第16話 幕間 少女の繰り返し
私はこのダンジョンの多い都市で生まれた。特に不自由のない一般の家庭。父親は役所で働き、母は専業主婦。私は何不自由なく過ごせてこれたという訳でもない。
まぁ、いわゆるイジメだ。両親の容姿は他の人から見てもそのほとんどが整っていると判断するだろう程には綺麗でカッコイイ。その娘である私も当然そうなるはずだったのだが・・・これが何というか絶妙に不細工なのである。
パーツごとに分割して両親と見比べれば共通点が多く、私は両親の娘であると判断できる。だが、全体を見ると途端に不細工になる。パーツはいいのに配置が酷いがために私の容姿は不細工なのだ。
人と違うということは良くも悪くも人の輪からはぶられることになる。私の場合は悪い方。自分たちと違う存在は排斥され排除される。物理的、精神的問わずに不特定多数の人から遠巻きにされ虐められた。
虐められている私の立場からすると一番怒りを覚えるのは見ている人だ。私が何をされているのかわかっているのに無視をする。これの多くが大の大人であるのだから質が悪い。
次第に人間不信になるのは仕方がないことでは?特に大人という存在が生理的嫌悪感の対象になるのは早かった。ゴキブリと同じだ。脊髄反射で殺したくなる。辛うじて両親の愛情もあり全てをすべて怒りの対象にすることはなかったがそれでも人の社会で生きていくうえで支障が出る程度には人間というものが嫌いになっていた。
これまでが10歳までの時間で形成された。十年というのは長いようで短い。だが、常に不快な状況にいるのは体感時間として長く感じ苦痛だった。
私の人生に転機が訪れるのが10歳の祝福の儀の時だ。
祝福の儀は一生付き合うことになる武具を授かる儀式。その人専用の武具は他の人には扱うことができず、武具の性能は一つとして同じものはない。似ている物があるのは仕方がないのかもしれない。
この儀式で私が授かった物は『英霊召喚の魔法陣』だ。効果は単純、英霊を召喚できるようになること。英霊に所縁のある物を対象に前準備をすることなく召喚することができる。ただ、これは物質的な物ではないため、私がその存在を理解したのは二ヶ月後のステータスを確認した時だった。
それまでの二ヶ月間は今まで以上にいじめが加速した。子供は手に入れた力を自慢したいものだ。それは自分の両親にだけでなく学校などの人間関係の中でも行われる。同年代の者に自身の力を誇示するために振るわれる。その振るわれる対象が最底辺に位置していた私だった。
何も持っていないと祝福されることもなかったと馬鹿にされ自身がどれだけ恵まれているかを示すためだけに振るわれる暴力。私を庇うものはなく、私自身に振り払うような力も精神性も持ち合わせていなかった。
斬られ、殴られ、溺れ、焼かれ、爛れ、壊される。精神と肉体の両面から私にはない超常の力で傷つけられた。無邪気な、自身が何をしているのか理解していない子供の行動は拷問よりも尚酷い。
外傷は全て何もなかったかのように直される。欠損したとしても今の技術であれば簡単に治ってしまう。治せてしまう。外傷だけは・・・。
両親に話す気力もなく、ただ、何かが壊されていく日々。こんな状況でも人間は慣れるもので次第に歪な形で修復されていく。
それから、二ヶ月。ステータスを確認し私にも祝福があったことを見つけた。
確認した時刻は11時になる少し前。外は既に暗かったが特に気にせず外出した。向かう場所は人気のない場所、人が近づかないような場所。私は市街のゴミ捨て場に向かった。
そこは、コンクリートで囲まれた何もない場所。早朝であればゴミで溢れている場所だが今の時間帯ではごみをスライムが食べつくしてしまうため何もない。時々動く気配がするのはスライムだろう。
私はよくこの場所に来る。それなりの広さだが明かりはなく真っ暗な暗闇の中、空を見上げるのだ。その空はポツポツと弱い光を放つ星と月しか写さない。よく晴れた日でもほぼ真っ暗な空。
私はしばらくボーッとしていたがここに来た目的を思い出し行動に移す。
英霊との所縁のあるものなど私は持っていなかった。私は何も発動しないだろうと思いながら召喚を行使する。
英霊召喚は発動した。発動してしまった。
魔法陣から現れたのはスレンダーな女性。一瞬金髪に見えたが文字通り透き通っている。半透明なようで長髪の毛先の方は空間に溶けるように消えていく。瞳の色は水色。角度によって色の濃さが変わる不思議な瞳。服装はそのスレンダーな体形に合った格好だった。紺色のズボンや黒のラフなシャツ・・・。
「ここはゴミ処理所か?」
綺麗な声とは裏腹に男臭い口調。
「・・・・・ぅん」
私は会話を長いことしていなかったのでうまく返事ができなかった。
「で、召喚したのは君かな?」
「・・・・・ん」
「ちょっと待ってて、情報を整理してくる」
「・・・ん?」
何やらぶつぶつと独り言を話始める召喚された女性。祝福で使えるようになった英霊召喚の魔法陣から現れたのだから英霊のはずだ。私は一人でいることが多かったことからよく読書をしていた。物語を中心に読んでいたがこの特徴のある女性が思い浮かばない。何の英霊なのだろうか?
