第136話 ヴァルハラ帝国

翌朝




「グレイ!」




「はっ!ここに。」




「配下全員を玉座の前に整列させてくれ。」




「承知いたしました。」




昨日はアンデッド軍だけ呼び出して装備を提供しようと思ったのだが、全員を招集させたのはヴァルハラのシンボルマークを作ったのでそれを伝えるためだ。


そのために旗に描写しておいた。




『…これでダサいって言われたらどうしよう。…いや、ここまで来たらもう引けない!!』




「ダグラス様、整列完了致しました。」




「ありがとう。」




俺は緊張しながらも壇上に向かった。


配下たちの中には、何故呼ばれたのか困惑している者もいた。




「急に招集をかけてすまない。大事な報告をする。」




「あー!!ルカ分かったの!!その後ろに隠し持ってる旗、もしかしてヴァルハラのマークなの!!!」




…ネタバレされてしまった。


悪意はなく、無邪気だから怒ろうにも怒れないので仕方ない…




「その通りだ!!ここヴァルハラのシンボルマークを作った!!」




「お、おおおおおおおおおおおお!!!!!!!」




「ついに国の王として君臨なされるのですね…!!!」




『は…?』




グレイが何やらおかしなことを口にしながら涙を流している。




「ヴァルハラ帝国万歳!!!!ヴァルハラ帝国万歳!!!!!」




「…はっ!しまった…!!!」




シンボルマークとは、国しか掲げることの許されないものだったのだ。


前世ではありふれたものだったので、完全に忘れていた。




…もう過ぎたことは忘れよう。


勝手に国を作ったので、もし他国にこれがばれたら最悪戦争になりかねないが…




「その通りだ!!…ここにヴァルハラ帝国の誕生を宣言する!!!!」




「おおおおおおおおおおおお!!!!!!!」




「そして、ヴァルハラ帝国の警護隊であるアンデッド軍の防具を製作した!!」




「おおおおおおおおおおおお!!!!!!!」




「王自らが作ってくださるなんて…民思いな王だわ!!」




やはりマルコに頼まず、俺が作ったのは好感度上昇の役に立ったようだ。


徒労に終わらなくてよかった。




「今から授与式を行う!!」




それからはアンデッド軍のスケルトンたちが一列に並び、一人一人に防具を手渡ししていった。




「これにて授与式を終了する!改めて、急な招集に応じてくれて感謝する。」




「おおおおおおおおおおおお!!!!!!!」




俺は旗を掲げながら玉座に戻った。




『…はぁぁぁぁ!!!!緊張したーーー!!!』




ヴァルハラ帝国が誕生してしまったのは誤算だが、無事防具を渡せてよかった。


近いうちに武器も作らなければ。




「…ダグラス殿、失礼しますぞ。」




「どうしたグリム?」




「その…儂の防具は…?」




「ああ、そのことなんだが…幹部たちを招集してくれ。」




「了解じゃ。」




数分後




「また集まらせてすまない。」




「いいのよ!あたしは気にしてないわ!」




「ありがとう。グリムから質問があったので、今回は幹部たちの装備についてだ。」




本来ならばアンデッド軍よりも幹部たちに先に装備を提供すべきだった。




「俺も先にお前たちに装備を提供しようと思ったんだが…いいお前たちに相応しい素材が見つからなかったんだ。すまない。」




「ダグラス様!!どうか頭をお上げになってください!!私めを含め、我々は気にしておりませんので!!」




顔を上げると、誰一人として落ち込んでいる者はいなかった。


むしろ、どこか誇らしげな顔をしているように感じた。




「そうか…じゃあ見つかり次第与えると約束するよ。」




「はっ!ありがとうございます。」




ひと段落着き、幹部たちは皆仕事に戻った。




『ヴァルハラ帝国かぁ…人族に見つかったら戦争になりかねないな…』




早急にヴァルハラ帝国を覆う結界に”隠蔽”の効果を付与しなければ。


早速結界の核である海龍の魔石がある所に行き、付与を終えた。




『ふぅ…これでひとまず結界に触れない限りばれないな…』




そう、あくまで”触れない限り”なのだ。


ヴァルハラ帝国は精霊の森のように周辺に遮蔽物があるわけではないので、道を紛らわせたどり着けなくさせることができないのだ。




『…もし馬車とかが通って結界にぶつかったら、最悪御者死ぬからな。近いうちに対策を考えないと。』




またやらなければいけないことが増えてしまった。




『…信頼できる労働力が欲しい。』




切実にそう願った。

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