3-34【クラウソラス・クリスタル】



◇クラウソラス・クリスタル◇


 ああもうっ!燃費ねんぴが悪いわね!!

 せっかく新しく【クラウソラス・クリスタル】を使えるようになったのに、全然動き回れない……剣自体は軽いのに、魔力が追い付けないんだ。


 身体が物凄く、重く感じる……剣を振るうだけで魔力が消費されていって、攻撃を防いでも魔力が減る。


 これじゃあ、長時間は戦えない。


「【閃光フラッシュ】!!」


 移動手段でもある影を潰す。

 遠くにいるジェイルは腕で顔をおおって、目を隠した。

 速攻で行くっ!もう、少ししか動けないんだからっ!


「――はぁぁぁぁぁぁっ!」


「ちっ、速いな……強化を二段階でも同じくらいかっ!!」


 ブンッ――!!


 か、空振からぶった!?

 ジェイルは、目をつぶりながら私の攻撃をけた。


 く、くやしいぃぃぃぃ!!


「――むぅぅっ!!」


 ブン――!ブン――!ブブン――!!

 空振からぶり、空振からぶり、大空振おおからぶり。

 ストライクアウトよ!!


「気配が出過ぎだっ!殺気も駄々洩だだもれ、これなら小鬼ゴブリンと戦ってる方がマシだな!」


 ゴブリンって何!?もしかして魔物!?

 ま、魔物と一緒にされた!?しかもそれ以下ですって!?


 ば、馬鹿にしてぇぇぇ!!


「【クラウソラス】!!」


 魔力を注ぎ、刀身をかがやかせる。

 切れ味は確かにするどい、でも……当たらない。

 自分の動きがにぶいのが分かる。


 たったこれだけの重量の剣で……私はこうもバランスを崩すのか。

 情けないったらない。


 でも――


「せめてっ……一撃ぃぃ!」


 光の剣だったら、見せて見なさいよ【クラウソラス】!

 私は、【クラウソラス・クリスタル】の凝縮ぎょうしゅくした光を、爆発させた。


「――なにっ」


 バキィィィィン――!!


 剣が……くだけた。

 薄緑色の刀身が綺麗に割れて……四方に飛び散る。


「いけぇぇぇぇぇ!!」


 割れた剣の破片は、宙を舞い、ジェイルを囲んだ。

 まるで、万華鏡まんげきょうのように。


 残ったのは、だけ。

 だけど、理解する。


 これは――銃だ。光線銃。

 このは……グリップなんだ。


「――【ミラーリフレクション】!!」


 言葉と同時に、破片が宙で停止した。

 私は、飛び散りジェイルを取り囲む剣の破片の一枚にを向ける。

 そして……そこから放つのは。


「……【孔雀貫線光ピーコックレイ】!!」


 扇状に放たれる光の光線。

 それは、宙に浮く破片に吸い込まれていき……そして、乱反射らんはんしゃを始めたのだ。


「……くっ、このような技まで……見事だっ……――」


 ドドドドドドドドドッ――!!


 実際はそんな音は鳴っていないけれど、イメージで言えばそう。

 宙で乱反射らんはんしゃし、ジェイルに吸い込まれていくように向かっていく光線は。まるで、キューブ型のジャングルジムのようだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る