2-7【力量は】



◇力量は◇


 仮に今から盗賊団を潰しに行くとして、二人で行くってのはいただけない。

 相手は何人だ?どれくらいの装備を持っている?

 あの時のように、人質などはいないのか?

 拠点きょてんは?本当に二人で大丈夫なのか?


 数えたらキリがないよ。

 しかも厄介やっかいなのは、クラウ姉さんがやけに自信過剰な事だ。

 強いのは分かるけどさ、実際……俺も剣ではかなわない。

 【無限むげん】を使えば勝てる可能性もあるだろうが、能力がバレてないなら言わなくてもいいだろう。と言う考えだ。

 【無限むげん】は魔法……って事で誤魔化しているんだし。


「ほら、行くよ?」


「だから!ちょっと話を聞いてよっ」


「なに?」


 なにじゃなくて!


「……二人でなんて無謀むぼうだよ、相手がどれだけいるのか分かってるの!?」


 クラウ姉さんは指をくちびるに這わせ、一瞬だけ考えこむと。


「相手は二十人よ。武装はかわの胸当てが基本装備……剣に弓、斧がメインの武器ね……アジトはなくて、野営が中心で夜間は酒を飲んで無警戒……だから、これからがチャンス」


 クラウ姉さんは「これでいい?」と言いたそうに俺を見る。

 下準備までしてやがった……なんなんだよ、いったい。

 反論させる気ねぇじゃんか。


「そ、それでも……慎重に行動をした方がいいよ、僕はまた父さんに怒られたくないから」


「……最短で終わるから別に怒られないわよ。バレない内に帰ってくればいいんだから」


 二十人を!?いくら【クラウソラス】があるからって過信しすぎじゃないか?

 俺だって、本音を言えば能力を試したい!優等生設定なんてしなけりゃよかったって何度か思ってしまったよ!


「――ほら、行くからついてきて……」


「……」


 ああ、案内までしてくれんのね。

 仕方ないな……もうさ、どうにでもなれだよ。





 俺とクラウ姉さんが村の北口から外に出て、数十分後。

 暗がりの森の中……その残党たちはいた。


「ん?盗賊……か?」


 どちらかと言えば、それこそ残党兵だと思った。

 【リードンセルク王国】で戦いが起きたと言っていたが、その敗残兵……と言った風貌ふうぼうだ。


「――盗賊でしょ?違うの?」


 クラウ姉さんには盗賊に見えるのか。

 いや、確かになりはボロボロだし、小汚く見える。

 だから一目じゃあ盗賊と区別がつけにくいだろうけどさ。

 それでも、節々から見て取れる仕草や振る舞いは、軍人のそれに近い。


 クラウ姉さんの前世は、もしかしたらファンタジーにはくわしくないお方だったのかな?


「――いや、あれは多分敗残兵だよ。どこの国の軍なんだろう……旗でもあれば簡単なんだけどね」


 思う所はまだある……それは、人数だ。

 クラウ姉さんは二十人と言ったが……正確には十七人だ。

 残りの三人は……違う。


「あれは……奴隷どれい……かな?」


奴隷どれい?……最低ね」


 見窄みすぼらしい格好の二人の女と、一人の男がいる。

 どう見ても兵士ではないな、手枷てかせもされているし、まず確定だろう。


「でも、これで余計にむずかしくなる……っ!」


 そうだ。たとえ兵士が減ったとしても、奴隷どれいを盾にされたりしては非常に戦いにくくなるよな。


「そういうもの?」


「そりゃそうだよ」


 まさか敗残兵……どこの国の軍かは知らないが、軍人だとはな。

 正規の軍人なら当然きたえられえているだろうし、一筋縄では行かないって。

 それにこちらはただの村人だぞ、そんな簡単に倒せたら軍人泣いちゃうって。

 でも、やるだけやるしかない……奴隷どれいなんてものは、どんな時代どんな世界でも、あっちゃいけないんだからな。

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