第3話 精霊武具の取得

今日はバイトもないので夜遅くまでダンジョンに潜っていても問題ない。今日からがこの本の内容の本番かもしれない。


僕が協会の宿舎を出ようとしていると・・・


「セイくん おはよう~ 今日も訓練?」


後ろから挨拶をする声が聞こえた。


振り返ると見知った顔だ。この人は探索者協会の女性職員さん。名前は何だったか?なぜか思い出せない。まさかこれもあの食べ物の影響か!?


「おはようございます いえ、今日は試しのダンジョンに挑戦しようと思いまして」


「試しのダンジョン? パーティーかな?」


「今日は一人です」


今日僕が行く試しのダンジョンとは、探索者協会がランクの一つの基準としているダンジョンだ。全100階層からなるダンジョン。ダンジョンの階層が深くなるごとに魔物の強さが同じ階層分強くなるダンジョンだ。一階層はレベル1相当の魔物が出現し100階層はレベル100相当の魔物が出現する基準としても安全面としてもわかりやすい仕組みになっている。


多くの人がこのダンジョンで自分の力に合った階層で地力を上げ、レベルが上がれば次の階層へ挑むという形を取っている。そのためこのダンジョンの最下層のボスを討伐できれば探索者協会としては一つのボーダーラインであるⅭランク相当の武力があると判断することができる。その人のランクの一つの基準として採用しているのはこのためである。


「一人? パーティーじゃなくて大丈夫?」


やっぱり僕が非力なことを協会ではみんな知ってるのかな?事実だとしてもちょっと悲しい。


「はい、大丈夫です 自分のレベルにあった階層でレベル上げをしようと思っているだけなので無理はしないつもりです」


「そう ならいいけど・・・ 気を付けてね? 危なくなったら逃げるのよ?」


「はい 分かりました それでは行ってきます」


「はい 行ってらっしゃい」


僕はそんなに信用無いかな?それ以上に弱すぎることが心配なのかな?


職員さんとはその場で挨拶して宿舎を後にする。


それからも何人かの職員の人と簡単に挨拶をしてダンジョンに向けて進んだ。




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試しのダンジョンは探索者協会と同じ都市の東側にある為そこまで時間がかからずに到着する。


そこは人でごった返していた。種族が雑多なことはいつも通り、ほとんどの人が武装していることが違いと言えば違いだろう。それなりに実力のありそうなパーティーもあれば初心者だと一目でわかるようなパーティーもあり統一感がない。広場となっている端には臨時のパーティーを組もうと呼びかけしている人をちらほらと見かける。


戦いの前ということもあり少し空気が重く感じるがそれでも人の多さに比例するように活気がある。


ぱっと見渡した感じ知り合いはこの時間はいないようだ。朝早くのまだ若干暗い部分が空に残っている時間帯だ。学生は午後に来ることが多いし当たり前と言えば当たり前かもしれない。


入る前にザっと装備を確認する。武器は短剣、防具はなるべく軽装にするために皮鎧。その他荷物もコンパクトなリュックに詰めた。ビーちゃんもリュックの中に入っている。ソロで活動する場合は索敵から荷運び、戦闘まで自分一人で行わなければいけないので重量はなるべく軽くしている。戦闘も被弾しないことを前提に行動を心がけようと考えている。


「よし 行くか」


気合を入れる気持ちで静かに言葉を発し、ダンジョンの中に入って行く。


ダンジョン内部は石の壁が続く造りだ。明かりは本来の洞窟よりも明るい。奥まで見渡せるほど明るいわけではないが全く見えない状況になるほど暗くはない。理由は壁や床自体が仄かに光っているからだ。ダンジョンではよくこのような不思議な状況が起こる。


基本的に一本道だが部屋に入るとそれぞれの四面の方向に道が続いている。地図を作成すると碁盤の目のような形になるはずだ。初めの部屋とそれから三つ目の部屋までは魔物がいることは少ない。最初に侵入した人がだいたい討伐してしまうためいることが少ないのだ。それより先は魔物の再出現間隔が短いらしく遭遇することになる。


今回も三部屋目までは魔物に遭遇しなかったが四部屋目にして魔物に遭遇することになった。


相手は兎の魔物だ。


動物との違いはほとんどない。気持ち魔物の方がマスコット的にデフォルメされているように感じるが気のせいと言われれば気のせいと切り捨てられるほどの違いしかない。


魔物と動物の違いは体内に魔力の結晶体である魔石があるか無いかだ。これの例外はスライムのみ。スライムは体内に魔石は存在しないが動物とは言い難い姿形をしている為魔物に分類されている。他の違いとしては経験値が動物より多いことが上げられる。スライムはこれに関しては当てはまる。


