第34話 漏れる
布製のコースターを何枚も重ねて使っている。カップから漏れるのだ。それは滲み出るような漏れ方で極端に猫舌のわたしは飲むのが遅く、気がつけばコーヒーはカップからコースターに居処を移している。
漏れるカップは捨てればいい。けれど、お気に入りだから捨てられず未練がましく使いつづけていた。
いつからだったろう。持っているカップがすべてそんなふうになってしまった。滲み出るように漏るのである。
最初に漏れ出した、あのお気に入りのカップを捨てればすべてがリセットされるのでは? と思わなくもないのだけれど、やはり捨てられずにいる。
お気に入りのカップだから捨てられずにいるのか、滲み出るように漏ることをリセットしてしまうことをためらって捨てられずにいるのか。ためらうならどうしてためらうのか。
自分の気持ちがわからないまま、漏れるカップたちを使いつづけている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます