2-19【温かい食事】



◇温かい食事◇


 少しして、村の人と見られる女の人が食事を持って来てくれた。

 色素の薄い金髪の、とても綺麗な人だった。


 あの子と同じ金髪に、緑色の綺麗な瞳。

 よく似ている……きっと血縁なのだと、確信を持って言えるわ。


「お待たせしてすみません」


 テーブルに置かれたのは、湯気を出すスープ。

 物凄い野菜の数の、野菜スープだった。


「す、すごいっ……」


 野菜がごろごろしている。

 でも、適当に切ったのではなく、ちゃんと手間が掛けられているのが分かった。

 匂いもお腹に来るわね……食欲が余りかなかったけれど……これならいただけそう。


「いただきます……」


 他の二人も総じてべる。

 久しぶりの温かい食事だ……今までは何とも思わなかった食事。

 奴隷どれいになって初めて気付かされた、食へのありがたみ。


 ハッキリ言って……涙が出そうだった。


「とっても、美味しい……です……」


 スープに……ぴちゃんと落ちた水滴は、涙だ。

 もう、泣いていたんだ。


 その様子を、金髪のお姉さんは優しく見守ってくれていた。

 やっぱりそうだ……絶対にあの子の家族だ。

 さっきも言ったけど、分かる。まと雰囲気ふんいきが……よく似ているもの。





「お口に合ったようでよかったです。これでうちの家族も喜びます」


 食器を片付ける、優しいお姉さん。

 この人は、レインと言う名らしい。

 私たちが国に帰れるようになるまで、お世話をしてくれるのだと言う。

 そこまでしてくれなくても、と思ったが。

 他の二人はウキウキだ。


「すっげー美味かったです!感激しましたよ、こんなとこ・・・・・でも、こんなに美味いものがあるんですね!!」


 凄く失礼だ……何なんだろうこのひと

 あれだけ頼りのない言動と行動を見せておいて、この手のひらを返したかのような振る舞い。


 ジュン……さんもそうだ。あきらめたひと

 言い方は悪いかもしれないけど、二人共少しいい気になっている気がする。


 振る舞いや言動を見てれば、二人共きっといい所の生まれなのだろう。

 それでも、ここは他国だ。隣国とは言え、その態度はいかがなものだろうか。


「そ、そうですか。よかったです……それじゃあ、何かあればお呼びくださいね、私は隣の小屋にいますので……」


 ほら、引かれてる。

 隣ってこの集会場……だっけ?

 その隣で待機していてくれるの?そこまでしなくても、いいのに。

 温かい食べ物と眠れる場所をくれただけでも感謝なのに……なにもそこまでしなくても。


 だから私は思った。

 もう少ししたら、あのお姉さん……レインさんに、直接お礼を言いに行こうと。

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