2-14【俺と彼女の出会い2】



◇俺と彼女の出会い2◇


 いったい、何が起きたんだろう……突然出来上がった土の壁。

 その向こうで混乱気味に叫ぶ【テゲル】の兵士。

 小さくて聞き取りにくいけれど……男の子?の声。


 私は、その声に異常なまでの好奇心こうきしんを覚えていた。

 声を聴きたい。顔を見たい。その壁の向こうに行って……直接。


 ――だから、私は。


「ちょっ!ちょっとちょっと!!」


「ど、どうしたんだよ急に!」


 私以外の奴隷どれいにされた二人が私にいうけれど、聞く気はない。


「――黙って!……逃げるんですよねっ!?だったらお二人も手伝ってくださいよっ!!」


 私は、三人一まとめにされている手枷てかせを、無理矢理外そうとこころみた。


「はぁ?」


「な、何言ってるんだよ……そんなの無理に――」


 両手を拘束され、くさりで三人を繋ぎ……その先は地面だ。

 杭を打つようにして、くさりが埋められていたのだ。


「無理じゃない!せめて、この杭が……抜ければっ!」


 そうすれば、動く事だけは出来る。

 だから……大人しく手伝ってよ!帰りたいんでしょ、家に……街に!


「わ、分かったわ……」


「でもさ……ああくそっ、分かったよ!」


 二人も力を込めて、三人の力で杭を抜こうと身体をかたむける。


「……くっ……あああああっ!!」


 自分の手首なんて考えてなかった。

 けても折れる事はないだろうと考えて、思い切り引っ張る。

 名前も知らない奴隷どれい仲間を無理矢理手伝わせて、私は帰るんだ。


 そして……バキン――と、ひしゃげたくさりの根元が折れた。

 元からもろかったのか、私たちの根性が勝ったのかは分からないけれど。


「痛った!」


「痛だ!」


 勢いで三人共倒れるが、私は……一目散に。


「――あ!お、おい!」


 男性が何か言ったけれど、正直もう聞こえなかった。

 くさりは外れたけれど、まだ手枷てかせは付いたままだ。腕の痛みもある。


 それでも、私は走り出していた。

 何のタイミングか……まるで運が味方してくれたように、土の壁が消えていく。

 これはきっと魔法なんだ……魔法使いのヒーローが、私を助けてくれたんだ。


 やがて完全に土の壁が無くなり、その背中が見えた。

 背が低い、身体も細い……きっと少年だ。

 でも……そんな事は関係なかった。


 サラサラの金髪は肩近くまで伸びていて、まるで綺麗な糸のようだ。

 スラッとした体型は、一見少女のようでもあり……それでも男性特有の筋肉の付き方を始めた、年相応の姿。

 緑色の瞳が月明かりでかがやいて、私を映していた。


 この人が、私を助けてくれた……“運命の人”。

 このまま地獄に連れられて行く運命の私を救ってくれた、私の……


「大丈夫ですか……皆さ――ん!?」


「ありがとうございますっ――!!」


 つい、抱きついてしまった。

 いきおいのままとは言え、普通はそこまでしないかもしれない。


「――え、ええっっ!?」

「――あっ……!?」


「うわぁ!?」

「きゃっ!」


 どさり――と、倒れ込んでしまう。

 そう。私が押し倒す形で……彼を下敷きにしてしまったんだ。

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