1-76【これが俺のファーストステップ3】



◇これが俺のファーストステップ3◇


 あ~……死んだんだな。俺、また死んだんだ。

 だってさ、ここ・・……見覚えあるもんなぁ。


 真っ白な空間だ。何もない、白い紙を合わせたような異質な場所。

 そうだろそうだろ?転生前に見た最後の記憶と同じだよ、まったくさ。


「――ってことは、アイツがいるのか?」


 あのポンコツがさ。

 それとも何?また転生させてくれんの?

 ははは……それはラッキーだね――投げやりじゃねーよ。


「おーい、女神さま~?いるんだろ~」


 名前なんだっけな。

 確か……ア、アイ……アイスクリーム?


『――アイズレーンだっつーのぉぉぉ!!』


 ああそうそう……【女神アイズレーン】だ。

 確か、そうだ。アイズって呼べって言ってたよな。

 皆、覚えてる?俺はほとんど忘れてたよ?だって、転生してもう十年だぜ?


「あ、お久しぶりです……アイズ……さま?」


 俺の目の前に、あの時と同じ光の球体で現れたアイズだが。

 なんだか雰囲気ふんいきがおかしい。


「あ、あれ……?」


『あんた……何してんの?』


 何って。死んだんじゃないか。


『違うわよ。そうじゃなくって……ジャミングよ、ジャミング!』


 ジャミング?妨害って事か?誰に対してだよ。

 俺はそんな事してませんけど?


『――してたのよ!私に対して!!』


 女神にジャミング?

 なに?この女神、俺に連絡を取ろうとしてたって事か?


『そうよ!不愉快ふゆかいにもね!!』


 不愉快ふゆかいならすんなよ!聞いたこっちが不愉快ふゆかいだっつの!


「――で、なんなんだよアイズ。俺に何の用だ?俺、死んじまったけど……その用件意味あんの?」


まだ・・死んで無いわよ。神の権限を使って、強制的にこっちに来てもらったの……やっと通じたんだから、死んでもらっちゃ困るし』


 え、マジ?俺……まだ死んで無いの?


『今はまだ……ね』


 なんだよその、これから死ぬみたいな言い方。

 いや……まぁ、どっちでも一緒か。


『……あきらめてんじゃないわよ』


 だってなぁ、あの状況だぞ?

 目の前に迫ったあの靴……仕込み刃だぜ?

 あのまま行けば、絶対死ぬじゃん。


「無理だって。あのままじゃあ何も出来ないよ……それでも、ガルスはクラウ姉さんが助けるだろ?なら、解決じゃねぇか」


 例え俺が死んでも……さ。


『……あんた、もしかして転生前よりもひねくれてない?』


 そうかもな。理不尽な世界に転生して、赤ちゃんからやり直したんだ。

 人格がもう一つ出来たと言っても過言かごんではないだろう。


『それでも、まだたったの十年でしょ?あんたは前世で三十年生きてきた……手違いなんて言う理不尽に、殺されるまではね……』


 そうだけどさ、でもどうするんだよ。

 このままでは何も出来ないって事くらい、それは俺が一番分かってるんだ。


『そうね、だから……私、【女神アイズレーン】が来たんでしょ?正確にはあんたに来てもらったんだけどさ』


 ん……?どういう事だ?この状況で、まだ俺には何かが出来るのか?

 俺にはまだ、何かをするチャンスがあるのか……!?


『――そうよ。だから、さっさと私の助言を聞いて……あっちに帰って戦いなさい!!武邑たけむらみお!!』


 へっ……前世の名前なんて、呼ぶんじゃねぇよ。

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