兎の魔物が突進しようとしてきたところを出鼻を挫く形で『ショック』を発動する。


動きが止められ態勢を崩し動きが止まった隙に近づき首元にナイフを突き入れる。


キュッと一声鳴いた後、体から力が抜けた。


「ふぅ~」


一階層の魔物だから魔法使いである僕の短剣でも一撃で仕留めることができた。僕の基礎レベルは12。魔法使いのジョブレベルは16。適正階層は基礎レベルに合わせるから12階層となるのだが初心者魔法使いがそこまでソロで行けるかどうか・・・


ジョブレベルは日々の修練で上げることができる。僕の場合は基礎の基礎である生活魔法の全てを習得したことでレベル1から16まで上がった。あと、4レベル分修練で上げる方法もないわけではないが残りの時間では無理だろう。


次に取れる方法は魔物を倒して経験値を獲得しレベルを上げるしかない。基礎レベルを上げ、適正階層を伸ばし、最低でも20階層をソロで活動できるようにならなければ現状の打開は難しいだろう。どこまで行けるのやら・・・


それから、『ショック』と短剣、体捌きで進んでいくが複数の魔物との戦闘は現状避けざるおえない。その分進捗は滞り、疲れもより溜まるようになる。


「はぁ はあ ゴブリンでこの苦戦かよ」


11階層に到達し初戦。ゴブリンとの戦闘に『ショック』を多用し半分近く魔力を消耗する形で辛くも勝利した。


11階層からは人型亜人種の魔物が出るようになる。1~5階層は小型の動物系の魔物。6~10階層は小型に加え大型の動物系の魔物が増えて来る。11階層からは小型の魔物がいなくなり大型の魔物が主流に加え亜人系の魔物が増えてくる。


初戦で亜人系であるゴブリンを引いたのは運が悪いのだろうがそれでもここまで苦戦するとは思わなかった。それも一対一でだ。これが複数との戦闘になっては負ける未来しか見えない。


「この階層で地道にレベルを上げるしかないか」


この状況では独り言も呟きたくなる。20階層など遠すぎる。安全性を無視してでも複数との戦闘に挑むしかないのだろうか?死んでしまっては元も子もないのだからその選択肢は取りたくない。


一対一の戦闘に限定したとしても一度の戦闘で魔力を半分以上使い果たしてしまう。ビーちゃんを飲むことで魔力回復を早めるられることが分かっているので少しは戦闘回数を増やせそうだが一日に4~6回の戦闘が限界だろう。戦闘中以外でも多数の敵に囲まれないように常に気を張っていなければならないため集中力が持たないかもしれない。予想できた状況だがなかなかに酷い。


その日は、一日中11階層を徘徊し一対一の状況の戦闘だけを繰り返すことにした。途中で他の人たちが何の苦も無く次の階層に進んでいく様子を悔しく思いながらも地道に少しずつ経験値を重ねていくがレベルが上がることはなかった。




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ダンジョンに挑戦してから早一か月、一週間の内バイトの無い三日は一日中、バイトの日は午前中だけダンジョンアタックを繰り返したが上がったレベルは基礎レベルが1上がったのみ。未だに僕は11階層に留まっている。


最近、僕のつかれている様子が目に見えてわかるのか協会の職員の人に大変心配されてしまっている。会うたびに「大丈夫?」と聞かれてしまう始末だ。さすがに一日ぐらい休暇を取るべきか。でも、残り時間が全くと言っていいほどに無い。このままだと魔法使いのレベルを上げるだけでタイムリミットが来てしまう。


それでも、あんなに多くの人に心配されてはこちらが申し訳なくなってしまった。今日一日は休暇にあてようと昼まで惰眠を貪っていた。


気分もだいぶ良くなってきた頃、お腹がすいてきたので昼時の時間でもあるし職員用の食堂で厄介になろうと思う。


部屋から出て併設されている食堂へ移動。少し早いこともあり人はあまりいなかった。食堂のおばちゃんから料理を受け取り適当な席に着く。今日の献立は生姜焼きの様だ。


「となりいい?」


声の方に振り向くといつかの女性職員さんだ。同じ料理をトレイに乗せている。


「はい どうぞ」


大丈夫なことを伝えると少し微笑んで前の席に座った。


しばらく無言で食事を進めていく。ほぼ食べ終わり漬物をつまみにお茶を飲んでいると女性職員さんから声がかかる。


「ねぇ いつも思ってることなんだけどさぁ」


「? はい?」


「セイくんは私の名前覚えてる?」


「・・・・・ ・・・お、オボエテマストモ ハイ」


顔中に汗が流れている気がする。思わず視線を右にそらしてしまった。


「やっぱり 覚えてなかったかぁ~」


「・・・すいません」


すぐに認めて頭を下げる。これしかないと思います。


「私の名前はマート マート・ブルート 今度こそちゃんと覚えてね?」


「マート・ブルート マートさんですね 今度こそしっかりと覚えました 間違いないです」


僕はマートさんの名前をしっかり頭に覚えこませるように心の中で反復する。マート マート マート


「で、本題なんだけどさ 最近大丈夫? やつれてるというか切羽詰まっているというか 余裕がない様に感じるんだけど 無理し過ぎじゃない?」


「・・・ここ最近はそうですね 時間もあまりないですし焦っているんだと思います」


「無理に探索者になる必要はないんだよ? 全ての人が職業に恵まれるわけじゃないから気に病む必要はないし他にも道はあるんだからそんなに無理しなくても・・・」


「いえ、その 僕の中で決めてしまったことなので なんというか諦めきれないというか最後までやれることを全部試してからじゃないと納得できないんです 僕も男ですからね はは」


「・・・そっか うん わかった」


最後は重い空気になって申し訳ない。でも、これは僕が自分で決めたことだから、譲れないことだから相手に諦めてもらいたい。


マートさんが先に席をたった後、お茶を飲み干して僕も食堂を後にする。


休暇日にしたし気分転換にでも街中をビーちゃんをちびちび飲みながら散策をする。減ってきたら魔力をあげてまたちびちびと飲むを何の気なしに繰り返す。


とくに目的もなく歩く。お金もそんなにないから無駄遣いはできない。映画館はスルーかな。道端で大道芸をやっていたので歩く速度を落として遠目に眺める。あの人は絶対上級職の魔法使いだ。見えている物が少し視線をそらしているうちに別の物に変化している。籠の中の白い兎がいつの間にか隠してもいないのに白いハトに変化している。それに意識を向けているとマントの色が変わっている。また、気を囚われていると兎に戻っている。変化が目まぐるしくて見ている人は驚きの連続だ。


服の変化は『チェンジ』で出来そうだけど動物の変化や突然浮遊する物体なんかは僕には不可能だ。あんなに様々な魔法が使えて羨ましいな~と思ってしまう。


何だろう、楽しいんだけどちょっと気分が沈んでしまった。緩めていた歩調を戻しその場を後にする。


時刻はあっという間に夜八時。日はとっくに沈み、辺りは街灯の明かりに包まれている。僕は公園のブランコに座って揺られていた。街灯の光は目に優しい暖色系の光でなんとなく気分が落ち着く気がする。


ふと顔を上げると向かいのベンチに寝転がっている男性を見つけた。何時からいたのだろうか?僕が来た時にはいなかったと思う。日が沈んでからもう長いことブランコに揺られているのだが気づかなかった。


男性は全体的に緩い服装を着ている。だぼだぼのズボンに身長よりも一回り大きいパーカー。色合いも適当でパーカーが少し汚れた白でズボンが黒。全体的にダル~としたようなオーラを感じる気がする。年は二十以上には見えない。特徴的なところはそんな雰囲気だけで容姿や体型には注目を置くような個所はない。何だろう?印象に残りそうで残らない?そんな不思議な人に僕は感じた。


もう、夜も遅いのだけどこのまま寝かしていてもいいのだろうか?起こした方がいいよね?悪い人には見えないし不審者ではないよね?なんとなくだけどそんな風には感じないし起こそう。


僕はブランコを下りて彼に近づく。上から覗き込めるほど近づいてもまだ寝ている。死んでいないよな?近づいてよく見ないと分からないほどだが胸が上下に動いているから息はしているようだ。


「あのー おにいさーん」


呼びかけてみるが反応がない。


「おにいさーん!!」


体を揺すりながら呼びかけてみるが全く起きる気配がない。


「起きろや!!」


余りにも起きないので向きになって『ウォーター』をぶっかけ『ショック』を顔面に浴びせる。


「ぶっ!? ばっ!? はぁ!? なにごと!!」




鼻に水が入ったのか咽ながら飛び起きた。気づかれない内にそっと『クリーン』をしておく。


「お兄さん こんなところで寝てたら風邪ひくよ?」


「誰だ坊主 これお前の仕業か!? お前のせいで窒息するところやったぞ!?」


大きく深呼吸しながらも器用に驚きも表している。


「だってお兄さん全く起きる気配ないし 最初は呼びかけだけだったんだよ? 揺すっても起きないし眠り深すぎない?」


「うっ それは悪かったな 寝るのは俺の唯一の特技だからな 起きなくても仕方ないがそれにしても起こし方ってもんが・・・ ん? あ? え、やめて 毎回そんな起こされ方されたくない・・・」


途中までは僕と話をしていたのだが何故か独り言に変わってしまった。もしかしてこの人、痛い人なのかな?もしかして早まった?


