第8話 見習い人 ダイジェスト
ここからは前回の戦闘職と同じようにできる限りダイジェストでお送りします。
~裁縫職人~
この職場で教えてくれることになったのはなんだかおっとりしているおばあちゃん。親方とも知り合いらしくいろいろな昔話を聞きながら見習い人修行を進めていく。職場の人達はおばあちゃんの昔話の中に自分の話が出てくると大慌てでこちらに来て「お願いだからやめてくれ」とおばちゃんに縋り付いてくる。おばあちゃんは「あらあら そ~お?」と言いながらその場ではやめてくれるのだが結局後で僕にこっそり教えてくれるのだ。半分くらいは面白い内容でもう半分はよく分からなくて聞いてみるのだが「大人になったらわかるわ~」とはぐらかされてしまう。一体何なんだろう?
修行内容は鍛冶とはまた違って面白い。皮を鞣して革にするには時間がかかるのであまり経験は積めなかったが『クリーン』や『ドライ』を使えば比較的簡単にすることができた。製作過程はそこまで難しくない。芸術性を考えないのであれば型通りに布や革を切り取り縫い合わせていくだけだ。
難しいのはここから、縫う際に魔力を多用するので鍛冶とは違った形で神経を使うことになる。縫い糸に魔力を纏わせ一つ一つ縫っていく。その際に込める魔力は均一な中に凹凸を作るように波を作っていく。布や革との繋がりを作り意図的に乱した魔力を馴染ませ糸に纏わせた魔力を均一にしていく。完成後にもう一度全体に魔力を流し引っ掛かりがなければ本当の完成となる。
工程は少ないがその分、常に魔力を消費し続けるので魔力操作が特に重要だ。波形の魔力にはある程度余裕はあるがミスるとその個所は初めからになる。単純故に難しい、そんな作業だ。
これらの工程に加えて服を制作する上でのセンスが必要になってくる。よりお客さんに満足のできる商品を作るとなると僕には難しい世界かもしれない。
おばあちゃんは完成品にエンチャントまで行っていた。複雑な縫い模様によって様々なエンチャントが発動する。角ばったような機械的な模様、幾何学模様、縫い目で絵を描くなど何がどう反応してエンチャントに繋がるのか全く理解できなかった。おばあちゃんはエンチャント用の模様を刻みながらも同時に全体的なデザイン模様も刻んでいく。模様が重なっているのに干渉せずに正しい効果を発揮していて益々訳が分からない技術だ。
「このぐらいならセイくんも出来るようになるわよ~」と言われるが無理です。どうイメージしても出来る自分が思い浮かばないです。
裁縫の基礎を習い終え、見習い期間を終了することになる。最後には職場の人と仲良くなれた。「何かあったら俺らを頼るんだぞ!」と言っていたのだが何のことだろう?
期間:一ヶ月
見習い人:Lv5
基礎レベル:33
~薬剤師~
ここで教えてくれたのは見た目が非常に若いおじさんだ。僕は先生と呼んでいる。最初のあいさつでおにいさんと言うと笑われてしまった。状況が読めず、どうしてか聞くと実年齢を聞き驚くことになる。だって見た目年齢は20前半なんだよ?なのに実年齢は50を超えていると言われては驚かないわけにはいかないよ。職場の人も苦笑いしていたしみんな心は一つのはずだ。
修行内容はとても大変だった。まず、薬効のある成分について知らなければならない。僕は薬草などをねりねりすると思っていたのだけどそもそも使う材料が植物だけじゃない。薬剤師が使う材料は薬草などの植物はもちろんのこと動物、魔物問わずの様々な素材、鉱物資源から抽出した様々な成分など具体的な例を挙げたら限がない。薬草と一口に言っても種類は僕では覚えきれないほどあった。先生はそのすべてを頭に入れているのだと話していた。その知識量に僕は開いた口が閉まらなかったよ。
流石にこの短期間ですべて覚えることは不可能なので一般的に使われている物を中心に覚えることになった。それでも見習い期間の全てを使っても覚えきれなかった。
作業工程も複雑だった。それぞれの素材によって扱い方が違うため短い期間で全てを覚えることは不可能。基本的な道具の使い方と一つの痛み止めを作るだけで見習い期間が終了してしまった。先生の話では道具の扱い方を覚えきれただけでも上出来らしいので見習いとしては合格なのかもしれない。
もちろんも魔力も使用している。薬効を高めるために素材自体に魔力を使用したり調合で使用する水溶液に魔力を通し反発を少なくするなど魔力の使用方法は鍛冶や裁縫と比べても別の方向性で難しい。魔力の操作方法自体は複雑ではなかったのでまだ楽だがそれぞれに最適な魔力量が違うので覚えなければならないことが多い。
この見習い期間で痛感したことは薬剤師は知識力が必要な職業ということだろう。初級の知識としてこれだけは覚えておきなさいと渡された分厚い三冊の本。先生のまとめたものなのだそうだ。うん、がんばろう・・・・・。職場のお弟子さん方は優しい目をしていた気がする。
期間:一ヶ月
見習い人:Lv7
基礎レベル:33
~錬金術師~
錬金術を教えてくれたのはおじいさんだ。腰がスッと伸びてシャキシャキ行動するパワフルおじいさん。厳しさはニコライ教官や親方並み。見習い期間中の短い間でも他の職場の人が怒られていることがよくあった。僕にはなんでかあまり怒ることはなかったのだがなぜだろう?
