第6話 戦闘職の完全習得
ここからのレベル上げの日々は大きな変化もないのでダイジェストで送れるだけ流したい。
~槍使い編~
習得スキルは【突く】
ジョブチェンジしてからは剣使いの時と同じような道を辿る。
小型亜人種の魔物と戦闘を繰り返し経験値稼ぎと並行して槍の基礎と基礎の型を思い出すように復習していく。だいたい一週間ほどで勘をある程度取り戻したように判断したのでニコライ教官との訓練期間に突入する。
ニコライ教官は槍も収めている。生徒に教えられるように基礎戦闘職の全ての扱い方を学んだとのこと。僕としてはありがたい限りなので胸を大きく借りようと思う。
槍の基礎はスキルにもある【突き】だ。剣であれば【斬る】軌道は大きく分けて九種類あるが槍の【突き】はほぼまっすぐの点の攻撃しかない。別に突きがすべてという訳ではない。槍全体を使った薙ぎ払いや棒術もある。それでもスキルと併用して最大の威力が発揮できるのは【突き】だ。
ニコライ教官との訓練は前回と同じ槍同士の模擬戦となった。攻守を流れるように交代しながら僕だけ転がされまくり泥だらけになっていく。常に見ることを意識し模擬戦が進んでいく。少しずつではあるが成長を実感できる速度で月日が流れていくのは楽しい。
ニコライ教官から一本取ることはできなかったが最後は満足そうな凶悪な笑顔を頂戴したので及第点なのだろう。あの笑顔どうにかならないか?
訓練が終わってから二週間、討伐する種類、戦闘回数、討伐回数を増やし経験値量を加速させ時間内に槍使いを完全習得することができた。
槍使い20(MAX)
基礎レベル:26
~斧使い編~
習得スキルは【打つ】
ジョブチェンジしてからの道のりは同じ。
基礎の復習。慣れてきたら教官との訓練の日々。訓練期間終了後レベル上げの加速。この三本です。
斧の【打つ】は繊細な力の使い方が必要となるスキルだ。スキルを獲得したことで漠然とした動きは再現できるようになるがそれでは最大威力の斧の一撃は不可能だ。自身の力の動きを理解しなければならない。必要な力と不必要な力を取捨選択しなければならない。自身の力に振り回されず適度に最適なタイミングで力を抜くことを理解しなければならない。
この力の使い方は他の職業技能でも使われている。だが、斧ほど力を純粋に追求し無駄を省くことはないように思う。そのことを僕は教官との模擬戦を見る中で少しわかったように思う。
予定期間通りに斧使いの完全習得を終了する。
斧使い20(MAX)
基礎レベル:28
~盾使い編~
習得スキルは【流す】
ジョブチェンジしてからは変わらない。
基礎の復習。教官との訓練。レベル上げ。
盾の基礎スキルは【流す】。僕は初めて盾使いにジョブチェンジしたとき習得したスキルを意外に感じた。子供ながらの盾を扱う職業のイメージは全ての攻撃を受け止めることだと思っていた。しかし、実際に習得したスキルは【流す】。いまいち飲み込めずにいたが教官に教えられたことでわかったのだ。
【流す】とは相手の力を受け流し被害を最小限にすることだけにあらず。相手の流れだけでなく自身の力の流れも理解しなければならない。相手の最小の力を自身の最大の力で抑え込む。受けるだけでなく潰すことが大事な職業である。
そんな事を教官との模擬戦の中で見て、理解、修正、取り込みを繰り返してモノにしていく。教官の得意武器は盾だ。教官は僕の力をも使って抑え込み、何もさせてもらえない。僕の攻撃は全く聞かず、教官の攻撃は僕に刺さり転ばされこれまで以上に泥だらけにされてしまった。
その中でも僕が吸収できたことは大きいと思う。教官の屋台骨であるスキルに触れることができた。まだ朧気でしかないがスキルの輪郭が見えてきたように思う。
予定よりも三日早めに完全習得を終了した。この三日間は束の間の休息期間にあてた。
盾使い20(MAX)
基礎レベル:30
~弓使い編~
習得スキルは【中てる】
チェンジしてからはこれまでと同じ。
基礎、教官、レベル上げ、である。
弓のスキルは【中てる】となる。これは文字通りの意味となるスキルだ。対象に【中てる】。これが全てだ。
何を中てるか、何で中てるかはこのスキルに制限はない。弓はもちろんのこと投石、投げ槍、投げ斧、銃撃、魔法、果ては木の実を指で弾くだけでもスキルの適用内だ。中てる事、このスキルはこれに尽きる。
教官との訓練はこれまでと違い、弓の放ち方の見本から入った。僕はニコライ教官の動きをよく観察し自身に取り込む。教官の頷きを習ってからは様々な的への射撃。遠くの的、近場の的、動く的、教官が投げたフリスビー、最後の方ではビー玉を中てろとか無茶振りを吹っ掛けられたがどうにか及第点を貰う。
残りの訓練時間は模擬戦の再開だ。訓練場を動き回りながら矢を放ち、矢をよける。教官の動きは曲芸じみていて僕の矢を掠りもしない。僕はどうにか顔への被弾だけは死守した。その代り体中軽い痣だらけ、軸足を打たれては転ばされてもいたので泥だらけだ。
探索者協会の職員さんにバレない様に【ヒール】と【クリーン】を集中して多用したため以前よりも上達したように感じる。
弓使い20(MAX)
基礎レベル:32
~暗器使い編~
習得スキルは【隠す】
流れは同じ。
スキル【隠す】は索敵に特化した職が初めに習得するスキルだ。自身の気配を消すことが出来ずに他者の気配を理解できる道理はない。そんな意味が込められているとニコライ教官が話していた。
【隠す】は対象を隠すスキル。自身の気配、持っている武器を中心に簡単に隠せる小物類や視線を逸らすような使い方もできる。もしかするとあの時の大道芸人は習得していたのかもしれない。
相手の意識を逸らすというのがこのスキルの本質?なのだろう。教官との訓練では化かし合いのような遊びとなった。相手をより驚かせた方が勝ち。相手の行動、視線、流れ、動きを瞬時に観察し自身の行動を決定する。この訓練は怪我とかをしなかったがいつも以上に神経を使い果たした。
