他人のスキルで最強に。

雛倉柚葉

プロローグ

第1話 終わる日常、出来ないゲーム

「はぁ…今日もつまんねぇなぁー」


 社畜。その言葉が1番ふさわしい。

 俺、望月優斗もちずきゆうとは何事もなく大学を卒業し、普通の会社に就職。

 誰もが想像するようなデスクワークばかりをやらされている新人サラリーマンだ。

 

 まさに「普通」。


 何か特別なことができるわけでもなければ、これと言って酷いところもない。

 強いて言うならと呼べる存在が少ないくらいだ。

 

「社会人って想像以上につまらない…」

 

 中三の頃はあんなにバイトがしたくてたまらなかったのに、高一になっていざ始めてみると疲れるしめんどくさい。

 

…まぁ金が貰えるならなんでもやるけどネ!


 給料は趣味に溶け、マンガやゲームが増えていく。趣味は楽しいが、人生がつまらない。

 ダラダラと帰っていると、スマホから電話の着信音がした。

 

「誰だよ…疲れてるのに、、、いやでも上司からだったら…」


 嫌々スマホを取り出し画面を見ると、上司でもなんでもなく、たった1人の友達からの電話だった。

 

「お前かよ…はぁ、、もしもし?」


「よう!我が生涯唯一のライバルよ!」


「切っていいか?」


「お、おぉ…ってちょっと待て!切るな切るな!」

 

 こいつは金崎峻平かねざきしゅんぺいと言う通称変態アニオタ眼鏡だ。

 もう名前からオタク感が感じ取れる。

 

「で?なんか用でもあんのか?」


「これから帰りか?」


「そうだよ。邪魔すんなよ。」


「いや酷くね?俺の扱い雑じゃね?」


 サラリーマンは疲れてんだよ…そう思いながらも会話を続ける。あいつには一生理解できない考えだからな。


「そろそろ切っていいか?」


「まだなんも話してないんだよなぁ…お前、相手が俺じゃなかったら誰も話してくれないぞ?」


「余計なお世話だ!」


「まぁまぁ、そう怒らずに。お前今日暇?」


「…暇…だよ」


「テ◯リアやろうぜ!」


「…悪りぃ、暇じゃねぇわ」


「嘘つけ!絶対暇だろ!」


 どうせ素材集めを夜中まで手伝わされ会社に遅れそうになるという未来が見えていた。

 そんな未来ではなく未来視の◯眼が欲しいなぁ!

 

「帰ったら連絡してくれ。俺先に始めてるからさ。」


「強制なのかよ…」


「暇だろ?」


「チッ、まぁいいよ暇だし。」


 そんなくだらない会話をしながら帰っていると、俺の後ろの方から叫び声が聞こえた。


「おい、今可愛い乙女の声がしたぞ!」


「お前は黙っとけ!」


「スイマセン」


 悲鳴を聞き、俺が後ろを振り向くと、目視だと約10メートルくらい先に、全身を漆黒のような深い黒に返り血で、一部が赤く染まった服を着た、人間なのかも判断できない、全身が凍りつくようなが俺の方を見ていた。

 

 その横には、無惨にも首から上の部分が失われ、途中まで引きちぎられ、最後の部分は刃物で切断されたような傷口の見える30代くらいの男性の死体が地面に横たわっている。出血で血溜まりもできていて、視界に入るだけでも吐き気がする。

 少し奥にいる女性は、一部始終を見ていたからなのか、怯え切っていて、腰を抜かして地面に座り込んでしまっている。恐らくさっきの悲鳴は彼女のものだろう。


「な、なんだよあれ…」


「どうした?何かあったか?」


 電話越しだから金崎には何も伝わっていない。だが、状況を説明できる余裕が俺にはなかった。


「ヤバい、あれはヤバい!」


 から背を向けて、全力で走り出す。

 時間は夜10時半過ぎ、住宅街にはほとんど人影もなく、現場には腰を抜かした女性と街灯に照らされ、血塗れの服が薄気味悪く光に反射され、手には恐らく…切断した死体の頭らしきものを持った人間、殺人鬼と俺だけ。


「どうしたんだよ!何がいる?説明できるか?」


「そんな余裕ねぇよ!人間⁈いや殺人鬼がい……ッ!」


 瞬間、体が燃えるように熱くなった。

 殺人鬼が持っていたと思われる鋭いダガーが俺の背後から投げつけられ、背中を貫き、血まみれで尖った剣先が腹部から見えていた。


「あ"がッ……!」


「おい!大丈夫か⁈返事しろ!」


「…ヤ"バい"ッ…ゴホッ、」


 人生で初めて吐血した。だいたい腹を刃物で貫かれたこと自体初めてで痛みで声も出ない。痛みで膝から崩れ落ち、地面に倒れた。


「クッソ!俺はどうしたらいい⁉︎警察に連絡するにも場所がわからない!」


「か…ね"ざ、、そのま…ま、ハァハァ、電……話をッ…きる"なッ……」


 わ、わかった!と金崎はいい、俺は殺人鬼のいる方に視線をやる。だがそこに奴の姿はなく、替わりに俺の背後から悍ましいものを感じる。


 俺は気づかないうちに奴に背後を取られてしまっていた。すると、ゴンッと鈍い音がし、激しい頭痛に襲われた。

 頭を蹴られ、俺は仰向けになった。

 不意に視界に入り込んだのは、電柱に書いてあるこの場所の住所だった。

 あ"ー死ぬなこれは。

 どうせならテ◯リアやりたかったなぁ…


 電話越しに金崎のデカい声が聞こえる。だがそれもどんどん遠くなっていく。

 頭の出血が目に入り、視界は赤黒くなってきた。

 最後の力を振り絞り、電柱に書いてある住所を金崎のLINEに打ち込む。


 そして、意識は完全に消失した。

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