第96話 『出会うミーツ』

別入り口より、角狩による殲滅が終了した。


『………』


今いる場所よりも、別の場所から喧噪が聞こえて来ると角狩は思っている。

面倒臭そうに狩猟奇具をホルスターの中に収納しながら、何処から最上階へ行けば良いのか考えている。

すると、部屋の扉が開かれた。

その扉は、黒い塔に入る為の入り口であり、其処から入って来るのは、黒服の男性だった。


「……狩人、か」


夜行武光だった。

部屋の中に入ると、気怠そうな表情をしながら狩猟奇具を構えている。

殺意が微かに漏れている様を見た角狩は、狩猟奇具を再びホルスターから取り出すと、それを手に握り下げた。


「悪いね、もう、止まる事は出来ないんだ」


だから、と夜行武光が狩猟奇具のトリガーを半引きする。

角狩はヘルメットに内臓されたインカムから二人に上層へ続く階段を探せと命令。

瞬間、糸の様に伸びる筋肉繊維が角狩の首を狙い。

角狩はその一瞬を逃す事無く身を屈めて攻撃を回避。


「ッ(早いッ)」


即座、角狩が前進して狩猟奇具を開放。

手斧の様な狩猟奇具を展開して接近。

即座、狩猟奇具の筋肉繊維を収納した夜行武光は『伏正』を展開して防御に移る。

か細くも膂力が加算されたスイングによる一打が、狩猟奇具ごと夜行武光の体を浮き上がらせた。


「(おまけに、なんて力だッ……こんな、こんな狩人が存在したのかッ!)」


角狩の行動はそれだけに留まらない。

手斧を振るった腕を瞬時に引っ込めると、体を旋回させて片足を地面に、もう片方の足で夜行武光を蹴った。

砲弾を叩き付けられたかの様な衝撃と共に壁に叩き付けられる夜行武光。

そしてその一撃と共に壁が崩壊して、別の部屋の元へと移動する。

其処は、ベルトコンベアが化物を運ぶ工場内部である。

そして、浅深一刀斎及び、紀之國冥が化物を対処している場所でもあった。


「なん、なんすかッ!?」


驚きの表情を浮かべながら、紀之國冥はそう声を荒げた。

最初に地面に転がる夜行武光を確認し、そして工場内部へと足を運んでくる狩人の姿を確認。

駱駝色のコートにヘルメットを装着するその男性らしき狩人。

一瞬だけ新手の化物かと思ったが、しかし紀之國冥は首を傾げた。

その姿に何処か見覚えがあった。いや、正確にはその中身に対しての親近感を覚えていた。


「もしかして……先輩っすか?」


先輩。

そう言われた角狩は彼女の方に顔を向ける。


『……』


「先輩っすよね……井狩いかり先輩……っすよね?」


そう言われた角狩は、面倒臭そうにヘルメットの上から額を掻いた。



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