第182話 海底ダンジョン 初心者層ボス戦

『水中行動は久しぶりだし…まずは感覚を取り戻すところから始めるか。』




海底ダンジョンの魔物は初心層からC級やB級が跋扈しており、以前訪れたときはなかなか強く感じた。


しかし、魔王候補者になった俺にとって海底ダンジョンの魔物は雑魚に過ぎないので、ウォーミングアップがてら初心層の攻略を進め、10層のボス部屋前に到着した。




道中宝箱も全て回収したが、ボロボロの装備系しかなかった。


せめてCランク程度の装備品くらいは欲しかった。




また、ドロップは魚介類の魔物なので、魚の切り身などの食料だった。


海鮮好きとしては、当たりだ。




『ふぅ…よし、MP全快したし死の魔力込めるか。』




そっと扉に触れて死の魔力を流したが、何故かほとんどMPを吸われなかった。


最初のボスはそれほど強くないからだろうか…?




数分待って消費したMPを全快させ、全バフをかけてから扉を開けた。


すると、そこには巨大なウニの魔物がいた。



『ウニかぁ…美味しいよなぁ…』




前世で寿司屋に行ったときは良く食べたものだ。


…それはさておき、ウニ魔物を“鑑定“するとステータス値はHPだけがずば抜けて高かった。しかし、ユニークスキルは習得していなかった。




『死の魔力はHPに回ったのか…?今までは大体ユニークスキルだったが…』




何はともあれ、さっさと倒してしまおう。


とはいえ、水中ではもちろん火属性魔法を行使しても消されてしまう。


また、遠距離攻撃も水の抵抗によって弱体化させられてしまう。




武技による直接攻撃は、“水中行動“のスキルによって地上と同じように行使できる。


しかし、初見の敵に近距離で挑むのは危険すぎる。


チキンな俺には厳しい。




『…あ、そうだ。空間魔法“転移“で敵の体内に直接魔法打ち込めるか…?』




もしこれが成功すれば、回避不可能な最強の攻撃手段を得られるのだが、これには問題点がある。


それは、ひとえに敵の座標を寸分違わず把握するのが難しいということだ。




『…もしかして“レーダー“って三次元化できるか?』




今までは二次元で、高低差は自分の座標からの差異を点の色の濃さで表現されていた。


もし三次元化できるのなら、非常に便利になる。




『ウニ魔物は…全然こっちに気付かないな。もしかして寝てるのか…?まあちょうどいいか。』




今のうちに試してみよう。




前世のホログラムを想像しながら“レーダー“を行使してみた。


すると、ピロン!とシステム音声が聞こえた。



自身のステータスを“鑑定“して見てみると、“3Dレーダー“というスキルを習得していた。




『おぉ…!!安直な名前だけど助かるな…』




早速“3Dレーダー“を行使してみると、目の前に立方体状のホログラムが現れた。


そこはボス部屋全体を映し出しており、俺の体や地面にある石、そしてウニ魔物の体など細かに映っていた。




『なかなか精度高いな…ただ3Dにした分効果範囲が狭いのが難点だな…』




魔法を“転移“させるウニ魔物の体内の座標を固定し、風属性魔法限界突破Lv.1“暴風球“を行使してみた。


次の瞬間、ウニ魔物が内側から破裂して粉々になった。




『…っ!?!?危なっ!?!?』




“暴風球“の威力が余って粉砕した針がこちらに飛んできたのだ。


結界魔法“絶対不可侵結界“を展開していたからいいものの、今の勢いで直撃していたら身体に穴が空いていただろう。




『次から気をつけよ…』




それに今は水中だからいいものの、地上で行使したら敵の体液が飛び散って大変そうだ。


この合成魔法は“直接魔法転移“と名付けよう。




ドロップは新鮮なウニと麻痺針×50本だった。


ウニが手に入ったのは嬉しい。




『…ってあの針に麻痺毒付いてたのか!?!?普通の人だったら本当に危なかったな…』




魔物スキルは“針飛ばし“というもので、効果は身体に生えている針を自在に飛ばすというものだ。


…俺の身体には針が生えていないので、“略奪“しなくていいだろう。




『ウォーミングアップにもならないほど呆気なかったな…』




ボス部屋を抜けた先の安全地帯には空気があったため、転移門を開通させたあとウニを美味しくいただいた。

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