錬金術の内容は大きく二つに分かれる。合成と分解だ。複数のモノを合わせ新たなモノを作る合成。一つのモノを複数のモノに分ける分解。錬金術とはこの二つの工程に尽きる。
だが、その内実はとても複雑。本来合わさらないモノを合わせようとすれば事故が起こってしまう。分解も慎重に行わなければ意図しないモノが生まれてしまう。何をどうすればそうなるのか、何が原因で事故に発生せてしまうのか判然としない事象が多く専門家泣かせの職業だ。
僕が習ったのはその中の基礎。鉱石からの金属部分の分解とバラバラの同一物質の合成だ。要は鍛冶の時に使った長方形の金属の塊を作る作業を習った。専用の魔法陣に魔力を流して魔法陣の上の物質を変換していく。魔力操作を少しでもミスると爆発や消失などの怪現象が起こり肝を冷やしながらも頑張った。
残り一週間の時にやっと成功しそこからは何度も成功を重ねることで見習い期間の終わりとなった。おじいさんは最後の最後まで厳しかったです。でも、この厳しさは錬金術の危険性を一番理解しているからなのだと思う。その証拠かお弟子さんの中で誰もおじいさんに文句を言う人はいなかった。みんなおじいさんのことを尊敬していることを職場の空気が教えてくれている。
期間:一ヶ月
見習い人:Lv9
基礎レベル:33
~細工職人~
細工を教えてくれたのは寡黙なおじさんだった。必要なこと以外はあまりしゃべらない。職場の他の人もみんな静かに仕事に取り組んでいる。時折聞こえる言葉は確認の一言だけでとても静かな職場だった。もしかすると教会よりも静かかもしれない。
細工は僕が思っていたよりも様々なところで使われていた。僕は道具に装飾を施す職業だと思っていた。ここで知ったのは身近な物の多くに細工が隠れているという事実だ。機械に使う様々な部品、職人が使う道具の制作、細かな装飾も細工師の担当だ。機械の部品は大量生産できなかった複雑な細かい作業が細工師に回っている。鍛冶の鎚がバラバラの状態であるのを見て内部の魔力回路の複雑さに驚くしかない。装飾は僕のセンスでは無理。エンチャントも複雑怪奇で無理です。
僕はおじさんの横で木や金属の板に見本どうりの模様を刻んでいくことになった。途中途中おじさんから指摘を受けながら進めていく。一つ終わったらまた次の板を、それも終わったらまた次のを、と模様を刻む作業を繰り返す。作業が進むにつれて模様も複雑になり最後の作業では完成するのに半日もかかってしまった。
魔力の扱い方は鍛冶とそんなに変わらなかった。板を魔力で覆い、金針の先端に魔力を集中させる。鍛冶での基礎がそのまま活用できたためそこまで苦労することはなかった。僕が使った小さな金針も職人の道具だ。内部はとても複雑な回路が刻んであるのだろう。おじさんに聞いてみるとちょっとニヤッとし「そうだ」と頷いてくれた。
最後の作業が終わったとき頷きと頭なでなでを貰ったのでたぶん見習い人修行は終了なのだと思う。
期間:三週間
見習い人:Lv10
基礎レベル:33
~木工職人~
木工を教えてくれたのはムキムキなおねえさんだ。最初にあいさつをしたとき大きな丸太を肩に担いで運んでいる最中だった。おねえさん以外にもガタイの大きな職員の人が続いている。丸太は職場の隅に積まれていく。丸太はどれだけ重いのか下ろすたびに地響きが起こるほどだ。それをおねえさんは一人で運んでいた。僕の何倍の力を持っているのだろうか?職場の人と一緒に姉御と呼ばせてもらっています。
木工のお仕事は木に関すること全てだ。木を加工するだけでなく木の伐採から森の管理と活動範囲が幅広い。職人の中には斧を軽々と扱う人もいたので元戦闘職の人が多い職場かもしれない。
