新たな仲間と、…別れ
第82話 神子の館と、夫候補
さて、一件落着。
慎也たちは帰ろうとしたのだが、そのタイミングで急に厚い雲が出てきて、月が隠れてしまった。
これでは、異界の門を開けない。
月が出るまでは、こちらに留まるしかない。
ついでだからと、
更に、
「向かって右が、先代
今回の
テルが
「拝殿に近い方から、一の
「ということは~、
一の
テルは話しにくそうにしている。が、意を決したように、説明をし始めた。
「一の
舞衣は、テルの説明で表情を無くした。
テルの横をフラフラとすり抜ける。
篝火に照らされる館の、戸の前に進み出て、
「美月! こ、ここに美月の首が……」
「申し訳ありません。無暗に開けることは禁じられております。それに……、見ない方が良いかと…」
テルの制止で、舞衣は戸に掛けようとしていた手を止めた。
あれから四年以上経過しているのだ。当然、生前の美月の姿とは全く違う状態になっているはず…。
そんな姿を、美月も見られたくないだろう。
戸の前で
他の皆も、合掌した。
「え~と、じゃあ、こちらが、
一気に暗くなってしまった雰囲気を変えようと、恵美がつとめて明るく問いかけた。
一人のあまり特徴の無い顔立ちの鬼が、杏奈の子、
「この館の
「あれ~、籤引きなんだ~」
「通常は、籤ではありません。年齢順です。
ただ今回は、受胎時とお誕生時の
「へ~。
「え~と…。あまりパッとしないけど、まあ、こんなもんじゃないですか?」
気まずい雰囲気が
相手の鬼は、頭を
…皆、心では同調しても、口には出し難い感想だった。
三の
相手はガッチリ体型の鬼。顔も、まあまあ。
「私は、まあ、当たりかな…?」
これも、
四の
相手は、細身のイケメン。肉体系というより、頭脳労働系が向きそうな鬼。
「私は、大当ったり~!」
ブイサインする。
気に入ったようだ。が、これもやはり、他の鬼に失礼である。
五の
相手は、あまり冴えない、というか、見た目、足りなさそうな鬼…。
予定外の
予定外というのは、舞衣と祥子の子のこと。舞衣と祥子は、今回、本来の「
二人分増えているが、美月の分が減っているので、最終的な増加は一人分である。
「……頑張ります。宜しくお願いします」
何を頑張るのか、よく分からないが…。沙織の子らしい、気を使った発言で、皆、ホッとした。
これ以上の失礼は勘弁して欲しいし、足りなさそうに見えても、案外そういう人物が大きなことを成し遂げるということもあるのだ。
向かい側は、拝殿に近い方に戻って六の
つまり、相手がいないのだ。
「なによ~。私は独り身になっちゃうの~!」
「いえ。もし
二人の鬼が前へ出る。一世代前ということで、見た目は四十代くらい。(実年齢は百二十歳を超える…)
タイプは違うが、どちらもなかなかのイケメンだ。
「いいな~。
初対面で、いきなり選べと言われても、困るのは当然である。
「母様、どっちがいい?」
「うむ。どちらでも問題ないぞ。
祥子にも、そう言われてしまうと、後は自分の判断しかない。
「じゃあ、こっち!」
細身と、筋肉質の鬼からの選択であったが、
「こっちの方が、強そう!」
「え? 強そうって、まあ、腕力ありそうだけど、それが理由なの?」
意外な理由に、慎也が
「違う、父様! セックスが!」
皆がギョッとした。
「だって、子供たくさん作るのが、私たちの仕事でしょ!」
それはそうだが、先ほどの
当の恵美は、その視線に気付かない振りをしている…。
最後は七の
「ええと…、ここの籤は、私が引きました。よろしくお願いします」
照れながら頭を下げるテルに、
娘たちは母親似で、皆、間違いなく美少女である。
中でも
色白の舞衣以上に白い肌で、亜麻色の髪に栗色の瞳。少し色素欠乏の傾向があるのかもしれないが、それがまた美貌に輪をかけ、天使のような容貌容姿…。
この超絶美少女と、鬼一番のイケメンは、文句の無い組み合わせである。
「あ~あ、やっぱり舞衣さんの子が一番いいとこ持ってくわ~。だって、このイケメンで、将来の
こんな発言をするのは、当然、恵美だ…。
夜も遅くなってきた。
雲が厚く、月は出てこない。やはり、このまま泊まることになった。
翌日は、雲一つない良い天気。日の光の中で、村を案内された。
魚も取れる。
獣や鳥もいて、肉もある。
米は無いが、
四季があり、冬は雪も降るが、豪雪地帯ということでも無いようだ。
生活するのには問題なさそうである。
これなら、娘たちを送り出しても大丈夫と安心できた。
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