女性の独り言は長かった。聞き取れたのは途切れ途切れの言葉のみ。
「・・46年っ・・番平・な時じ・・・」
「シル・も・・ムも・・・たの?他・・・霊は・たで・・・に全・・否・・」
「はあ!?ラ・・の命・?珍・・・・・ムが・を・・・く・な・て滅多・な・こ・・ぞ?」
「・・いことはナ・ス・・ムに聞・・て・・・。め・・・・がら・・教・・よ・・・。は・・・、わ・・ま・た、そ・・ま・、・うし・す、へ・・い、わるうござんしたね!?」
最後は何やら切れ気味に会話?を切り上げたらしく、私はその声にビクッとしてしまった。
「あ~、事情は何となく分かった。それで君はどうしたいのかな?」
「・・・ん ・・・な にも ない」
「何もない?」
「ん、召喚 を ためし た だけ・・・」
「ん~~? あ~、なるほど」
私が言うのもなんだが会話が全然できなかった。もう何年も話していなかったからかうまく言葉を話せない。この女性にはどうやら伝わった様子で頻りにうなずいている。
頭をガシガシ掻きながら女性は話す。
「んがぁ~~~、これも何かの縁か。よし、俺がいっちょ鍛えてやる。俺の名前はエリアス、エリアス・エリクシールだ。君の名前は?」
「わ たし の 名前 は アドリアナ。アドリアナ・ヴォフク」
「これからよろしく、アドリアナ。少し長いしリアナでもいいか?」
「ん、よろしく」
これを機に私、アドリアナは召喚された英霊、エリアスに鍛えられることになった。どうしてこうなったのかは今思い返してみても分からない。
エリアスの鍛錬を受けるにあたってまず私の現在のステータスの確認から始まった。
「・・・ステータス」
一言呟くと自身のステータスを見ることができるのだがなぜか二つ現れた。
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アドリアナ・ヴォフク 10才
レベル:1
種族:人間
職業:魔法使い1
スキル
【無属性】
魔法
なし
【英霊召喚の魔法陣】
・所縁のある物を媒介に英霊を召喚する。
・必要な事は所縁のある物を所持していることのみ。
(その他各種ステータスのグラフ表記)
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アドリアナ・ヴォフク
種族:人間
レベル:1
HP:10/10
MP:10/10
攻撃:1
魔力:1
防御:1
精神:1
速さ:1
スキル 残りスキルポイント1
魔力操作Ⅰ1
召喚魔法Ⅰ1
苦痛耐性Ⅶ5092
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前半のステータスは私に馴染みのあるステータス表記。二つ目のステータスは私が知らない表記だった。
エリアスに確認したところ二つ目のステータスがこの世界本来のステータスなのだそうだ。この世界は人間が様々な世界と時に交流し時に侵略され撃退か破滅を繰り返し何度も文明を再構築していく中で混じり合ったらしい。この混沌は生物の血筋だけでなくステータスという力すら混じり合い何度も繰り返していく中で今の簡略化されたステータスになったらしい。
だから、どちらのステータスもこの世界で使える為、自信を強化することができる。二つ目のステータスが見えるようになったのはエリアスが私に細工をしたからだそうだ。私の強化を計るうえで簡略化されたステータスよりもエリアスにとって馴染み深いステータスを使った方が分かりやすいとのこと。
二つ目のステータスがどういうものなのか詳しく話されていないがスキルポイントを大事に使うようにとは説明を受けている。なんでもこのポイントは一人100ポイントまでしか稼ぐことの出来ない貴重な数値らしく鍛えられた後に振り分けるように念を推された。
私はエリアスからザッとした説明を受け、翌日からレベル上げの日々が始まった。
毎日、早朝から深夜までエリアスに連れられてダンジョン探索の日々となった。学校へも行かずエリアスに首根っこ掴まれてダンジョンに無断で入る日々。エリアスに掴まれて少しするとダンジョンの深層にいるのだ。目を閉じていなかったのにテレビの画面が切り替わるかのように別の場所にいる。