修行内容は木の伐採の仕方から木材の加工の仕方まで基礎を一通り教えてもらうことになった。職場の先輩と共同で伐採を行う。その際に安全面の注意事項やどの木を切るのか、なぜ切るのか、何が必要なのか、乾燥する期間など詳しく丁寧に教えてもらった。木材の加工は姉御の指導の下で行うことになる。作るものに適した木材の選び方やそれぞれの木の特性、細かな道具の扱い方など基礎を教えてもらうことになった。
姉御は運搬の時の印象とは異なり木材の加工姿は美しかった。なんと言うのだろう?とても絵になると言えばいいのかな?ムキムキだけど服で隠れるからわからなくなるしとても繊細な動きで木材を加工していくものだから最初の印象とは大きく変わってしまう。でも、作業が終わるといつもの姉御に戻るから不思議なものだ。
魔力の扱い方は鍛冶や細工とあまり変わらない。木材を魔力で覆いつつ、加工する道具に魔力を一点集中で流す。少し違うところは木材に常に手を添えることができないので木を覆う魔力を遠隔で調整する必要があることだ。ノミだけで扱うことも出来るが大きく削りたい場合は木槌も必要になり両手がふさがることになる。その際の魔力操作が今回難しかった点だ。
どうにか基礎を学び終えることができた。姉御のハグはちょっと痛かったがとてもやさしく感じた。
期間:一ヶ月
見習い人:Lv11
基礎レベル:33
~料理人~
料理を教えてくれた人はおネェさんだ。絶対男の人だが自分のことをレディーと呼んでいたのでおネェさんで間違いない。見た目が強烈な人だったがとてもやさしい人だった。職場の男性陣がときどきどこか違うところを見ていたのが少し気になったが見習い人修行期間中大きな問題もなく進んでいくことになる。
料理はこれまでと違い予想外なところは少なかった。だいだい僕がイメージしていた通りの仕事だ。食材を調理して料理を作る。仕事内容はいたって簡単。
修行は鍛冶の時以来の雑用から入ることになる。厨房の掃除や皿洗い、接客、料理の配膳片づけ、鍛冶の雑用の時以上に動き回っていたように思う。その中で僕は料理工程や材料、時間を確認していき、残り物があらば味見をしていく。おネェさんにも様々な味見をさせてもらった。料理の実践は一日の仕事が終わった後だ。横でおネェさんに見守ってもらいながらレシピ通りの料理を作ることになる。
魔力を使っている様子はあまり見かけなかった。理由を聞いたところ魔力を使った料理は存在するが普段食べるものとしては適していないので作ることがないそうだ。どんな時に作るのか?病気の時に少ない量で栄養を補給したいときや特殊な薬膳料理を作るとき、戦時中のも携帯食なんかでも使うのだとか。料理で魔力を多用してはそれは殆ど薬剤師の領分になるのだそうだ。隠し味の様に少し魔力を使い味を向上させることも出来ないことはないのでそこは自分で頑張りなさいとのお言葉を貰いました。
今までで一番忙しい見習い人期間だったがとても楽しく終えることができた。
期間:三週間
見習い人:Lv12
基礎レベル:33
~ホームキーパー(家政婦、清掃)~
お仕事を教えてくれたのはおにいさんだ。影の薄いこれといった特徴のないおにいさん。年齢もまだ二十代後半で自分のことをまだまだ新人ですと話していた。でも、おにいさんの動きは素早く正確で隙が無く文句もつけようのない働きだ。彼女ができないと嘆いていたが僕は大丈夫だと慰めてみたりしてみた。
仕事の内容は普段の家事の代行や庭も合わせたお掃除。料理、洗濯、お掃除、この三つを家主に変わりすることが仕事だ。特段難しいこともなく僕は普段から自分のことは全部しているので余裕がある中ですることができた。
