第95話 『誕生するバース』

螺旋階段の様に壁側に接して作られた黒い塔の階段を登り続ける伏見清十郎。

最上階へとたどり着くと、部屋の中は喘ぎ声で満たされていた。


「ん、あ、……はっ、んん」


硬い床の上に寝転んで、裸になった女性が上下に動いている。

その光景を見た伏見清十郎は狩猟奇具を握り締める。


「揺蕩え『炎翅』」


一つの狩猟奇具が二振りの曲刀へと変貌して、伏見清十郎はその二人の方に向かう。


「(この、感覚、は)」


床に転がる岸辺玖。

そして、その上に乗っている人間に覚えがあった。

それは、榊色子の事を知っている……という訳ではない。

榊色子の中に居る……化物を知っている。


「バビロン……バビロン、貴様ぁ!!」


伏見清十郎は激怒した。

彼の仲間は、バビロンによって殺されている。

そして一度は、バビロンを倒し損ねた伏見清十郎。

狩猟奇具を強く握り締めて、牙を剥いて走り出す。

バビロンを打倒そうとする最中。


「ワンっ!!」


しかし、真横から迫る化物を察知して狩猟奇具で防御する。

ワン丸の声によって理性を取り戻した伏見清十郎は、三つの拳を受け止めた。


「クソッ!邪魔をするなッ……タトゥ!!」


上層には無論、タトゥが存在する。

タトゥの腕は既に完治しており、伏見清十郎に片側の三つの拳で突きを繰り出していた。

そして、もう片方の腕は既に完治しており、なんとその腕は鋼の甲殻で装甲されていた。


「っ(もう片方の腕、何を持っている)」


タトゥの腕には、布に包まった小さな荷物があった。

化物が扱う武器かと思ったが、それは微かに動いている。


「っ!」


タトゥが力で押して狩猟奇具ごと伏見清十郎を引き剥がすと、片足を上げて蹴りを繰り出す。

伏見清十郎は押し出された力を利用してそのまま後退する。


「あ、んッ~~~ッ!!」


それと同時、バビロンが絶頂し、小刻みに震える。

そのまま、岸辺玖の方へと倒れて、荒く息を洩らしていた。


「きゅう、きゅうう……こ、つくり、もっと、もっと……」


岸辺玖の体液を体に受け止めて、嬉しそうな顔を浮かべるバビロン。


「何をしている、お前……化物が、人間の子を作ろうとしているのか?」


伏見清十郎はその汚らわしい光景を睨みながら、そしてふと気づいて顔をタトゥに向ける。


「……おい、それは」


それはなんだ、というよりも早く。

タトゥが指を一本建てて、口元に寄せていた。

彼が抱くそれを優しくあやすように左右に揺れている。


「誰の……子供だ、それはッ!!」


そう声を荒げると。

タトゥの腕の中に眠る子が声を荒げた。

泣き叫び、母親を欲する様に。

それは、バビロンと岸辺玖の子供であった。



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