初めは訳も分からず、質問しようとしたが私に経験したことのない重圧が襲いかかった為動くことができなくなった。今覚えば、あれは単純で稚拙な殺気だったのだろう。自身よりも遥かに格上の生物からぶつけられる殺気。それも私に直接向けたものではないにもかかわらず私は簡単に生きることを放棄した。ああ、死ぬんだ、食べられるんだ、痛いのは嫌だなぁ、と思考を放棄した頭には現実が入り込まなくなり茫然自失となってしまった。
気づくと私は自分のベットで寝ていた。窓の外を見るとすでに夜も深い。何が何だか理解が追い付かないが酷く疲労していることは確かであり窓から意識がそれた時には眠りに落ちていた。
そんな日々を送っていた為私がどこに連れられて何をしていたのか当時の私には何一つ分からなかった。
今だから説明できるが私はこのダンジョン都市にある四大迷宮の深層に訪れていたのだ。一年ごとに迷宮を変えエリアスが魔物を倒すのについて行く。ただそれだけだが今の人類では到達できる人がごく少数の領域を闊歩していた。エリアスにとっては何の障害にもならないらしくお荷物でしかない私を小脇に抱えながら魔物を根絶やしにしていく。少し歩くだけで無数の魔物に遭遇する極悪な難易度の迷宮内を拳銃一つで殲滅していく。弾切れを起こす様子がないことから魔法の銃だったことは確かなはずだ。
私は何もしていないのに私のレベルは上がり続けた。
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アドリアナ・ヴォフク 20才
レベル:99
種族:人間
職業:魔法使い99
スキル
【無属性】
魔法
なし
【英霊召喚の魔法陣】
・所縁のある物を媒介に英霊を召喚する。
・必要な事は所縁のある物を所持していることのみ。
(その他各種ステータスのグラフ表記)
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ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
アドリアナ・ヴォフク
種族:人間
レベル:5000
HP:5765/5765
MP:17866/17866
攻撃:229
魔力:999
防御:372
精神:999
速さ:426
スキル 残りスキルポイント100
魔力操作Ⅶ6166
召喚魔法Ⅶ5922
苦痛耐性Ⅹ10000
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私が生まれてから使ってきたステータスは半年も経たない内にレベル99になった。
二つ目のステータスは一年に500レベルずつ上昇した。1レベル上がると攻撃、魔力、防御、精神、速さ、の数値がランダムなのか1上昇しHP、MPは規則性なく上昇した。この上昇は正しくしているようで攻撃が1上昇しただけでも大きな変化が現れる。
少し前までリンゴの皮むきなんて楽にできたのにレベル上げに連れられて返ってくるとリンゴと包丁の握り手を跡形もなく潰してしまった。
エリアスのキーホルダーとしてダンジョンについて行くこと10年二つ目のステータスが5000になる。この間、私は一切戦闘をしていない。私と一時的に契約した英霊であるエリアスが経験値を獲得することで私もその数%ほどの経験値を獲得できているのだと説明された。
レベルが5000になった時、二つ目のステータスに変化が現れた。
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ステータス(裏)
種族:人間
位階:Ⅰ
魂装:
HP:5765/5765
MP:17866/17866
攻撃:229
魔力:1100
防御:372
精神:1100
速さ:426
スキル 残りスキルポイント100
魔力操作Ⅶ6166
召喚魔法Ⅶ5922
苦痛耐性Ⅹ10000
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このステータスを私が確認すると視界が光に包まれ目の前には私がいた。
正確には10年前の私だ。見覚えのあるゴミ捨て場で私は10年前の私と向かい合っている。
私も目の前の私も状況が理解できず立ち尽くしていると数舜の瞬きのうちに視界が切り替わった。
英霊召喚された私が消えたのだ。10年前の私に同化する形で。
