第66話 鬼の事情1
鬼の住む、妖界の月影村。
こちらは、大変なことになっていた……。
三年前の六月三日。
突如、村の中心地に白い光が現れ、「災厄の種」が出現した。
…木の箱に入った胎児。流れた
近くにいた若い鬼が、光の中から突如現れた小箱を驚きながら手に取る。
軽い木箱で、危険なモノとは思えない。
開けて中を見ると、小さな干からびた変なモノが入っているだけ。何なのか、分からない。
若い者中心に大勢集まって、中のモノを見たり触ったり、大騒ぎになった。
騒ぎを不審に思って、近くに住む老鬼が顔を出した。
若者に道を空けさせ、騒ぎの中心に進む。そして箱を確認し、
…村の古い言い伝えにある、流れた
すぐに蓋を閉じさせる。しかし、時すでに遅かった。
……水子となった
未知の疫病が
最初は、箱に触れた者からだ。風邪のようであるが高熱が出て呼吸困難に陥り、バタバタ倒れてゆく。
やがて家族に伝染。皆、同じ症状となる。
隣家にも伝染、次々、皆倒れてゆく。
そして、多くの者が、そのまま息を引き取ってしまう……。
実は単なるインフルエンザなのであるが、全く免疫がない鬼たちにとっては、恐るべき死の病となったのだ。
村の賀茂神社にて、原因究明の神事が行われた。
神社に安置してある宝珠が、今回の禍事の原因を映しだす。
…巫女が三人の男に犯され、腹を蹴られ、
この禍を鎮めるには、巫女の首と、子袋=子宮が必要。胎児を巫女の子宮に戻し、巫女の首と一緒に封印するしかない。
原因の男らにも天誅を下す必要がある。
産まれてくる
月が満ちるのを待ち、六月八日。神鏡によって人界へ繋がる「異界の門」が開かれた。
人界へ送られたクイは、まず、男たちに天誅を加えに向かう。
犯人三人は同じ場所にいる。そこも宝珠に映し出されて、判明していた。
それは、警察署。
ここには危険な武器を持ったヒトが大勢いることがわかっている。一気に、方をつけなければならない。
クイは警察署に入るや否や、手あたり次第に金縛りにした。その上で、クイに拳銃を向けている者は、即、突き殺す。
留置所に行き、鉄格子を
開いた隙間から入り、中で
二撃で肉の塊と化し、一人目、終了。
そして、二人目。
三人目も…。
標的を殺し終えたら直ぐにそこを出て、次の場所へ移動する。
次の目的地。入り口を壊して押し入る。
邪魔をしてきた中年男女二人は、突き殺す。
二階へ上がり、巫女を見つけた。
そして、その小さな白い腹を突き破った。…子袋を取り出さなければならないのだ。
巫女は、呻き声をあげながら、口から汚物をドロドロと吐き出す。
構わず腹を大きく裂き開け、中に詰まっている臓物をズルッと引きずり出した。
…クイは父親が言っていたことを思い出した。
クイの父親は、前回の
それが、とてつもなく美味かったというのだ…。
今、クイの手には、巫女のハラワタが握られている。
とても軟らかで、温かい。赤紫色をした細長い小腸だ。
美味いのか?
噛むと中から、ほろ苦いモノが出て来る。
うん、確かに美味い…。
続けて啜り喰う。
太い大腸は更に苦いが、これも悪くはない。
腸を食ってゆくと、子袋(子宮)が見えた。これを持って帰らなければならない。つかみ出して千切りとった。
仰向けになって、体をビクビク
巫女の肩に足を乗せ、首をしっかり持って、力任せに引っ張る。
ゴキゴキ、ブチッ!!
鮮血が噴き出し、首が
そして、その血を
持ち帰られた巫女の首と子袋は、この
子袋の中には、胎児が戻される。
その前で祈祷が行われ、御殿は封印された。
結果、疫病は徐々に静まっていった。
しかし、完全に病が治まったときには、村の人口は十八人になっていた。それ以前は九十五人であったのに…。
この人数では、村が立ち行かない。特に年長の者が
このようなことになったのは、ヒトの身勝手が原因であり、ヒトの責任だ。全滅覚悟で打って出ようという過激な意見まで出てくる。
生き残った
そして、一年、二年、三年経った。
ついに、皆の、見えない未来に対する不満が抑えきれなくなった…。
このままではいけない。何とかしなければならない。
そして、何をするにも、人手が足らない。まず、人口を増やさなければならない。
そのためには、子供だ。子供が増えれば希望が湧く。育てるのに更に人手が
協議の結果、
…実は、鬼の住む妖界では、通常では子が産まれないのだ。
妖界で子を産むことが出来るのは、特別な力を持つ
だが、女たちも、人界へ行けば、普通に子を産むことが出来る。
古い時代は若い女が人界へ行き、ヒトと交わって子をなしていたのだ。
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