第87話 慎也さんは、渡さない!

 神社から帰ると、やはり、アマが玄関で正座して待っていた。


「おかえりなさいませ。御主人様。お仕事お疲れさまでした」


 丁寧におじぎするが、舞衣が既に慎也の手を握っている。


 アマは、悔しそうに舞衣をにらむ。が、舞衣は視線を合わせずに、慎也と手をつないだまま、居間へ向かった。


 アマも、後ろについてくる。きっと、マッサージを狙っている。

 舞衣は察知して、先に慎也の肩に手を掛け、みながら坐らせた。


 アマは、またも悔しそうにし、爪を噛む。


 あいさとも出てきて、アマをにらみつけ、慎也の腕を揉みだした。こうなってしまうと、アマは手が出せない。


 慎也が風呂に入ると、アマは、また背中を…と狙う。

 が、風呂前ではさとが坐り込んでいた。

 さとと睨み合い、やむなく引き返す。


 アマにフラストレーションが溜まる。




 交合時間…。

 この時ばかりは、アマも慎也の情けを受けることが出来る。

 今日は邪魔ばかりされて、慎也にあまり近づけなかった。ここぞとばかり、アマは慎也に貪りついた。


 激しく求め、交わる……。


 愛しい人の精液が、ドクドクと腹の中に流し込まれる…。


 …途轍もない快感!


 そして、また、抑えきれなくなってしまった。


「ご主人様!どうか、私の村に来てください!

 一生が無理なら、五年、いや一年限定でも良い!」


「あんた、いい加減にしなさいよ!」


 舞衣もキレた。鬼に向かって、鬼の形相になる…。


「月影村との約束だから我慢しているのに、ふざけるのもいい加減にしなさい!

 フィンガーアタックで処刑してもらうことになりますよ!」


 アマの方も、これで引き下がったりはしない。


「何がフィンガーアタックで処刑だ!

 自分では何もできない分際で、偉そうにするな!

 そもそも、己らはフィンガーアタックを怖がっておるが、愛しい人に愛撫してもらえるのを嫌がるなど、信じられぬ!

 私なら、喜んで受け入れる!嫌だなどというのは、愛が足りない証拠だ!」


「言ったわね~!じゃあ、勝負よ!

 あなたと私、同時にフィンガーアタックを受けて、最後まで正気を保った方が勝ち。

 あなたが勝ったら、慎也さんを一年貸してあげます。

 でも、負けたら、以後、勝手なことは一切許しません!」


「ちょ、ちょっと、舞衣さん!何言いだすの!」


 慎也はあわてた。

 いや、慎也だけでない。祥子も杏奈も、環奈も。そして、恵美までも!


「ウルサイ! やるったらヤル! 慎也さんへの愛を証明して見せる!」


 なんで、それが愛を証明することになるのか…。

 全くもって荒唐無稽、支離滅裂。意味不明で無茶苦茶な論理だ。

 しかし、怒りで思考がおかしくなっている舞衣には、もはや、何を言っても無駄。顔も真っ赤に紅潮し、鼻息も荒い…。


「弱ったな~。まさか、こんなことになるなんて~。

 舞衣さんって、こんなに気性激しかったのね~」


 恵美にも、もはや打つ手がない。頑張って、舞衣に勝ってもらうしかない。

 もしも舞衣が負けたら、全面的に自分の責任だと頭を抱えた。


「父様!母様!開けて!」


 外で、さとの声がする。

 不審げに、沙織が戸を少し開けて、そこに居たさとに小言を言う。


「どうしたのさとちゃん!

 夜にこっちへ来ちゃダメってことになってるの、忘れたの!」


 さとは、家の決まり事を破り、外でうかがっていたのだ。しかし、その叱責を物ともせず、少し開けられた戸を更に開けて、顔を突っ込んでくる。


「だって! 父様と舞衣母様が心配だったから!

 本当に勝負するの? やめてよ、舞衣母様!」


「ダメ! やるったらヤル!