そして、理解させられる。ステータスが裏に移行するということは英霊として世界に登録されるということ。私の英霊召喚に必要なものは所縁のある物だ。ゴミ捨て場での召喚の状況で一番縁の深い存在は私自身になる。よって、英霊である私は10年前のゴミ捨て場に召喚され縁が深すぎるがゆえに同化した。
記憶や経験が統合され状況を無理ありに理解させられた。英霊の在り方を情報の洪水に晒される様に理解させられた。
ここからが私にとっての地獄の始まりである。
ここからは繰り返し続ける。初めて英霊召喚の使ったゴミ捨て場の夜からレベルが5000になったその日の期間を永遠と繰り返し続ける。十年という長いようで短い時間を繰り返し続けることになった。
繰り返し始めて数回は状況の理解が追い付かず翻弄される日々を過ごすことになる。私が理解させられた情報は『英霊とは何か?』という事のみだ。英霊がどのような条件で発生するのか、どのような存在なのか、役目は何か、目的は何か、なぜ生まれたのか、等々必要のない情報も合わせて英霊については理解させられた。
しかし、私が何故同じ『時』の中を繰り返し続けているのかの理由は情報にない。何度も繰り返す内に現状がイレギュラーであることが徐々にわかってくる。
助力を得ようと英霊召喚を発動するが英霊が召喚されることはなかった。これは『私』という英霊を召喚し続けている影響なのだと思う。私が祝福で得た召喚の枠は一枠しかなかったということだ。
ステータスは一つ目のステータスが毎回リセットされる。裏面に色彩反転したステータスは下がることなく繰り返していく中で強化されていった。エリアスにパワーレベリングされていた頃の様に急激に強くなることはできないがそれでも少しづつ強化されていく。
何十度目かの繰り返しの時、魔力操作Ⅹ10000、召喚魔法Ⅹ10000と上限まで強化された。スキルポイントに関してはまだ使っていない。
同じ『時』の繰り返しは徐々に私の心を蝕んでいった。苦痛耐性により私の肉体と精神面、両方から受ける苦痛は微々たるモノだった。だが、塵も積もれば何とやらと繰り返していく中で蓄積されていく。主な苦痛は幼少から10才までの間に受けたモノだ。人と違う醜い容姿という理由だけで虐められ続けてきた日々は繰り返すごとに記憶が重複されより悲惨な過去の記憶であったと認識させられる。
「死ね」と言われたのは一度だけなのかもしれない。だが、何十、何百、何億、無数に繰り返し重複された記憶の中は「死ね」と言われた回数が繰り返した分だけ無数に増えていく。
気づいたときには手遅れだった。スキルによって苦痛に慣れていた私は自身の精神が耐え切れず崩壊するときまで気にも留めず繰り返し続けた。
濃縮された嫌な記憶は崩壊した心を跡形もなくなって尚蝕み続けた。
スキルで、英霊という世界の仕組みで、辛うじて引っかかっていた自我のみ繰り返し続ける。
それは、人類の残酷な処刑法のどれよりも残酷で救いようのないモノだった。
無数の時の中で私は何度自殺を繰り返しただろう。初めは何とか抜け出そうと試行錯誤したが何の結果も出せず、気づいたときには思考回路がいかれていた。どうせ繰り返すのだからと・・・何をしたのか今では覚えていない。ただ、確かなのは私の感情は完全に壊れた、発狂していただろうということだ。
あることが切っ掛けで私の感情は修復された。
それは自分の容姿が、存在が、在り方が憎くて憎くて憎くて仕方なかったとき、自らダンジョンの罠に嵌り酸で溶かされていたときだ。
服が皮膚が筋肉が骨がぐずぐずに溶けステータスの生命力により辛うじて人型に留まっていたとき、通りすがりに少年から魔法をかけられた。
悪臭立ちこめていた酸の液体は無くなり私の体も全て治された。
何故助けたのかと、何故ほっといてくれなかったのかと、何故殺してくれないのかと八つ当たりの感情のままに少年を引き裂いた。
真っ赤に染まった思考で帰宅し布団を血で染めながら眠りについた翌日。薄汚れた鏡に現れた人は私の知らない美少女の姿だった。
それは私の記憶にない姿、鏡に映ったそれは私が動かないと動かない、その美しい見た目にそぐわない濁った瞳が私を見ている、私でない私が私を見ていた。
私にとって諸悪の根源である不細工な容姿が消えてなくなった。そこにあるのは絶世の美少女の姿である。艶のある黒髪に健康的な白い素肌、これらをキャンパスに赤黒い血が染め上げている。
私が美人であるという衝撃は壊れ切った私の精神を歪であるが修復しきるほどであった。修復された思考で考えるのは『何故こうなったか』。すぐさま結論が出される。
