第34話 スパルタな日常
=コロ↑コロ↓コロ→、(5,6)『11』=
「う~ん」
僕はステータス、それも裏へ移行したステータスのスキルの部分と睨めっこしている。
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ステータス【裏】
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スキル
再生Ⅹ 10000
分解Ⅹ 10000
魔眼Ⅹ 10000
強化Ⅹ 10000
振動操作Ⅹ 10000
魔力操作Ⅹ 10000
召喚術Ⅹ 10000
収納空間Ⅹ 10000
悪食Ⅹ 10000
格闘術Ⅹ 10000
転移Ⅹ 120
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とくにこの三つのスキルだ。
・分解
・魔眼
・転移
三つのスキル、中でも『分解』と『魔眼』に関しては熟練度がカンストしているにもかかわらず意識的に活用して来なかったように思う。この二つは生活魔法で活用されているスキルのはずだ。他のスキルは何となくどの魔法で扱えているかがわかるのだがこの二つだけ僕にはわからない。いまさらになって気になったので考えているところだ。
『転移』に関しては熟練度もまだまだなので全くと言っていいほど扱いきれていないのだろう。裏ステータスのスキルに関しては、リアナの様に自由にスキルポイントを振り分けることができなかったのでいつ習得したのかも定かではない。これに関しては全くの不明。扱い方から何まで最初から調べなければならない。僕の無才なところを考え見るに手足の様に扱えるようになるには試練のとき同様の相応な時間が必要になるものと思う。
「どうしたの? セイ」
「あぁ、裏ステータスの『分解』と『魔眼』のスキルがどこで使われているかが、はっきりとしてなかったから考えてたんだけど・・・」
「ん? 『クリーン』だよ?」
「え?」
リアナはどれがどれなのか理解しているらしく教えてくれた。
生活魔法『クリーン』は三つのスキルで構成されている。
・『再生』は対象の構成情報を転写し修理修復する能力。
・『分解』は対象の構成情報を分離し分解解体する能力。
・『魔眼』は瞳を媒介に様々な能力を発現させる能力。
『クリーン』の基本的な動きとしては、自身の傷を修復するとき『魔眼』で過去の健康な自身の構成情報を取得し、『再生』で現在の構成情報に上書き、最後に『分解』で無駄な構成情報を処理する。と、これら三段階の動きを行っている。
「セイは暗示に近い形で生活魔法を習得した 思い込みで魔法を構築しているからスキルをそれぞれに使うことが慣れていないのかも」
「なるほど 『クリーン』の魔法を分割して扱うこともできるようになるのかな?」
「ん、たぶんできる でも、『魔眼』に関しては過去現在未来を見通す能力に偏っているかもしれない 一度偏った能力の矯正は難しい」
「んー まぁ、それは仕方ないか 別々に能力が使えるようになるだけでも応用が利くようになるから先ずはそれを目指すよ」
僕が人生で初めて習得した魔法『クリーン』を今になって習得し直すとは何とも感慨深いように思う。無才な僕でもライムの著書で無理矢理習得した生活魔法。僕はまだ生活魔法の神髄にたどり着いていないと再確認させられた。
「あとは『転移』も使えるようになってるみたいなんだけど・・・ これって多分自動取得だよね?」
「ん 位階上昇時のスキルポイントが自動で割り振られてる」
「エリアスの強制転移がそれだけ強力だったのかな?」
「ん それもあるけど、もしかしたら適性があったのかも」
「適正? 『転移』を習得しやすいとかそういうもの?」
「ん、そう」
適正ねぇ~。正直自覚ないな~。適性があったならダンジョン内を転移させられるときにでも習得していてもおかしくないと思うけど、、、どうなんだろう?
