第73話 沙織の怒り

 クイは、金縛り状態の沙織を抱え、全力で走っていた。

 両肩の矢が痛い。どこかで矢を抜きたい。

 畑の中にポツンとある、小さい小屋が目に入った。


(よし、あそこで)


 クイは、その粗末な小屋に入り、扉を閉めた。


 農機具小屋のようだが、小屋の奥半分は休憩できるように板の間になっていた。

 板間は三畳ほどのスペースである。

 クイは、抱えていた沙織をそこへ放り下ろした。


 そして、顔をしかめながら、刺さっている二本の矢を引き抜いた。血が流れ出て、着物は真っ赤に染まっている。


「くそっ、やりやがったな。俺に傷を負わせるとは」


 クイは、矢をへし折って投げ捨て、転がした沙織に近づいた。


「今度はお前の番だ。十分に楽しんでからと思っていたけれどもな。奴らが来るかもしれない。すぐ臓物を取り出してすすってやる。奴らの仲間は、皆同罪だ」


 そう言ったクイであるが、転がっている沙織にいぶかしんだ。


 沙織は金縛りで動けない。しかし、ずっと、ぶつぶつつぶやいている…。


「恵美、恵美、恵美……。よくも恵美を……」


 板の間に放り出された痛みよりも、自分がこれからされることよりも、親友を目の前で惨殺されたという怒りで頭がいっぱいだったのだ。

 実際のところ、恵美は生きているのだが、あの無残な状態を見たら、死んだと思っても仕方ない…。


(恐怖で気がふれたか…)


 クイは、そんな恵美の服を両手でビリビリ引き裂いた。

 豊かな両の乳房があらわになる。

 スカート、下着も引きちぎり、完全な全裸にした。


 その間も沙織はずっとつぶやいていた。


「私の大事な親友に……。絶対、絶対、絶対、許さない…」


 クイは薄笑いを浮かべ、沙織に告げる。


「金縛り状態で裸にかれている小娘に何ができるか。これでしまいだ」


 右手を振り上げた。

 …恵美と同じように、沙織の腹を突き破るつもりだ。


 が、その時。


(許さない!!)


 沙織の念が頂点に達した。

 そして、クイはビクッと体を強張こわばらせた。


「う、な、なんだ……。や、やりてえ。こいつとやりてえ。だ、だめだ、たまんねえ」


 クイは、すぐにも沙織の腹を裂いて臓物をすすり喰うつもりでいたのだ。しかし、急に性的衝動が抑えられなくなった。

 これは、沙織の淫気が炸裂さくれつした結果……。


 初めて使う淫魔の力。絶対使わないと思っていたが、親友の仇だ。挿入させれば、相手を自由にあやつれるという…。

 沙織は淫気を出し続けた。


 それにつられ、クイは沙織の乳房に吸い付ついて来る。


(こんなやつとセックスするなんて……。でも、恵美の仇をとるには、これしかない!)


 クイは沙織の淫気に誘われるがまま、彼女の股を広げさせ、ベロベロとめ回す。そして、屹立きつりつした股間のモノを出した。


(……。う、で、デカい……。うそでしょう? あ、あんなの、入れさせなきゃダメなの?)


 一瞬、沙織は躊躇ためらった。何しろ、彼女の手首ほどの太さである。


(や、やってやるわよ! 裂けたって構うもんですか!)


 沙織は覚悟を決めた。

 クイは、マラを沙織にあてがう。そして、ズブッと一気に突っ込んでくる。


「ふんぐううううっ!!」


 沙織は、目を見開き、息を詰まらせた。


(い、痛い! 裂けそう。い、いや、裂けてるんじゃない?)


 クイは激しく出し入れする。

 沙織の股間には、引き裂かれてしまいそうな、猛烈な痛みが走る。


(最初は、ゆっくり入れるものでしょ!このクソ鬼!)