修行内容はおにいさんと一緒に家事をすることだ。便利なお役立ちを教えてもらいながら家事を進めていく。おにいさんの手際はよく選択のたたみ方ひとつとってもきれいだ。料理も料理人の様に凝ったものではなく家にある食材で出来る料理を簡単に保存がきくように作っていく。お掃除も一日ですべてやるのではなく順番を決めて順序よく隅々まで綺麗になるように行っていく。
魔力は生活魔法が大活躍だ。『クリーン』はもちろんのこと、『ヒール』『ウォーター』はお庭で大活躍し『ウォーム』『クール』は料理で時間短縮に使える、『ドライ』は洗濯物を早く乾かしたいときに便利だ。『チェンジ』はその都度に適した服装に簡単に着替えることができるので効率よく家事をすることができる。これは僕にとって一つの天職かもしれない。まぁ、生活魔法を覚えたら誰でも出来るようになることなのだが・・・。
覚えることも比較的少なく、短い時間で見習い人期間を終えることができた。思いのほか楽しかった。
期間:二週間
見習い人:Lv13
基礎レベル:33
~従者(秘書)~
従者の仕事を教えてくれたのはダンディーなおじさんだ。ちょび髭がよく似合い、隙の無い身の熟しはぜひともおじ様と呼びたいです。おじ様も呼ばれ慣れているのか嫌な顔せずに了承してくれた。おじ様以外にもメイドの人たちにも教えてもらうことがあったのだが僕にメイド服を着させようとするのは勘弁してもらいたい。僕は男です!
仕事内容はホームキーパーと似たような仕事に加え、書類整理やスケジュール管理といったより主人に寄り添った仕事内容が追加されている。ホームキーパーの上位互換の様でそうではない。どちらもそれぞれの良さがあり欠点があるのだ。従者の仕事はホームキーパーほど自由な時間は少なく自身のスケジュールすらガチガチに主人に合わせて決められる。主人のことを余程尊敬することがなければ心情的に難しいお仕事なのかもしれない。
修行内容は基本的におじ様やメイドさんたちのお手伝いとなる。ホームキーパーと同じ内容が多かったので苦戦することは少ない。気をつけなければならないところは普段の姿勢だ。体の姿勢を整え、精神面でも正しい姿勢を身につける必要がある。僕はこの短い期間にメイドとしての心得を叩きこまれた。・・・あれ?なんでメイドとしての心得?
魔力はここでも生活魔法です。うん、便利。戦闘ではサッパリ役に立たないが普段使いとしてはこれ以上の魔法運用方法はない。
感想としてメイドさん方のおもちゃにされたこと以外は特段苦労もなく見習い人期間を終了することが出来ました。
期間:三週間
見習い人:Lv14
基礎レベル:34
~テイマー(調教師、酪農家、配達人)~
テイマーについて教えてくれたのはおねえさん。素朴な感じでとても愛嬌のある人でおねえちゃんと呼ばせてもらっています。おねえちゃんの雰囲気の御蔭なのか職場の空気もほんわかしたものだった。他の職場と比べても働いている人は多いのになんだか同じような雰囲気の人が多くて不思議な空間が作られていた。
テイマーの仕事の内容は広い。どの生物をテイム(使役)するかによって仕事内容が大きく変わる職業だ。怪鳥のような魔物を使役すればその足にワゴン車を運んでもらい空のタクシーの仕事をしたり、小さい鳥の魔物であれば緊急の手紙を届ける仕事、馬のような足が速く力のある魔物であれば馬車の御者の仕事、体が大きく力自慢の魔物は畑の耕しや荷物の運搬などそれぞれの使役した存在に合わせた仕事が存在する。食用になる生物(牛、豚、鶏など食用になる動物や魔物)を使役すれば酪農家としての仕事もできる。
修行内容はテイムの仕方に加えどんな仕事があるのか見て回ることになった。テイムの仕方が分からなければそもそも仕事が成り立たないので基礎を習うことになる。仕事場はそれこそ多種多様なので自分がどんな仕事をしたいかによってテイムする魔物を選ぶかすでにテイムしている魔物から最適な職場を選ぶことになる。僕はテイムしている魔物はいないので事前に職場を見て回ることになった。