「あ~ すまん坊主 で、なんか用があったのか?」


「え? 用はないよ? ただ、こんな公園のベンチで寝てたら風邪ひいちゃうし起こそうかなってしただけだから」


「そうか まぁなんだ ありがとな坊主 ん?」


そう言って僕の頭をぐりぐりと撫でてきたのだが途中で疑問の声が聞こえる。


「あ~ 難儀だな坊主 これもなんかの縁かね シリ、どうにかできないか?」


「?」


何のことだろう?それにシリって誰?


そんな風に不思議に思っていると突然体の奥が暖かくなる。これはあれだ、教会でジョブを変えたときのような感覚?なんで?あ、おわった。


「そんなんでいいだろう よし、坊主 名前は何て言うんだ? 俺はケイだ」


「? 僕はセイだよ?」


「セイか お前もその道を意図的にかは分からないが歩み始めちまってるんだ 頑張れよ」


「??? うん がんばる?」


歯を見せるちょっと男臭いような笑顔を見せてもう一度僕の頭をぐりぐりする。ちょっとお父さんにされたときのことを思い出してしまった。


その後は特に何もなく。お互い帰路につく。ケイは僕とは逆方向の様でその場で別れることになった。ちょっと痛い人だったけど悪い人ではないみたいで良かった。


その晩は今日のことが気分転換になったのかいつもよりもぐっすりと眠ることができた。明日からまた頑張れる気がするから不思議なものだ。




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そして、翌日。今日からまた少しでも経験値を稼ぐためにダンジョンへ行こうとしていたところマートさんと宿舎の玄関前で会う。


「おはようございます マートさん」


「お~ やっと覚えてくれたか お姉さん嬉しいよ~」


何やら酷く感激した様子で僕に抱き着いてきた。僕の顔が柔らかいものに包まれ目の前が真っ暗になる。じたばたもがくが抵抗も虚しく抱く力が強くなるだけでどうにもならない。僕はこれは無理だと諦めてからしばらく好き勝手されたのち解放された。


「ぷはぁ どうしたんですか? とつぜん」


「いや~ 嬉しくてね~ セイくん名前を憶えてくれないからやっとかと思ったらさぁ」


「う、それは僕が悪いですね すいません」


「うんうん その調子で他の人の名前も覚えてあげてね?」


「・・・善処します」


マートさんは何が嬉しいのか笑顔で僕の頭を撫でながらうんうん頷いている。


「そういえば、セイくん 今日はあの日だね」


「ん? あの日って何ですか?」


「え? セイくん今年で十歳だよね」


「そうですね」


「なら今年は祝福を授かる日でしょ? もしかして忘れてた?」


「あ、」


そうだよ。僕は今年で十歳なんだから祝福があるじゃん!同年代とはあまり交流がないからすっかり忘れていた。残りの時間が少ないことで余裕がなかったのかな?


「忘れてました! 今から言って来ます!」


「いってらっしゃーい」


僕はマートさんに手を振りながら走り出す。マートさんも大きく手を振って見送ってくれた。


僕が忘れていた祝福とは十歳の時に授かる武器や防具、道具のことだ。その装備はその人のためだけの装備であり一生付き合うこととなる特殊な装備だ。遥か昔ではとある神を信じる宗教の儀式的な物だったらしい。どの神がなどの文献は紛失してしまって記録はない。その宗教も過去の戦乱の中にのまれなくなってしまった。最後に残ったのはこの十歳の時に授かるという儀礼的な儀式だけだ。


この儀式は戦乱のあと多くの国で認知されるようになる。少しでも自身の宗教の痕跡を残したかったのかもしれない。祝福として神から授かる儀式だというのにその神がどういう者だったのか記録が無いというのは不思議なものだ。形式的に神に祈るという工程はあるが何に祈るかはその人次第だ。