 クイをにらみつける沙織の目が、紫に光った。

 同時にクイは、沙織に挿し込んだまま、ピタッと動きを止めた。


「金縛りを解きなさい」


 沙織の命令にクイはうなずいて、沙織の目を見つめ、赤く光らせた。


 …金縛りが解けた。手足が動く。しかし、このまま離れると鬼が正気に戻ってしまう。そうなっては、沙織の力では、何とも出来ない。


(気を吸い尽くしてしまわなければ……。そのためには、下に組み敷かれたままでは難しい)


つながったまま、あなたが下になりなさい」


 クイはうなずいて、沙織の背中に手を回し、軽々と持ち上げる。そして、挿入したままで沙織を上にして横臥した。


 沙織は、痛くてたまらない自分の股間を確認する。

 血は出ていない。裂けてはないようだ。

 でも、太すぎるモノに大きく醜く押し広げられていて、物凄ものすごい激痛…。早く抜き出したい。

 クイの上におおいかぶさり、唇を重ねる。体勢を変えると結合部が動いて、さらに痛くなるが、何とか堪えた。

 舌を入れる。クイも入れてくる…。が、


「ふごっ」


 クイが、急に体を強張こわばらせた。

 沙織が物凄い勢いで気を吸っているのだ。


 さすがに、鬼の気の量は半端はんぱでない。沙織は一分ほど、そのまま吸い続けた。

 そして、口を離した。


 クイは、放心したようにグッタリして動かない。

 沙織はゆっくり腰を上げ、挿入されているクイのモノを、自分の股間からヌチョッと抜き出した。

 出て来たモノは既に小さく萎んでいたが、股間からそれを出してしまっても、まだジンジンと痛い。

 しかし、そんなことに構っていられない。沙織は、クイの持っていた恵美の短刀を取り上げ、鞘から抜いた。


「恵美の仇!」


 クイの首に、ズブッと突き刺す。

 喉が裂け、ヒューっと空気の抜ける音がする。


 さらに、もう一度。

 頸動脈が断ち切られ、血が勢いよく噴き出す。


 返り血で真っ赤に染まりながら、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も突き刺す。


 やがて、首が断ち切られ、胴体から離れてゴロッと転がった。

 足元に転がった鬼の首の、焦点が外れた目を見て、沙織はハッとした。


(こ、殺した……。私、殺しちゃった。 殺しちゃった……)


 沙織は、短刀を持ったまま、へたり込んだ。






「祥子さん、あそこ! あの小屋の中」


 恵美が指差す。畑の向こうに見える小屋。


「あ、で、でも……。 急がなくても大丈夫みたい…」


「はあん? どういうことじゃ?」


「い、いや~、行けば分かります…」


 恵美は千里眼で、中で何が起こっているのか、見えている。

 だが、祥子には、分からない。

 急がなくても良いと言われても、そういうわけにも行かない。

 恵美を背負ったまま小屋の前へ、素早く着地した。


「沙織!」


 恵美が、祥子に背負われたまま、小屋の外から呼ぶ。


「え…。 め、恵美?」


 外からの声を聞いて、沙織は土間に飛び降り、戸を開けた。


「な、何じゃあ?!」


 祥子が、った。

 髪を振り乱し、素っ裸で、全身血まみれ。手には血の滴る短刀を持った沙織が出てきたのだ。


「め、恵美! 生きてたの!」


 そのまま駆け寄ろうとする沙織を、祥子が手振りで止めた。


「ま、まて、危ない!そんなもの振りかざして近寄るな。どうなっておるのじゃ!」


 沙織は手に持っている血のベッタリ付いた短刀に気が付き、あわてて投げ捨てた。

 そして全裸であることにも気が付いて、しゃがみ込みながら両手で胸を隠した。


「お、鬼は如何いかがした?」


「沙織が一人でやっつけたのよね~。あの力を使って~」


「いやだ、千里眼で見てたのね恵美!」


「あなたは最強よ~!」


「いやだ~。 ……っ!」


 沙織は、しゃがみ込んだまま顔を両手で隠そうとしたが、手が血で赤く染まっているのに気付いて、ギョッとしてやめた。

 祥子は、恵美を背から降ろす。


「とにかく、スマホとかいうやつで助けを呼べ。そなたらの着替えも頼めよ」


 そういえば、恵美も自分の胸があらわになっているのに気が付いて、サッと両手で隠した。


「すっかり、忘れてました~。あ~。沙織にはティッシュも必要ね~」


「へっ?」


「だって、ほら、鼻血…」


 恵美は、沙織の顔を指差す。

 トロ~っと両方の鼻から流れている鼻血。あのまま手の血を顔にねたくり付けてしまっていた方が、隠せて良かったかもしれない…。


 祥子が微妙な笑顔を見せた。


「ほほ、そうか、淫魔の力を使ったのか。で、鬼の気を吸い過ぎたな…」

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