第62話 『鎖のチェーン』
一方、岸辺玖は伏見清十郎と共にしていた。
個室の中で岸辺玖は天井を仰いでいる。
伏見清十郎は椅子に座って空を見ている。
「……玖、俺は、玖の同期として、何時もの様に接しても良いか?」
恐る恐る、そう聞く伏見清十郎。
岸辺玖は体を起こして伏見清十郎の方を見ると。
「そうしたいのなら、そうすれば良い、俺は多分、そういうのは気にしないと思うからよ」
そう言うと、伏見清十郎は軽く笑みを浮かべた。
「そうか、……それを聞いて安心したよ……じゃあ、玖、俺の事は清十郎と呼んでくれ」
「あぁ、清十郎」
「玖……」
伏見清十郎が嬉しそうに目を細めて、鼻をすんすんと鳴らした。
何か匂うのか、そう思った岸辺玖。途端、伏見清十郎が椅子から立ち上がろうとして、そのまま地面に倒れた。
「清十郎?……ッ」
岸辺玖は、自らの体が鈍くなっているのを覚えた。
そして、体は鉛の様に重くなり、次第に動かなくなって、それは言うなれば、錆付いた歯車の様に硬直していく。
「(なんだこれ……化物……いや、狩猟奇具か、これはッ)」
そう判断した岸辺玖。
部屋の扉が開かれて、其処から入って来る黒衣服の女性。
藤色の髪の毛が特徴的な、紫乃結花里だった。
「……どうやら、麻痺毒は聞いている様子ですわね?」
倒れる伏見清十郎に近づいて、顔を近づけてその症状を確認する。
「ぐ、ぅ……」
「ご心配なく、今は痺れておりますが、時間が経てば治りますわ。尤も、一時間程はそのままですが」
そう言って、岸辺玖の方に顔を向ける。
「な……ぁ」
何故、と岸辺玖は聞こうとした。
彼の表情を確認して、紫乃結花里は彼の表情から意図を汲み取る。
「何故と思いまして?……ふふ、なんという外道、わたくしに、あんな事をしておいて……はぁ……はぁ……」
息を荒くして、岸辺玖に接近する。
岸辺玖は目線を落とす、彼女の手に、何か握られていた。
それは、鎖だった。
「私をこんなにめちゃくちゃにしておいて……知らんぷりだなんて、本当にヒドイお人ですわ……」
じゃらじゃらと、鎖が彼女の手から溢れ落ちる。
岸辺玖は身構える。紫乃ゆかりが、狩猟奇具を使用したのかと思った。
しかし、鎖は反応しない。ああいった蛇腹型の狩猟奇具は狩人の意思で自在に動かす事が出来るのだが、鎖が彼女の意思によって動いている、などと言う形跡はまるでなかった。
「あなたが私にした事を覚えてないというのなら……思い出させてあげますわ」
そう告げて、岸辺玖に向けて鎖が投げ付けられる。
攻撃が来る、と身構える岸辺玖だったが……鎖はやはり動かず。
その鎖は、彼女の首に装着されたペット用の首輪まで繋がっていた。
「あ?」
腰を下ろして、スカートなど気にもせず、下品に股を開き、両手を握り締めて丸めると、彼女は荒い息遣いをしながらピンク色の舌先を出して興奮した様子で笑みを浮かべた。
スカートから、彼女の薄いピンク色の布地がくっきりみえて、それはまるで、犬が主人公に服従する様なポーズにみえた。
「ゆかりとわんわんえっち、してください、うぅ……わんっ」
否、事実それであった。
紫乃結花里は岸辺玖に対して発情していた。
それも、ペットプレイなどしようとしている。
衝撃的姿を見た岸辺玖は冷めた表情を向けたまま。
「うわキッツ……」
と、引く他なかった。
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