第94話 武闘大会 決勝①

「…ラス…ダグラス!!」




誰かに呼ばれる声がして俺は目を覚ました。




「ようやく起きたか!!」




「…師匠?あれ、俺は…そうか。寝落ちしたのか。」




「ああ。それにしてもよくカルファの奴に勝てたな!!!」




「ありがとう。師匠並みに手強かったよ…」




「だろうな!!あいつは俺のライバルだからな!!!」




「そうだったのか…あっ!!師匠の試合は?」




「もちろん勝ったぞ!!なかなかの体術だったが俺も体術には自信があったからな!!」




「そうか…ってことは明日の決勝は師匠と?」




「ああ!!卒業試験以来だな!!!」




「そうだな!!成長した姿を嫌でも見ることになるから覚悟しろよ?」




「ああ!!でも返り討ちにしてやるさ!!!ガハハハッ!!!」




それから師匠と別れ、屋敷に帰った。




『ついに明日師匠と…』




喜びが隠しきれず、自然と口元に笑みが溢れてくる。


いつの間に俺はこんな戦闘狂になっていたのだろう?




”魔力念操作”の最終確認をし、いつもより早めにベッドで横になった。


気分が高揚してなかなか寝付けなかった。




翌朝起きると、とても気持ちが落ち着いていた。


俺は装備やステータスの確認をしながら闘技場に向かった。




「さぁついに決勝戦だーーーーーー!!!!!!!!」




「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」




「有終の美を飾るのは果たしてダグラス選手とカイル選手のどちらになるのかーーーー!!!!」




「決勝戦で師弟対決とはなかなか熱い展開ですね。」




「そうですね。弟子が師匠を打ち負かせるのか、見ものですね!!」




俺は控室で戦闘準備を整えていた。


今日は入場前にバフと”魔力念操作”をかけて万全を期した。




「それではダグラス選手とカイル選手は入場してください。」




『ふぅ…よし、行くか!!!!!!』




俺は1歩1歩を踏みしめて入場した。




「ダグラス選手が入場ーーーーー!!!!さぁ師匠にこれまでの努力を見せつけてやれー!!!!!」




「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」




『っ!?!?』




俺は前から感じた大きな威圧感に驚き、たじろいだ。




「カイル選手も続いて入場ーーーー!!!!…まさかあれは!!!!」




「…ええ!!!ここでカイル選手の、Sランク冒険者最高峰の戦闘が見られるとは思いませんでした!!」




「な、なんと!!!全種類の武器を持っています!!!」




「伝説の職業スキル”ウェポンマスター”が拝めますよ!!!」




俺は以前、師匠の訓練を受けていた頃1度だけ質問したことがあった。




「師匠はどんな武器も使ってますが1番の得意武器はなんですか??」




「全部が1番の得意武器だ!!!」




「はぐらかさないでくださいよ…」




「今はまだ早い。その時が来たら教えてやろう。」




あの時言わなかったものはこれだったようだ。


師匠のステータスから推測するに、おそらく”ウェポンマスター”の習得条件は全ての武技スキルがSランクになることだろう。




「それでは両者とも準備が整いました。武闘大会決勝戦、始め!!!!!」




「ダグラス、死ぬなよ?」




そう言うと師匠は片手剣スキルS”レイドストリーム”を行使してきた。




「そっちこそ!!!!」




俺も同様に”レイドストリーム”を行使し、刃が擦れる大きな金属音とともに師匠の斬撃を相殺した。


その際、魔器によって師匠の片手剣の刃をボロボロにすることができた。




「な、なんと!!!!!!最初から両者とも全力だーーー!!!」




「こんなにハイレベルな戦いはいつぶりでしょうかね。とても見てて興奮します。」




「まだまだ!!!」




師匠はいつの間にか壊れた片手剣を捨て、短剣に持ち替えていた。


そして、短剣スキルS”モーメンタリーバイト”を行使してきた。




「くっ!!!」




俺は片手剣スキルで相殺する余裕がなく、咄嗟に盾で防いだ。


この際にも魔鎧によって短剣の刃を破壊することに成功したが、力に押し負けて後ろに大きく飛ばされた。




迎撃を防ぐため急いで体勢を立て直そうとしたが、既に手遅れだった。


顔を上げると目の前に矢が飛んできていたのだ。




『なっ!?速いっ!!!!』




盾で防ごうにも間に合わない。


俺は苦肉の策として、兜でぶつかりに行くことで負傷を防いだ。




「最初に攻撃を浴びたのはダグラス選手だーーー!!!!」




「ダグラス選手の表情から察するに、カイル選手の全力は初めて見るのでしょう。」




「そうですね。最初からずっと後手に回っていますし。」




確かに解説の言う通りだ。


俺は師匠の攻撃を防ぐことばかり考え、攻めに転じなかった。




「ダグラス、来ないのか?」




このまま攻めたら師匠の掌で踊らされると思い、防御の姿勢をとった。


反撃の余地はカウンターくらいしかないだろう。




「ならこっちから行くぞ!!!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る