あの少年だ・・・。
この繰り返しの目的ができた。首を切り落としゴミ処理場へとリセットする。
家に帰り洗面台の鏡に映るのは醜い私。あの少年が私を変えてくれる。救ってくれる。
私は何度も繰り返して私を救ってくれる少年のことを調べ続けた。
名前はセイ。五歳の時にこの都市にやってくる。だいたい繰り返しのスタートから数か月後。セイはごく平凡な少年。体を動かすことは好きなようだが才能があるわけではない。武術も勉学も特段才能はなくどこにでもいる普通の少年。とても可愛らしい容姿をしていることが特徴といえば特徴。
だが、セイはどこか壊れている。壊れている私が言うのだから間違いない。自分のことを一切省みない。大怪我をしても痛い以外に思うことがない。他人の自分に対する気持ちを理解しない。網で水を掬い上げるように全てが落ちていく。自身に対する何もかもを感知にしない。唯一求めているのは強さだけ・・・。
五歳の時に村の最後の生き残りになったことが原因なのか、他に原因があるのかは分からないが自身に向ける感情が致命的に壊れている。
だからなのか私はセイのことを好きになった。助けてくれたから好きなのかもしれない。可愛いから好きなのかもしれない。壊れてるから好きなのかもしれない。何もできないのに何でもできるように頑張るのが好きなのかもしれない。
壊れた感情に最後のピースが嵌る様にカチッと合わさった。
繰り返せば繰り返すほどセイが好きになる。愛してる。
何度も助けてくれる。愛してる。唯一救ってくれる。愛してる。嫌な顔をしない。愛してる。ひた向きに頑張っている。愛してる。諦めない。愛してる。ボロボロになっている。愛してる。気絶している。愛してる。とても温かい。愛してる。とても可愛い。愛してル。私を包んでいる。愛シテる。とてもいい匂い。あイシてル。綺麗な赤。アイしテル。美味しい。アイシテル。愛してる。あいしてる。アイシテル。
だから
だぁかぁらぁ
ダ カ ラ
ワタシヲアイシテ・・・
私は、セイといる為に考えた。
セイの為に何が必要か。セイの為に一緒にいるにはどうすればいいか。セイを離さない為には何が必要か。
セイの為に私は何でもできるようにならなければならない。でも、その問題の解決は簡単だった。今まで触らなかったスキルポイントを使えばいい。
スキルレベル、熟練度は使い続ければ上がるがスキルを新規で習得するのは難しい。現にこの繰り返しの中で私が新しく手に入れたスキルは一つもない。
100ポイントで手に入れられるスキルは100種類。私は無駄にある繰り返しの時間を駆使してその全てを使い熟そうと考えた。そうすればセイの為、役に立てる。役に立てれば見捨てられることはない。セイも私から離れられない。
より繰り返すことでセイへの感情は募り続け、今までの悪感情が反転したかのように一心にセイの為にスキルを磨き続ける。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
アドリアナ・ヴォフク ‐‐才
レベル:99
種族:人間
職業:冥土99
スキル
【真似る】【家事】【御奉仕】
魔法
【生活魔法】
【契約】
【英霊召喚の魔法陣】
・所縁のある物を媒介に英霊を召喚する。
・必要な事は所縁のある物を所持していることのみ。
(その他各種ステータスのグラフ表記)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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アドリアナ・ヴォフク
種族:人間
レベル:--
HP:9999/9999
MP:99999/99999
攻撃:999
魔力:999
防御:999
精神:999
速さ:999
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ステータス(裏)
種族:人間
位階:Ⅰ
魂装:冥土の嗜み
HP:37301/37301
MP:99999/99999
攻撃:2922
魔力:9999
防御:3320
精神:9999
速さ:3001
スキル
魔力操作Ⅹ10000
召喚魔法Ⅹ10000
苦痛耐性Ⅹ10000
冥土Ⅹ10000
メイド技能(33スキル)Ⅹ10000