僕が着いた頃には多くの子供たちが教会に集まっていた。祝福の儀式は始まっているようで次々と子供たちが教会から出てきて一喜一憂している。泣いている子もいれば自慢するように掲げている子もいる。中には今回のことで目標が定まったのか親と熱心に話している子もいる。ここは人生の一つの分岐点なのかもしれない。


僕が欲しいものは決まっている。もちろん武器だ。贅沢は言わないから少しでも攻撃力のある武器が欲しい。


教会に入る子供たちの列に並び自分の番が来るのを待つ。列が進んでいくと教会の外は様々な声が聞こえていてうるさかったが教会の中は緊張した雰囲気が漂いとても静かだ。


そんなに待つことなく僕の番が来た。神父様の前に片膝をつき頭を下げ目を瞑る。祈る神は心当たりがないので漠然と自然に祈る。何も変化を感じなかったが神父様の声を聴きその場を後にする。


聞いた話だと武器であれば手に持っているはずだが僕は持っていない。がっかりしながらも他の人の邪魔になるので流れに沿って教会の外に出る。


自分の身に何か変化がないか確認していく。頭には何もかぶっていない。服装も変わっていないから鎧などの防具ではない。背中にも腕にも何もないしポケットにも何も入っていない。あと残っているのは足か?


足元を確認してみると右のいつもはいているブーツの足首辺りにくすんだ銀色の輪っかが付いていた。触って見てみると外側に丸い透明な小さな宝石のような物が埋め込まれている。靴と一体化しているようで外すことができない。靴もなぜか脱ぐことができない。


僕は靴を祝福で手に入れたようだが脱げなくなるとはどういうことだろうか?もしかして呪い?いや、祝福で呪われたなんてことは聞いたことがない。何か情報がないか図書館にでも行こうかな?協会の人に聞いてもいいかもしれない。まずは自分で調べてそれでもわからなかったら人に聞こう。


急ぎ足で図書館へと移動する。ついでに借りている本の延長もしておこうかと考えながらこの装備についてどう調べようかと悩む。


あまり時間もかからずに図書館へと着いた。司書さんは今日もいつも通りの様だ。


「あら~ こんにちは、セイくん 今日も延長かな? それとも調べもの?」


「こんにちは 今日は両方です 借りている本の延長をお願いします」


「はい わかりました 調べ物の方は手伝えることはあるかな?」


「なら、一つお願いします 祝福で靴について書かれている本はないですか?」


「祝福に、靴?」


司書さんは視線を僕の靴に向ける。僕は見やすいように右の足首を見せる。


「これはあれね 靴というのは珍しいけどないことはないかしらね セイくん、ステータスを見てごらんなさい」


「ステータスですか?」


疑問に思いながらもステータスを開く。


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セイ 10才

レベル:13

種族:人間(固定)

職業:魔法使い16

スキル

【無属性】

魔法

生活魔法

【クリーン】【ヒール】【ウォーム】【クール】【ドライ】

【ウォーター】【チェンジ】


精霊の靴

 素材強化 合成強化

バフ

 なし

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「精霊の靴?」


「やっぱりね それは精霊武具って言うのの一つよ 他の例だと剣とか弓などの武器や鎧や盾などの防具であることが多いわ 精霊武具の特徴はそれぞれの強化方法で成長させることが出来ることよ セイくんの場合は精霊の靴、成長する靴ってことね」


「成長する靴・・・」


武器ではなかったけど僕の目標の力になってくれる靴なのかもしれない。ステータスを見る限り強化方法は素材による強化と違う靴を合成することによる強化となっている。どう強化すればいいのかは文字に触れることで詳細が現れたのでわかった。今はバフはなしとなっているがこの靴を強化していけば何か能力を上昇させるような効果が付くかもしれない。


「この靴って脱ぐことが出来るんですか?」


「私が聞いたことだと出来るはずよ しまうみたいなイメージをすればセイくんならアンクレットになると思うわ」


足を見つめてしまうようにイメージすると一瞬光輝き、次には裸足になった。右の足首には靴の時と変わらないくすんだ銀色のアクセサリ。どうやら、靴下も一緒にまとめられているようだ。何度か出し入れをしてみる。


「できました! ありがとうございます 知りたかったことが全部分かりました」


「ふふ よかったわ また何か知りたいことがあったら来なさいな」


「はい! その時はお願いします!」


司書さんにお礼をいって図書館を後にした。司書さんは終始ご機嫌だったように思う。


今日はいろいろと試したいことができてしまったしダンジョンは明日からにしようと思う。


武器でなかったことに少し気落ちしながらもこれはこれでよかったのでは?と考え直したりしながら宿舎へ帰ってった。




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