テイムは難しい。テイムしたい対象と魔力を同調させ繋がりとなる魔力で形成された紋章を互いに刻むことで契約成立となる。相手を屈服させるか信頼を築くか方法は様々だが相手に自分の配下に着くことを了承させなければならない。ある部族では生まれながらに一生を共にするパートナーをその身に宿すそうだ。そういった例外以外は基本的にこの工程が必要になる。
練習方法は用意してくれた愛玩用の動物と仲良くなりテイムを繰り返すこと。紋章を最後まで刻まなければ正式な契約にはならないので何度も試すことができる。仮に文様が刻まれてしまったとしても解約の方法はあるのでそこまで問題にもならない。
僕はビーちゃんがいるの何度も試し練習することになった。練習と息抜きの職場見学を繰り返し見事最後の週にはビーちゃんと契約することができた。ビーちゃんのビー玉のような体の中に薄っすらと一筆書きの花のような文様が浮かび上がり僕の右の人さし指に同じ文様が浮かび上がる。おねえちゃんに確認するとおめでとうと撫でてくれた。
テイムの成功で基本の終了となる。残りの時間はどんな魔物をテイムしたいか見て回ることになった。
期間:一ヶ月
見習い人:Lv16
基礎レベル:34
テイム:ビーちゃん(エナジースライム)
~農家(田畑、果樹園)~
農家のことについて教えてくれたのはボディービルディングのような体の持ち主のおじさんだ。ゴリッゴリのムッキムキ。黒光りする輝く剛体が眩しいのになぜか麦わら帽子を愛用している人だ。そんな人は少なかったので少し安心?したがそれでも視覚情報が暑苦しいことには変わりなく腹筋が異様に鍛えられる職場でした。農作業中にポージングを視界の端で披露するのはやめて欲しい。無視していたら徐々に人数が増えていくものだから笑うしかない。誰か耐えられる人がいたら教えてください。僕には無理でした。
仕事内容は難しいこともなく畑仕事だ。土を耕して、肥料を撒く、また耕し、種を蒔き心を込めて育てていく。魔力によって時短にはなるがそれでも何か月と時間を掛けて育てることになる。基本的に休みがない職業だ。育てるものに制限はない。それぞれの農家が自分の好きなモノを育てているしそれぞれの農家の作物によって味も様々で面白い。何が良かったのか何が悪かったのかよく意見交換をするそうで次第に筋肉も増えていくのだとか。いや、なぜ筋肉が増える・・・。あと、喋ったり歩いたりポージングする植物たちは何なのだろう?不思議で不思議で仕方がない。
見習い人期間は難しいことはせず基本的なことを教わった。筋肉については話半分に他の重要な知識を習いました。畑仕事の経験や植物のどういった状態がいいのか基本を教えてもらう。うん、だからさぁ秘伝のプロテインのレシピとかいらないです。本当です。マジです。
魔力は土を活性化させるために『ヒール』の魔法か活躍することになる。『ヒール』は庭での仕事の時もそうだが小さな傷を治すだけでなく植物の元気を取り戻すためにも役に立つ。農家ではこの方法が当たり前のように使われていて感動した。生活魔法も使いようによっては変わった使い方ができるのかもしれない。
概ね筋肉による事故以外は問題なく見習い人期間を終了となりました。ちょっと、筋肉はお腹いっぱいです。
期間:一ヶ月
見習い人:Lv18
基礎レベル:34
~受付係(探索者協会)~
教えてくれたのはマートさん。他、知り合いの職員さんに撫でられながらの職場体験となった。僕はいつか禿げてしまうのではないかと戦々恐々としています。身長が低いのもこれのせいか?