(掃除 洗濯 料理 家事 不眠 不休 休息 自己治癒 自動回復 回復魔法 並列思考 思考加速 記憶 器用 分身 情報共有 情報精査 念話 念動力 空間魔法 転移 亜空庫 算術 空間把握 地図 五感操作 読唇術 鍵開け 芸術 音楽 真似 房中術)
生産技能(18スキル)Ⅹ10000
(裁縫 鍛冶 細工 彫金 調薬 調合 錬金 建築 設計 製造 農業 水産業 使役 契約 生産 複製 効率化 自動化)
生活魔法(7スキル)Ⅹ10000
(再生 分解 魔眼 強化 振動操作 召喚術 収納空間)
戦闘技能(27スキル)Ⅹ10000
(格闘術 武道 柔術 棒術 剣術 槍術 斧術 盾術 弓術 銃術 暗器術 投擲術 操糸術 模倣 偽装 隠蔽 隠遁 隠密 観察 見切り 体術 歩行術 脚技 捕縛術 軽業 二刀流 曲芸)
箱庭(15スキル)Ⅹ10000
(固有空間 亜空間 箱庭 土魔法 風魔法 水魔法 火魔法 雷魔法 樹魔術 大海魔術 大気魔術 大地魔術 時空魔法 時空魔術 創造)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
位階が上昇しスキルが生えた。スキル冥土も他のスキルと同様に上限まで熟した。
次に考えることはこの無限ループを脱け出しセイといっしょにいること。どうすれば一緒にあられるだろう?どうすれば脱け出せるだろう?どうすれば解決するだろう?
何度も繰り返しの時の中で考える。セイの知らない面は何もないぐらいセイを愛しつくしながら考える。セイの弱点はもう全部知っている。セイのかわいい一面はもう数えきれないぐらい見たが飽きる気がしない。ヤリ過ぎてセイが私に依存し始めたときはもう可愛すぎて思わず出血死してしまった。この死因で少し冷静になり改めて考える。
繰り返しの原因は私が英霊になったから。でも、今の私は本来の英霊とは少し違う。私が私を召喚し同化した為に肉体を持っているのだ。本来は肉体を持たない精霊に近い存在になるのだが今の私は肉体を持っている。故に今を生きていることには変わりないわけだ。ここが突破口になるはずなのだが壁にぶつかり上手くいかない。
解決にはならないが一つの方法はある。私がセイ専用の英霊となることだ。これによりセイが死ぬまでの間ずっと契約が続くことになる。しかし、セイが死んだときまた同じ繰り返しが始まることがでめりtt・・・デメリットか?いや、むしろメリットだ。私にとってセイが全てだ。セイがいない世界なんていらない。積極的に滅ぼそう。仮にセイが寿命で死んでしまってもまた繰り返すことが出来る。・・・あぁ、なんと素敵なことか。そうか、セイが中心に回る様に私は繰り返していたんだ。もう、セイ愛してる。何でもしてあげる。
早速、行動に移す。スキル技能の上昇は十分だ。位階に関しては上げ方が不明なため放置する。セイを心行くまで愛でてから自殺し時をリセットする。
影ながらセイの成長を見守る。これまでの繰り返しで下手に手を出したらセイは堕落することが分かっている。ジョブを遊び人にするまではあまり手助けするべきではないのだ。
セイは12才、私の見た目年齢は17才の頃、セイは無事にジョブを遊び人に出来た。
あとはタイミングを見るだけ、酸は既に用意している。試しのダンジョン90階層後半あたりで酸液濡れになり皮膚という皮膚を爛れさせる。これをしないとセイは私を美少女として再生してくれない。また、このタイミングが初遭遇でなければ同様に醜い姿で再生させられてしまう。セイが私の本当の容姿を知らず、セイのイメージする容姿に再生してくれなければ美少女になれないのだ。
タイミングはばっちり、セイには背を向け座り込む。後ろからセイが近づいてくりゅ。条件反射でイってしまった。七年の禁欲生活はそれだけハードなのかもしれない。あ、『クリーン』をかけてくりぇた。ヤバイ、イきが止まらない。口下手も災いしてお礼を言えなかった。
セイは行ってしまったがミッションはクリア。最高のタイミングだった。やっぱりセイ好き。愛してる。
それからセイが試しのダンジョンのボスを討伐するまで見守り続ける。セイと英霊契約するならセイが戦闘で疲れて無防備な時が一番やりやすい。セイは優しいからいつでも受け入れてくれる。
数か月後セイは無事に阿修羅を討伐した。ダンジョン前でおたけびをあげている姿はそれはもう可愛らしい。ぁぁ、もう我慢しなくていいよね?
