4-11【やる事は沢山だ。頑張ろうぜ、俺】



◇やる事は沢山だ。頑張ろうぜ、俺◇


 雪かきを終え、野菜の出来を確かめた俺と父さんは、あたたまる為に家に入る。

 すると、母さんとレイン姉さんが朝食の準備をしていた。

 俺はクラウ姉さんとコハクを起こして、家族全員で朝食だ。

 朝から働いたからな……すげぇ腹減ってたからありがたい。


 何事もなく食事を終え、俺は外に出る。

 やる事が多いからな。


 まずは……そうだな、雪を何とかしたい。

 除雪機じょせつきなんてこの村にある訳ないけど、魔法の道具を組み合わせれば、似たようなものは出来そうなんだよな。


 燃料は魔力だ。魔物を倒して手に入った魔石で何とでもなるし、本体は【無限むげん】で素材をいじればいい。

 別に、整えられた形状じゃなくても、雪が寄せられればいいんだからな。


「さてと。まずは、北口に行くかね……」


 村の北口……【ステラダ】に向かう為の道がある場所だ。

 街道とも言えないデコボコ道で、非常に道が悪い。

 村の中の地面はある程度整えてあるが、外は別だもんな。

 【ステラダ】までの約100キロメートル……これ、舗装ほそうすんの?


「自分で言い出したとは言え……と、途方とほうもねぇ……」


 目の前に広がるのは、真っ白い景色。

 道と雪の境目さかいめも分からない程の降雪量だ。

 俺は目を閉じて、集中する。


「景色を思い出せ……どこに何があって、どんな風に置かれていた・・・・・・?」


 木がどれだけ生い茂っていた?

 どれほどの草木が生えていた?

 何個の石が落ちていた?


 全部を覚えている訳など勿論もちろんないが、ある程度の風景として覚えていれば充分だ。


「――【無限むげん】……広域こういき展開っ」


 目的は、この雪だ。

 火や水、雷や風と言った、属性には使う事が出来ない【無限むげん】だが、地面や草木だけは別だった。

 俺は魔力を振りしぼって、物凄い広さの範囲で【無限むげん】を発動する。


 くぅ……こりゃあ、脳に来るなぁ。

 俺の脳内には図面がある。この周辺のポリゴンマップだ。

 空間把握はあくと言ってもいいかもしれないが、その広範囲に、【無限むげん】を使ったんだよ。


 効果は……耐火性たいかせいの上昇だ。

 数値は勿論もちろんMAX。

 絶対に燃える事のない、異常な草木の完成だ。


 そして、そのまま。


「……燃えろ――【煉華れんげ】っ!!」


 雪を除去する為、俺は炎の能力を放つ。

 火炎放射器のごとく、どこまで伸びるんだと言う炎の線は、雪を溶かしていく。


「行け行け行けっ!!」


 魔力をドバドバ消費して、炎は直線に進んでいく。

 このまま、道にある雪を全部溶かしちまえ!

 そして、街道の整備を始めるんだ。


 しかし、俺は気付く。

 この炎の先に、誰かいたらどうする?


「あっっ!――やべぇっ!!」


 腕ごと火炎を上空に上げて、自分が考えなしにやっていた事にあせる。

 【煉華れんげ】の炎柱は俺が意思を込めると直ぐに消えるが……俺は不安になって雪が解けた道を見る。


「……だ、誰もいねぇよな??」


 焼死体が転がってるだなんて、止めてくれよ?


 確認すると、【無限むげん】の効果で燃えなくなった物体がそのままの姿で残っている。

 耐火性たいかせいは成功だな……木も草も、燃えずに残っている。

 冗談なしに……焼死体が無くて良かった。


「……でも、これじゃあ一気には出来ないな。せめて一日10キロ……約100キロあるとしても、単純計算で十日はかかるのか……」


 独りでな。


 でも、やろう。

 所々に中継点を作って、そこで寝泊まりしてでも……【豊穣の村アイズレーン】と【ステラダ】間の街道を整える……それが、俺のやるべき事だ。

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