 それで、この阿婆擦あばずれ鬼を、ギャフンと言わせる!」


 それにしたって、負けた場合は慎也が一年貸し出されるというのは無茶苦茶だ。慎也の意向は全く無視。理不尽極まりない。


「頭冷やしてよ、舞衣さん。負けたら、何で俺が月影村に行かなければいけなんだよ…」


「私が勝つから問題ない! 止めても無駄! ぜ~ったい、ヤル!」


 もはや、完全に理性を失ってしまっているのだ…。そして、舞衣はさらに爆弾発言をする。


さとちゃん! みんなを連れてきなさい! みんなにも見せてあげる!」


「は、はい!」


 さとは、今にも炎か何か噴き出しそうな舞衣の勢いに恐れを感じ、慌てて姉妹たちを呼びに走った。

 さとが走って行った後、やはり、その苛烈な勢いにフリーズしていた沙織が、舞衣の発言の余りの非常識さに気付いてあわてふためく。


「え…、えっ、えええ~! ちょ、ちょっと! 舞衣さん! 子供たちにまで見せる物じゃないでしょ!」


「ウルサイ!! 私が良いと言えば、良いのです! 性教育の一環です!!」


 逆に大声で怒鳴り返されてしまい、沙織は再度フリーズ…。


 アマと舞衣は二人だけで熱くなっているが、周りは逆に、皆、顔面蒼白だ。慎也たちだけでなく、トヨとタミまでも…。




 娘たちが、ワラワラと集まってきた。

 アマと舞衣は、全裸……。乙女、それも子供たちに見せるのは、絶対不適当な光景…。


 右側がアマ。左側が舞衣。あいさとは、舞衣の左側に、他の娘たちはアマの方に坐った。トヨとタミは、当然アマの方に居る。他の妻たちは、舞衣の方へ坐っている。

 審判が必要かどうか分からないが、一応、恵美が買って出た。


「では、アマさんと舞衣さんのフィンガーアタック一本勝負です。恨みっこ無し! 始め!」


 慎也が、それぞれの秘部に、右手・左手の人差し指を挿し込んだ。もちろん、喜んでするはずがない。渋々だ…。


「あうっ…」

「ひゃう!」


 指を同じように動かして……。


「う~っ!」

「ふぐ~っ!」


 徐々に動きを早くする。


「ひいいい…」

「あ、あああ~!」


 二人の顔が桜色に染まってくる。


 すでに、三分ほど経過。いつもの処刑であれば、とっくに、昇天してしまっている時間。しかし、二人とも耐えている。


「うわ、すごい舞衣さん…。どうして耐えられるの……」


「沙織、これが愛の力というやつかもしれぬぞ……」


 祥子も完全にあきれ顔だ。


 その一方、執行させられている慎也は不安極まりない。

 舞衣が負けたら、自分が月影村へ行かなければならない。

 慎也の指から出ている気は、特に意識して出しているモノでは無い。が、舞衣の方の気を調節して緩められないだろうかと思った。そして、たぶん、それは可能だろう。


 しかし、それを舞衣が鋭く察知した。


「慎也さん!余計なことしない! 公平に、同じようにして!」


 いきなり舞衣に怒鳴られ、一瞬仰け反る。


 舞衣は、慎也の心を読んでいた。慎也の不安気な目を見ながら、荒い息で舞衣が続ける。


「同じように公平にやって! 正当な勝負で勝たなきゃ、意味無い!

 手加減したら許さないわよ!

 大丈夫、私は勝つ。慎也さんを誰にも渡さない!」


(勝つといっても、もう、今にもイッちゃいそうじゃないか……)


 舞衣は既に涙目のあやしい顔になって、体をもだえさせている。アマの方が、少しだが有利そうに見えなくもない。


「母様! しっかり!」

「舞衣母様! 負けちゃ、ヤダ!」


 あいさとの声援も受け、舞衣はさらに気合を入れる。


「絶対勝つ!死んでも勝つ!」


(おいおい、死んだら困るよ。もうどうでもいい、早くどっちかイッてくれ!)


 慎也もキレた。そして、指をもう一本追加した。人差し指と中指で責める。


「ヒャウッ!」

「ひ、ヒ~!!」


 二人とも、体をよじる。ここまで、ほぼ同じように耐えてきていたが…。アマの様子が明らかに変わってきた。


「あ、あひ……。ひ、ヒイ……。ひ、ひ、ひ、ヒイイイ…。ふ、ふぐううううう!!」


 アマの体が、ビクビクビクビクッと、痙攣けいれんしだす。


「ほげ~!だめ、し、死ぬ~!!」


 アマは激しく体を痙攣させた。白目をき、口からは、ブクブク泡を吹く…。昇天だ!


「勝負あり! 舞衣さんの勝ち!」


 恵美が手を上げる。


 舞衣は桜色を通り越して、真っ赤な顔になっている。いや、顔だけでない。全身真っ赤だ。


 慎也は直ぐに、指を二人から抜いた。

 舞衣は、やおら立ち上がり、右手を高々と上げてビクトリーサイン。


「見たか、阿婆擦あばずれ鬼!」


「やった~!舞衣母様が勝った!」

「母様、最高!」


 舞衣の勝鬨かちどきと、さとあいの歓声。


 一方、他の娘たちは、少しガッカリした様子だ。これで、慎也が一緒に鬼の村に行ってくれるかもという淡い期待はスッパリ絶たれた。


 トヨとタミは、情けない状態になっているアマに取りすがっている。


「あれ?」


 歓声を上げていたあいが、首をかしげた。


「母様?」


 全裸仁王立ちで、ビクトリーサインのままの舞衣。

 ……が、両方の鼻の穴から、赤い筋がタラ―ッと垂れてくる。


 鼻血……。


 そして、そのまま豪快に、ドーンと仰向あおむけ状態にぶっ倒れた。


「きゃ~!母様、しっかり~!」


 あいが絶叫する。


「舞衣様!」


 杏奈と環奈もあわてて駆け寄り、脈と呼吸を確認した。


「大丈夫。気を失っているだけ…」


 慎也が布団に寝かせ、吐いてのどに詰まらせないように顔を横に向けた。

 心配そうにあいが舞衣の手を握っている。


「あ、あの……。姫様も見て頂けませんか…」


 トヨに言われ、近くにいる環奈が、舞衣の容態を気にしながらも、アマを診た。

 アマも、脈と呼吸は大丈夫。大股を広げ、大量の潮を吹いて、憐れな状態。

 だが、いや、やはり……。

 それで終わりでなかった。


 チョロチョロと、アマの股間から黄色い液体が出てくる。…失禁。


「あ~、姫様! なんてこと!」


 続けて、プスプス…。ぶり…ブリブリ……。脱糞…。


「ひ、姫様~!!」


「アマちゃん、ゴメンね~。負けた証拠写真よ~」


 恵美は、スマホでしっかり写真を取った。

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