探索者協会はボロボロで帰って来たセイにてんやわんや。セイを休ませる為に私は嫁として甲斐甲斐しくお世話をする。私の手際に協会職員は文句のつけようがなく、私はセイとの二人っきりの時間を作り出した。
「すぅ・・・ zZZ」
セイはよく寝ている。それもそうだ今までの死闘とは比べ物にならないくらい阿修羅との戦闘は厳しいモノだったのだから。
セイの治療は終わった。穴だらけで血だらけな服も脱がし楽な服装に着替えさせ寝かせている。
私は徐に服を脱ぐ。セイに見合う女性として体系は完璧に整えてきた。胸もセイの好みのサイズに実っており、痩せすぎないほど良い肉付き、無口で清楚系な美人に合った長髪に整えている。セイって大きすぎるのも小さすぎるのも一番の好みじゃないみたい。ちょうどいい大きさで抱き着かれたときに包んでくれるようなそんな柔らかさが好きみたいなの。
セイの服も脱がせ裸にする。寒くないようにいっしょに布団の中に入り肌を密着させる。
ぁあ・・・
たべてしまいそうになりながらも目的の英霊契約を始める。セイと手をしっかり握り『契約』の魔法を私の【英霊召喚の魔法陣】を意識しながら発動していく。
私の英霊としての情報を一つずつセイの使役物として置き換えていく。私とセイの構成情報を取り扱うとても繊細な作業は一晩かけて行われた。
私がセイと溶け合うように一つになる様に繋げていく。契約条件はセイが死ぬまで私が奴隷(使役される)となること。古来から続く婚姻の呪い(まじない)と合わせてより強固にどの様な存在でも侵すことの出来ない永遠の契約を結ぶ。
空が明るくなって来た頃、契約は成立した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
アドリアナ・ヴォフク ‐‐才
レベル:99
種族:人間(セイ専用の英霊)
職業:冥土99
スキル
【真似る】【家事】【御奉仕】
魔法
【生活魔法】
【契約】
契約者:セイ・ヴォフク
【英霊召喚の魔法陣】
・所縁のある物を媒介に英霊を召喚する。
・必要な事は所縁のある物を所持していることのみ。
(その他各種ステータスのグラフ表記)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
二人が死で別つ時まで永遠に寄り添うことを誓います。セイの為に私の全てを捧げます。セイに誓ってこの誓いを違えることはありません。セイ大好き。
「ぅん・・・」
あ、起きた。もうちょっと寝顔を見てたかった。
「・・・おはよ」 ちゅっ
長年の会話不足で口下手は治りそうにない。キスなら伝わるかな?
「はへぇ!? だれ!?」
慌ててかわいい。・・・ん?太ももに固い感触。
「へぁえ!? そこ汚いよ」
「・・・ん セイに汚いところなんてない」
そう、全て愛おしい。わたしのセイ。
「ちょっ、、、やめ、、、まって・・・・・・っぁ」
ンんんん。美味しい。久しぶりのセイ。今までセイは自分でしたことがないことも知ってる。全て私にまかせて?最っ高に気持ちよくしてあげる。私はセイのモノだからセイに全ての私をあげる。
だから・・・
わたしにすべてちょうだい。
「・・・ん ぁ もっと 甘えていいよ?」
あぁ、大好き、愛してる。
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超ヤンデレヒロイン。セイの為だけに全てを捧げる無口系美少女です。身長150センチぐらい。
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