仕事内容は基本的に書類整理。依頼書を整理し会計書を整理し記録情報を整理する。マートさんの手伝いをしながら簿記のことを実地で教えてもらう。6年間続けてきたバイト内容と変わらないので苦労することなく短期間で見習い人の内容を終えることになった。
簿記に関しても用語を覚えるだけで計算方法は知っていたので基本はすぐに終わることになった。
期間:二週間
見習い人:Lv18
基礎レベル:34
~大道芸人~
見習い人のレベルが足りないのでもう一つ職業を回ることになる。そうは言っても探索者協会に紹介された職場は全て回ってしまった。残っているのは研修期間の長いさらに専門的な職場か、特別な才能やセンスが必要となる職場だ。残り二か月もない時間では間に合いそうにない。そんな途方に暮れている中で見つけたのがいつかの大道芸人だ。事情を話しダメもとで聞いてみたところOKを貰った形となる。
教えてくれたのはたぶんおにいさん。男か女か聞いても教えてくれない。体型を見てもよく分からない。僕が着替えているところを見ても恥じらいがなかったのでたぶん男の人だと思う。それでも確信はないので師匠と呼んで誤魔化してます。
大道芸人はいろいろなことができる。歌を歌ったり楽器を弾いたり、躍る、曲芸、マジック、早業などなど人を楽しませるようなことなら何でもござれだ。師匠は全部が全部うまくて師匠の全てを全て習うことはこの短い期間では難しそうだったのだが師匠曰く一ヶ月で僕もある程度出来るようになるのだそうだ。ここから僕の予想外のスパルタな日々が始まる。
まず歌や楽器は、劇場やコンサートなどプロの演奏を生で見ることから始まった。僕は師匠の横で感動する暇もなくその場で指導が始まる。何をどうしたらそうなるのか、師匠がプロの技術の一つ一つをその場その場で教えるので僕は感動する暇もなく集中することになった。ここでも見ることが重要となってくる。これまで意識してこなかった【真似る】のスキルを意識して発動するように視る。スキルが十全に発動していないと師匠に指摘され集中しなおすを繰り返す。今まで以上に神経をすり減らして師匠の言を習得することになった。
集中の仕方がニコライ教官の時とは別なのだ。なんといえばいいのだろう?教官の時はただ見ることに意識を向け一つ一つを自分に合った形で習得しようとしていた。しかし、今回は【真似る】対象と同じことができるように自分を変えなければならない。筋肉の動かし方から筋肉の付け方、仕草一つとってもすべてを【真似る】様に変えていく。『歌』と一つにまとめることが出来ず複数の『歌』を真似、師匠のお墨付きがもらえれば初めて自分の体に合った形で落とし込み身に着けるのだ。
ここで秘伝のプロテインが役に立つとは思わなかったが・・・・・。師匠も愛用しているのだそうだ。恐ろしいかなボディビル農民。
これを短期間で集中的に行う。周りから見たら遊び歩いているような光景だが内実は疲弊しながら擦り切れながら廃人の様に師匠に憑いていく様なものだ。この一か月はニコライ教官の扱きは何だったのかと言いたくなるほどに過酷で苦痛でそれ以上に楽しいひと時だった。
だって本来自分に出来なかったことが日を追うごとに増えていくのだ。それもジャンルを問わず技術が純プロ並みに増えていく。本物のプロにはなれないが紛い者でもお客さんを心から楽しませることができるほどの技術にはなるのだ。これが楽しくないはずがない。
歌を『真似る』、楽器を『真似る』、踊りを『真似る』、曲芸を『真似る』、マジックを『真似る』、早業を『真似る』、その一つ一つを『真似る』、技を『真似る』、業を『真似る』、とにかく真似る。
気づいたときには師匠の言ったように僕も出来るようになっていた。スキル『真似る』の活用方法を。
辛く苦しい期間だったがそのおかげか見習い人を完全習得することができた。師匠にも卒業を言い渡され最後には師匠と一緒に大道芸を披露しお客さんを楽しませることができた。僕はこれから大道芸人の道もいいかもしれないと心の中でそっと思う。
期間:一ヶ月
見習い人:Lv20(MAX)
基礎レベル:34
学校の卒業と宿舎の退去まで残り4週間と数日。
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