ」
「僕はトレイダ。トレイダ・スタイニーだよ……ここ【ステラダ】の出身だけど、寮に入ってるんだ、よろしくね」
俺とトレイダの
「【サディオーラス帝国】か……へぇ――まぁいいや!よろしくなっ。俺はユキナリ。ユキナリ・フドウだ……
ユキナリは手を差し出す。
俺はその手を取って。
「ああ、よろしくな……」
「おう、ミオっち!トレっち!――うっ!!……す、すまんミオっち、トレっち……は、腹が……」
ギュルルルルルルルルゥゥゥゥゥゥ――!!
「あ、ああ……行って来い。もれたら大変だからな……」
「すまねぇ!!恩に着る――うぐっ!あ、あぁぁぁぁ……」
顔を青くし、尻を押さえて走って行った。
「なんだか……へ――
「……だなぁ」
ミーティア、変な人って言いそうになってるじゃん。
ユキナリ・フドウ……か。
悪い奴……ではない気もするんだが、ただ――ただだぞ?
多分だけど――馬鹿だと思う、こいつ。
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