これまで見ることを意識して訓練していたので訓練開始時は余裕なのだが徐々に教官から取得する情報量が増えていく。ジャグリングの量が増え、服装が変化し、視線が別々に移動、足元では奇妙なステップを踏んでいる。終いには髪の毛が生えた!その時は驚かされ過ぎで僕は呆然としてしまった。その時に見せたニコライ教官の勝ち誇ったような凶悪顔は忘れられないだろう。思い出し笑いがヤバい・・・w。
そんな、精神的に大打撃?を受けながらも訓練課程を修了する。
再度、教官に大声でお礼を述べるとあの凶悪顔でサムズアップをあげ、その場を後にした。教官の背中は大きかった・・・。ぶふぅww、あ、頭に虹色のモヒカンが!とれたーー!!www。
暗器使い20(MAX)
基礎レベル:33
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ここまで来るのに一つの職業に1ヶ月ずつで5ヶ月経過。残り時間はちょうど1年。概ね予定通りに初級戦闘職業を完全習得することができた。残りは初級職人職である見習い人のみ。その後に行うことは基礎レベルをリセットするだけだから時間はかからない。
早速、教会に訪れジョブチェンジをする。席に座り、黙想。
(ジョブチェンジ 暗器使いから見習い人へ)
胸の中心が暖かくなり何かの喪失感と何かに満たされる感覚。全体に暖かさが広がり瞬間、消える。
特別なことはない、慣れたいつもの感覚だ。
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セイ 11才
レベル:33
種族:人間(固定)
職業:見習い人1
スキル
【真似る】
魔法
生活魔法
【クリーン】【ヒール】【ウォーム】【クール】【ドライ】
【ウォーター】【チェンジ】
精霊の靴
素材強化 合成強化
バフ
ジャンプ強化(極小)ダッシュ強化(極小)消音(極小)
キック強化(極小)
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無事ジョブチェンジ終了。今見て気づいたがそうか、あと一年ということは僕は11才になったのか。この数字を見ると期限が迫っているように感じる。だが、後はこの見習い人の完全習得で本に書かれていたことは終わりだ。最後まで決めたことはやり遂げたい。見習い人には1年費やせるように時間を作れた。長くても1年で上級職になれると言われている。僕なら出来ると少しは信じよう。
そんな風に自問自答していると声をかけられる。
「道は決まりましたか?」
顔を上げるとそこにいたのはこの教会の司祭さんだ。
「いえ、まだ悩んでいるところです」
「そうですか」
この都市にはいくつか教会がある。共通していることは特定の神を信仰する場でないこと。それ以外は国からの縛りはない。内装をどの様にしてもいいし極端に言うならばライブ会場を併設するような教会も存在する。どういったことが話されてそんな建物になったかはわからないがその協会は多くの人が利用しているしとても賑やかだ。僕はジョブチェンジするなら静かな方がいいと思っているので探索者協会からも近いここの教会を利用している。
「え~と 何かお話でもありましたか?」
僕はここの教会を利用してから初めて司祭さんに声をかけられたので理由が思い当らない。
「そういうわけではないのですが・・・ その、気になりましてここ最近よく利用しているようなので何か助けにならないかと思ったまでです」
「助けですか? う~ん? 今度は見習い人にジョブチェンジしました 何かあればお願いします?」
「職人職ですね 才能あれば早くて一か月、遅くとも半年でその道の上級職が現れます 自分の才能を見つけたいのであれば職場を転々とするのもいいでしょう 目安は同じく一か月、自身の才能を見つけることができればその道で成功が約束されるでしょう 定めた道、好みの職場があるのならば上級職が出るまで粘るのもありです 見習い人は広い範囲に対応しているジョブです 戦闘職の様に才覚がなければ上級職が出現しないということはありません 努力が見える形で報われる初級職です 何事もチャレンジ精神が大事です 私もこう見えて・・・・・」
話が止まらない。僕はうんうんと聞いているしかない。決して早口でなく聞き取りやすく周りに迷惑にならない音量で話しているのだが会話が途切れない。この人はあれだ。誰かに教えることが好きなのだ。僕のような年齢の子供が迷っていたら教えたくなるのかもしれない。話している内容は的確で僕の知りたい情報を話してくれるのだが終わりそうにない。
視界の端に映った人から同情的な視線を感じたからこの司祭さんのことは有名なのかもしれない。ちょっとうんざりしながらも話の内容はためになるので無視もできない。これは何だろう、無視したいけど無視できない、この場を離れたいけど話を聞きたいという自分もいる。これが聖職者の会話というものか!?だんだんと恐怖すら感じてきそうだ。戦慄する。
「・・・・・ですから、セイさんも何事も諦めず頑張ってください 必ず道は開けますから」
「は、はい 分かりました! ありがとうございます! 今日はこれで失礼します!」
「はい また、いらしてくださいね」
僕は恐縮しながらその場を後にする。司祭さんは綺麗なお辞儀で僕を見送ってくれた。決して美男子という訳ではないのだがこの教会と非常にマッチしており絵になるお辞儀だった。
僕は司祭さんから教えられた知識を咀嚼しながら足取り遅く帰路についた。
ちょっとしたハプニングはあったが明日から僕は見習い人だ。
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