第61話 『会議するお偉いさんたちのセッション』
十六狩羅からは八名が揃う。
『刀狩り』
『屍狩り』
『雷狩り』
『刻狩り』
『鬼狩り』
『喰狩り』
『血狩り』
『雪狩り』
十家は全員出席していた。
合計十八名による会議が始まろうとしていた。
三十畳ほど広がる場所に、女中が入ってくると、一人一人の前に食事を置く。
「本日は海神さまからご提供されました、魚の煮つけにございます」
仰々しい飾りつけに、お盆の前には巨大な魚が皿から頭と尾が飛び出ていた。
白く変色した魚の眼が、此方を見詰めている。
基本的に、十家が参加する場合は御持て成しと称して食事に関する食材を持ち込むのがルールとなっている。一応は親睦の証であり、これを無碍にしてはならない。
夫々が食事にありつく最中、話し合いが始まろうとしていた。
「儂は儂の弟子・紀之國冥を推薦する」
最初に切り出したのが、今回を以て狩人から引退すると宣言した『刻狩り』浅深一刀斎であった。
老いた体には分相応と言いたげに和服を好んで着込んでいる。
額から鼻先まで伸びる切り傷は、嘗ての化物討伐戦にて付いた名誉の勲章だ。
「引退する人の後押しならば……まあ、まずは確定でしょうな」
薄く引いた様な作り笑みが特徴的な黒髪の男が浅深一刀斎の言葉を後押しする。
夜行宗光である。彼が浅深の弟子を推しているのは、単にその後のもう一人の十六狩羅入りとなる人物を抑える為であり、言うなれば恩を売って少しでも多くの票を稼ごうとしていた。
「いや、投票制に準ずる。儂の一存で上がれば後腐れもあろう」
「では、まずは紀之國冥が『刻狩り』から推薦されました」
それに対して海神家当主及び『雷狩り』が頷く。
浅深一刀斎に恩を持つ海神家が浅深の推薦を後押しするのは当然の事だった。
「では……他には?」
すると今度は、獅子吼濫界が手を挙げる。
「獅子吼家当主である『獅子吼吏世』を推薦しましょう」
そう言った。
たった一夜で獅子吼濫界を下した獅子吼吏世、その実力や、数多くの任務を熟して来た彼女ならば、その名が挙がっても当然の事だった。
「吏世殿、一応ではありますが、自分で自分を投票は無理ですぞ、貴方は誰を推薦するのですかな?」
と、そう話が切り出される。
「私は……」
誰を推薦するか、答えた。
数時間に渡る会議は、六名の推薦者による選考によって十六狩羅が決まる事が定められた。
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