4-5【半年の発展】



◇半年の発展◇


 あーだこーだ言うアイズを置いて、俺は汚部屋を出た。

 でも、まだ家には帰れない。


 考えないとな。

 これから二ヶ月……三月までにしなけりゃいけない事を。


 外で、自分が設置した様々な作品を見て回る。

 まずは村の中央、井戸だ……水道が出来てからは使う人も減ったが、魔力をふくまない純粋な水が使えるのはこっちだ。


 水道水は魔法の道具を使っているからか、どうしても微量びりょうな成分が入るんだとさ。

 人体や野菜には影響はなく、むしろ身体にいいくらいだとアイズは言っていたが。


 次は家だな……アイズの家もそうだけど、この半年で俺が建てた住居は二百を超えていた。

 【ステラダ】から移住してきた人たちの住居、昔から住んでいる人たちの新居、そして施設しせつだ。

 旅人が来るようになってからは宿屋も建てたよ。

 一応、客はいなくても宿はあったんだが、そこを改装かいそうして数十人は泊まれるようにしたし、食事も取れるように出来ている。

 客はまだまだまばらだが、その内、国内外から増えてくれればと思ってるよ。


 お次は村の防衛壁か。

 全ての入口だけではなく、村全体をかこうように作った土の壁と鉄のさくは、見事に役割を果たしてくれている。

 魔物が来ることも増えてきているが……今の所、そこまで凶暴な魔物は出現していない。

 それと同時に、野生動物も増えたよ。

 特にいのししが多く獲れるんだが、その他にも、鳥や鹿などが獲れるようになったんだ。

 アイズの結界は、悪意の持つものの侵入を防ぐ……と言うものだったが、それが野生動物にまで反映されていたのはおどろいたな。


 そして施設しせつだ。

 西口付近にあった雑貨屋【トルタン】を、村民が増えた事で村の中央に移した。

 その方が買い物も楽だし、客入りもいいからな。


「――自警団の詰所つめしょ、だな……ここは」


 そうだ、この村にあった警備団。

 クラウ姉さんとガルスだけの二人だけの警備団は、今は自警団となって村を守ってくれている。

 基本メンバーは、【ステラダ】からの出兵だ。それでも充分ありがたいよ。

 ジルさんが手配してくれたらしいけど、総勢二十名近くの兵が駐屯ちゅうとんしているってのを、初めは村のみんなも怖いと言っていた。


 でも、ふたを開ければ簡単だ。

 あっという間に打ち解けて、今や村出身のメンバーも数人入っている。

 おっさんだけどさ。


 それと学校だ……村民が増えた事で、子供も増えた。

 まだ半年で、出生率なんかはまだ全然先だけど、それでもこの村に越してきた子供連れの人たちは助かると言っていた。

 それにともなって先生も増えた……これも【ステラダ】からの支援なのが、少し俺の悔いだけど、それでも未来があるならいい。

 ポロッサ先生も喜んでたし……主に男性教諭に。

 今後はもっともっと人を増やして、大きな学校にしたいよな。




 帰って来た……家に、俺の家に。

 隣の家には、もうミーティアはいない。

 今は、【ステラダ】から来た【クロスヴァーデン商会】のメンバーが、代わりに住んでいるよ……女性が数人。


 ミーティアの事だが、彼女の仕事は、【ステラダ】から来た従業員たちの管理だった。でも、それは数ヶ月で終わったんだよな。

 まぁでも、たまに遊びには来るし、ここに泊る時だってある。

 だけど……今後はどうするんだろうな。

 ミーティア、知ってんのかな?……俺が、【ステラダ】に行くかもしれないって事。

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