「まぁ、転移については何もわからないから教えてほしい」
「ん、任せて セイに乗ったつもりで任せて」
「僕に乗った状態ってどういうこと?」
「豪華客船なんかよりももっと素晴らしい最上級」
「・・・さいですか」
ま、まぁ、転移に関してはリアナに頼ろうと思う。メイドというだけで転移も当たり前のようにできるそうなので指導者としては適任だろう(?)。まだまだ強くなる余地が分かったのだから僕はこれを埋めていきたい。
その日から、朝の日課に『分解』と『魔眼』、『転移』の修行が追加された。
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ある日の日常の出来事。朝、いつもの日課が終わりゆったりとした時間を過ごしていると乱入者が現れる。
「よっ 元気にしてたかー」
「あ、エリアス」
突然のエリアスの登場である。何の前触れもなく、魔力の揺らぎもなく、画面が切り替わるような一瞬でエリアスは対面の椅子に座っていた。
「あ、えっと おはようございます? たぶん、面と向かって話すのは初めてですよね?」
「あー、そうだったか? 話したような話していないようなー まぁ、改めてよろしく」
「はい、よろしくお願いします」
なんだろう?どこか掴み切れない様なそんな雰囲気を感じる。
「ん、どうしたの?」
「ああ、突然だが・・・ちょっと修行していけ」
そう話すとまたいつかの時の様にガシッと頭を掴まれてしまう。
「・・・また試練ですか?」
「いや、今回は違う 俺のお節介のようなものだ」
今回はエリアスも一緒に転移し視界が自宅の風景から切り替わる。
暗い青色のような空間。漢字で書くなら碧と書きたくなるようなそんな青色。床は石畳というか硬質なクリスタルのようで青く透けているように見えなくもない。
地面はしっかりとしており、試練の時の異常空間のような場所ではないようだ。
「エリアスさんってなんだかせっかちですよね もう少し説明があってもいい様に思うのですが・・・」
「んん? なーに、不死なら生き急ぐぐらいが丁度いいんだよ どうせ死なないんだからな ハハハwww」
「ん、笑い事じゃない 説明は欲しい」
「悪かった悪かった」
エリアスさんなりの永遠の生き方なのかな?僕も不老の身であることを考えるとそういった思考も必要になるのかもしれない。
「ははは まぁ、修行だそうですが、これから何をするのですか?」
「ああ、修行と言ってもそんな大層なことじゃない 実戦形式で俺の分身体と戦い続けてもらうだけだ 実戦に勝る修行はないからな」
「実戦形式ですか?」
「そうそう、この空間は現実とは時間の流れが違うからそこら辺は気にしなくてもいい 目標としては、その扱いきれていないスキルの習熟だな」
「『再生』と『分解』と『魔眼』ですね」
「ついでに転移能力も実践の中で扱えるように修行してみな」
「わかりました がんばってみます」
進捗の悪いスキルの修行を手伝うために今回の事を企画したかな?
「リアナは分身体同士の修行だな 同時に扱える数が増えれば増えるほど有利になること間違いなし」
「ん、セイに憑依しながらやる」
リアナは分身体か。単純に考えても数は力だからな~。悪くない選択かもしれない。
「よし、始めるぞ 死ぬ気でがんばれよ とりあえず百人で今回は終了だ」
え?百人!? エリアスに抗議する間もなく、次の瞬間にはエリアスと全く同じ見た目の分身体たちが青い空間を埋め尽くしていた。
エリアスの分身体の群れの中から一人が僕と対峙し、特に合図もなく戦闘が始まる。
慌てて、リアナとの憑依を完了させ初撃どうにか回避するところから戦闘を進んでいった。
相手の拳を受け流しこちらも打撃を加えるが受け流される。フェイントを混ぜた攻撃、スピードを用いた翻弄、それぞれの武具を用いた攻防が続く。
分身と僕の身体能力は互角。拳を打ち合っても、速さを比べても、どちらが上ということはない。ステータス上の数値は同じカンスト数値なのだろう。
武器は僕は『チェンジ』を用いた多彩な武器種と戦闘用の靴。エリアスの分身体は二丁の拳銃。
僕は相手との距離に合わせて手を変え品を変え戦闘を継続する。『真似る』で観察し徐々に一つ一つの攻撃に慣れていくいつもの戦闘スタイル。
エリアスの分身体はいわゆるガンカタ。二丁の拳銃を手に近接格闘戦を仕掛けてくる。距離が離れれば多彩な魔法弾が乱れ飛び、距離を詰めれば基本に忠実な銃撃を織り交ぜた格闘戦を仕掛けてくる。
僕がハルバードで薙ぎ払えば、相手は切っ先を足場に回避する。宙を舞う中銃撃が飛ぶ。僕は咄嗟に盾で銃撃を受け流した。相手が盾の視界に一瞬隠れた隙を突かれ距離を詰められる。顎先に銃口を突き付けられ攻撃が来る前に回避。短剣と格闘術で応戦するが銃口が太腿や脇、胴体など狙いをばらけさせる為、僕は回避優先にならざる負えない。
超近距離で戦っているにもかかわらず槍の使い手と戦っているようなめんどくささ。慌てて距離を話せば魔法銃撃の飽和攻撃。どの戦闘距離でも安全な場所がなく一息つく暇もない。
それでいて戦闘技術、戦闘経験は相手の方が上。いつかのイフリートとの戦いの様に能力では互角のはずなのに一方的な戦闘が続いて行く。
