1-44【女神の囁き3】



◇女神のささやき3◇


 【女神イエシアス】は、俺の言葉に納得なっとくした様子ではあったが、声だけでは何とも言えないだろうと、俺は疑心ぎしんに駆られていた。

 当然だろう。存在が神だったとしても、信用できないものは信用できない。

 俺はすでに、女神に信用が置けない事をその身で感じているんだからさ。


『それにしても、姉弟で転生者って……凄い偶然ぐうぜんねぇ、そう思わない?』


 まぁ、それは俺も思うよ。

 クラウお姉ちゃんが俺と同じ転生者……しかもどうやら、名前的に日本人っぽいんだよな。せいな……だっけ?


『――さぁ、どうでしょうね、ノーコメントよ』


 なぁ、女神さまさぁ……あんたはこの世界の神なのか?

 それとも、俺を転生させたあの女神……え~っと、名前忘れたけど、あいつと同じなのか?


『さぁ~。どうでしょうね~』


 答えるつもりないな……まぁでも、チートがどうのこうのって言ってる時点で「あ、さっし」だけどな。


 うぉわっ――!!な、なんかどこかの女神が『アイズレーンだって言ってんでしょ!!』って、怒ってる気がしたわ。


『――私の探す転生者が見つかれば、別にお姉ちゃんにも迷惑はかけないわよ?』


 う、やっぱり俺が心配してる事も分かってたか……あ、もしや昨日から気付いてやがったな?


『うふふ、正~解♪』


 性格悪ぃ……あのポン女神もそんな感じだし、神って大体そうなんだな。

 それにしても、チート全盛りってすげぇな……どんな能力を持ってんだろう。


『転生者は数多くいるわ。でも、どこぞの誰かがミスをして、その尻拭いをさせられた女神までミスしてしまってねぇ……』


 へぇ……大変だな。

 二重でミスってんじゃん。


『転生の術式は、誰が誰に転生したとかが記録させないのよ。しかも、書類とかが勝手に破棄されちゃうのよね』


 不便かよ。バックアップは基本だろ?

 しかしそれだと、わざわざこっちの世界で探さないといけないのか。

 ああ、だからこの女神さまは探してんのか。

 ――って、その時点であっちの世界の神さまじゃねーか!


『私の目的は、その転生者を見つけて……殺す事よ。そうすれば、持っていかれた全ての能力を回収できるわ』


 もしかして、残ってたチートを全部配布はいふしちまったから、次の転生が出来ない……とか?


『そうよ。今、神界はごちゃごちゃしているわ。女神もこの世界に降りてきているわよ?』


 マジ?他にも女神さまがこの世界にいるのかよ。


『ええ』


 あの〜ところで女神さま……もしかして、家までついて行く気ですか?


 俺は目をつぶってるからよくは分かんないけどさ、クラウお姉ちゃんにおぶられているって事は、家に帰っているって事だろ?

 そんで女神さまは俺に話しかけ続けている……一緒にいるよね?今。


『いるわねぇ。存在は魔法で消しているから、クラウには見えなくなってるけど……隣で君の顔を見てるわよぉ?』


 マ、マジかよ。もしかしてこのまま居座る気?


『――それはないわぁ。私も暇じゃないし、チート転生者を探さないとねぇ』


 そ、そっか。ちょっと安心した。

 存在消して話しかけてくるとか……プライベートが無くなっちまうよ。

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