辛うじて有利なのはリアナと二人係で身体強化している為、少し差ができつつあることだろうか?単純に計算して能力値に二倍の開きが生まれるはずだ。にもかかわらず僕たちは終始押し切られている。
「ただただ、戦闘経験が足らない」
戦闘経験に圧倒的な差がある。これでまだ一人目だ。エリアスはとりあえず百人とか無茶なことを言ってた。
百人倒すには何時間かかることやら。
(ん、だからこの空間 時間を気にせずに試行錯誤しろってことだと思う)
「んな、むちゃくちゃな」
(ん でも、一つ一つクリアしていく)
「はぁ ま、いつも通りか」
僕にできることには限りがある。才能がない僕は他人を真似て取り入れるしかない。今回も今までと変わらない。『真似る』で真似て真似て真似て、ひたすら対象を観察して、自身に取り入れていくしかない。一朝一夕にはできないことだからエリアスはむちゃくちゃな環境を用意してくれたとポジティブに考えよう。というかそう思わないと恨みたくなる。
その後は少しずつ少しずつ、エリアスの分身体の戦闘技術を取り入れていき反撃できるようになっていった。どれだけの時間をどれだけの時の中を休みなく戦闘を続けていたのかわからなかったが、カタツムリのような一歩だとしても確実に状況は進んでいった。
一人目を倒したら休みなく二人目との連戦。分身体の戦闘能力は変わらないようだったのが救いだった。
何度も戦闘を繰り返し、『クリーン』を『再生』『分解』『魔眼』の三つのスキルに分割して使っていく。『クリーン』の発動よりはぎこちないが今までと違った活用方法は出来つつあった。
リアナはリアナで僕の見えないところで分身体を操って戦闘を繰り広げているようだった。時折、肉を打つ戦闘音が聞こえてきたので同じ空間内で戦闘をしていたらしい。
僕が徐々に戦闘ができるようになってからはリアナによる身体強化も薄れていき、リアナは分身体の操作に集中することになる。
能力値が同じになればまた戦闘時間が延びることになったが何とか一人一人打倒していく。
確実に進んで行けばいつかは終わりが来るもので百人目を打倒すことができた。
「おう、お疲れ なかなか早かったぞ? 現実の時間は八時間ほどしか進んでない」
「すぅ~、あぁあぁぁ~ あれだけの戦闘時間で八時間ですか 絶対数日の長さじゃないですよね?」
「ああ、だいたい百万倍ぐらいのずれじゃねえかな? 詳しく調べたことないからわからんがそれぐらいな気がするよ」
・・・・・・え? 少なくても900百年近く戦ってたの?それだけの時間が過ぎていたことも驚きだけど、休みなく戦えていた僕自身の体にも驚き。
もう一度、ビーちゃんを一息に吸い込んで長い長い吐息と一緒に吐き出す。
「ふぅ~~~ 900年戦わせるとかスパルタ過ぎねえ? ねぇ?」
「まあまあ、おかげでなんか掴めはしただろ?」
「まぁ、そうだけど・・・」
それにしても限度というものがないだろうか?不死者だからか?不死者だからこんな無茶を無茶とも思わないのか?
(ん、私の方も終わった)
「お疲れリアナ」
憑依を解除してリアナにねぎらいの言葉をかける。
「ん、セイもお疲れ」
「よし、二人とも終わったな お疲れさん 今日のところはこれで終了だ また、朝呼び行くから準備しといてくれ」
「お疲れ って、明日? ちょっとまて、あと何回するんだ?」
「おう、他の不死者も何かと気にかけてるみたいでな 明日は、康あたりが面倒見てくれるはずだぞ? 俺も時々顔を出すからよろしくな~ では解散!」
「っちょ ちょっとまって」
僕が言い終わる前に景色は自宅のものに変わってしまった。窓から見える空は真っ暗になっている。
「・・・え これ毎日続くの?」
「・・・ん、かも」
僕とリアナの間に何とも言えない沈黙が続く。
「あ、言い忘れてた 最近どうも怪しげな動きをしてる奴がいるから気をつけてなぁ~」
沈黙の中、エリアスがまた表れ、そう一言残すとまた消えてしまった。
「・・・もう今日は寝ようか」
「・・・ん セイ補充する」
「え?」
その日一日はエリアスに連れ去られ修行をしてそれで終わりました。終わったのです。
翌日からは本当に不死者が代わる代わる僕たちに修行をつけていってくれた。何度も続けていくうちに日常生活に支障が出ない程度の修行時間まで短縮することができたが、それまでの道のりが長かった。
不死者の方々は個人で完結している能力が多い為、教えることに向いていないのかエリアスのような実戦形式の修行ばかりだった。
確かに僕の血肉となる修行だったが、同じぐらい僕の血肉が飛び散るスパルタな修行内容であり精神はそれ以上に削られる日々だった。
足らなかった戦闘経験を少なからず積むことができたのは良かったことなのだろうか?悪い事ではないと思うけど、不休の連続戦闘の日々はどうにかならなかったのかと一言申したい。
まぁ、物申したところで圧倒的に強い彼ら彼女らには敵わないので何も変化が無かったのだが。。。
不死者のそれぞれの修行内容については話せるぐらい精神が落ち着いてからのほうがいいかな~。今話すと恨み辛みの酷い文章になりそうでやめることにします。
あと、修行の日々で辛かったのはリアナと、、、うん、、、その、、、まぁ、だね?
何とか生き残ることができたので日常へと戻ります!そうします!
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