第59話 あなたも、処刑

 母屋の広間。いつもの就寝部屋だ。


「はい皆さん、お疲れさまでした。

では、これから今日の締めのお仕事です。が、その前に」


 舞衣の言葉に、皆注目した。


「もう一人、刑罰を受けてもらう人がいます。それは、あなたです」


 舞衣が指差す方向には……。


「へ? わ、私?」


 差されたのは恵美だ。

 祥子が念力で恵美を浮かし、やはり念力で寝着をぎ取って裸にした。


「いや、いや、なに、何なの。こら~、祥子さん、裏切ったな~」


其方そなたは、やり過ぎなのじゃ。自業自得と知れ」


 恵美は宙に浮かんだまま、抵抗できずに股を開かされた。


「さあ、慎也さん、存分に処刑していいわよ」


 舞衣の許可に、慎也はニヤッと笑った。


「この悪戯いたずらっ子。覚悟しろよ~」


「ひや~、やめて。ゴメンナサイ。もうしませんから許して~!

あ、ダメだって、さっきみたいになったら、後が大変よ。

ホントに、やめようね。こういうのは~」


 慎也は構わず、恵美の秘部に指を二本突っ込んだ。


「ひや~! ダメー!!」


 恵美の絶叫が響き渡った……。





 翌日。恵美は起きてこない。

 昨日は結局、許してもらえるはずもなく、恵美は失神させられた。

 慎也が微妙に加減したので、亜希子の様に脱糞するまでには至っていない。だが、ダメージが大きく動けない模様。

 それを沙織が、心配して見に来た。


「恵美、生きてる?」


 恵美は布団をかぶったまま答える。


「恵美は、昨晩死亡しました~」


「バカですか。死んでたら答えないわよ。

今日は動けないでしょ。一日お休みで良いってよ」


「はい~。恵美は反省しました~。もう変な悪戯いたずら致しませんって言ってたって~、皆様にお伝えください~」


「どうしちゃったのよ。気持ち悪い…。また何かたくらんでないでしょうね」


「だから~、もうしませんってば~。だけどね、あ、あの~」


 恵美は、布団の中から小声でいた。


「確認だけど……、私…、昨日…、お漏らししてないよね」


「………」


「ねえ、してないよね? 何で答えてくれないの~!」


 沙織は噴き出した。

 恵美は失神している間に、自分が亜希子のような醜態をさらしてしまっていなかったか、心配していたのである。


「どうかな~。自覚無いのかな~」


「えっ……。 もしかして、しちゃった?」


「………。してないわよ。安心しなさい!」


「ふへ~」


 布団中で、脱力している様子が見て取れる。さすがに、今回は懲りたであろう。


「ご飯は後で持ってくるからね。じゃあ、お大事に」




 沙織は次に、亜希子の様子を見に向かった。


「叔母様。入るわよ」


 もう名前呼びの必要もない。部屋に入ると、こちらも布団をかぶっている。


「生きてますか?」


「死んでます」


「誰かと同じようなことを…。死んでたら、返事はできません!

気分はどうですか?フィンガーアタック、すごかったでしょう?」


 ………。


 返事が無い。


「今日は、動けないと思うから、ゆっくりしていてください。ご飯は後で持ってきますから」


「あ、あの、沙織さん…」


「はい? 何ですか?」


 今まで「沙織」と呼ばれていたのに、「さん」が付いている……。不審げに亜希子の布団を見ると、亜希子は、布団から顔を半分だけ出した。


「あなたたち、あんなの受けて平気なのね……。

すごいのを通り越してる。敬服します。

これから私は、あなた方の下僕です。何でも致しますので、御用ありましたら遠慮なくおっしゃってください。

皆様にも、そのようにお伝えください」


 何か誤解しているようであるが、こっちの言うことを何でも聞いてくれるというのだから、まあ、訂正する必要もないだろうと、沙織は判断した。

 大人しくしてくれるのなら、あの写真も使う必要ない。あれは、いざという時の保険だ。


 一方、その当人、亜希子は思っていた。


(こいつら、普通じゃない。絶対おかしい。

子供も五カ月で産むっていうし、もしかして人間じゃないのかも。

いや、絶対そうだ! 人間じゃない! 妖怪?化け物?悪魔?

逆らったりしたら、何されるか分かったもんじゃない!)





 亜希子は、あの後、回復するのに、まる二日かかった。

 その後は、慎也の家にいても、やることが無いので、もともと勤めていた名古屋の研究機関に通っている。

 まあ、慎也の家にずっと居るのが、怖かったのかもしれない……。日中は仕事に戻り、夕方には慎也宅に帰って来るのだ。

 帰って来たくなくても、命じられて派遣されている身。帰って来ないわけには行かないだろう。まさに「ご愁傷様」だ……。

 最寄りの岐阜羽島駅から名古屋駅まで、新幹線で十一分。後は地下鉄で十五分。通勤には非常に便の良い場所だったのは、幸いだった。



 恵美は、あの日、意識を取り戻した時には、みんな既に眠っていた。


(もしかして、私も、亜希子の様に無様に脱糞してしまったの?)


 不安で、不安で、たまらなかった。

 恥ずかしくて、みんなに顔を合わせられない。

布団をかぶり、朝、みんなが起き出て行くまで、寝たふりしていた。

 その後に、沙織から大丈夫だったと聞かされ、やっと安心して眠れたのだった。


 一日でなんとか回復した後、二~三日は大人しくしていたが、一週間も経たずしてすっかり従前通りだ。

 慎也としては、お淑やかな恵美の方が可愛らしくて好みだが、まあ仕方がない。





 不倫疑惑事件から一週間と少し。

亜希子は、あれ以来オドオドした感じが抜けない。

 が、ここ数日、少し機嫌が良さそうだ。

 沙織がいてみると、年下の彼氏が出来たとのこと。明らかに落ち込んでいた亜希子を心配して、話しかけてきてくれたそうである。

 亜希子は美人でスタイルも良い。四十二歳とはまるで思えない美魔女だ。

 あの性格が災いして独り身で居たのだが、落ち込んで大人しくしていたものだから、男が寄ってこないはずがない。眉目秀麗で、二歳年下、頭の回転もよく、文句なしの彼氏だということであった。

 なお、「彼氏ができたのも皆様の御蔭」と殊勝なことを言っている。

 本心なのか、どうなのかは不明であるが……。


 その亜希子が、夕食前に皆のところへやってきた。(あれ以来、亜希子は別室で食事をとるようになっている)


「あ、あのう~。皆様、申し訳ありませんが、少しお時間頂けますか?」


 視線が集まり、亜希子は、またオドオドする。


「ええと…。血液検査と尿検査の結果ですが、皆さま、全く問題ありません。

お腹のお子様は、やはり、成長が早いです。通常の倍くらいです。

それから…、その……。性生活に関してですが……。

私は専門で無いので、産科の医師の見解を伺ってきたのですが………」


「なに? 早く言ってよ!」


「は、はい! そ、その、不特定多数とのセックスは控えるようにとのことでしたが…。

皆様は複数ですが、不特定でなく、正式なパートナーですので、この点、問題は無いかと……」


「そうね。叔母様みたいな人がいなければ、大丈夫ね」


「は、はい! 申し訳ございません!」


 沙織のキツイ一言に、亜希子は深々と頭を下げた。


「あ~、もういいから、早く次に進んで」


 自分で話の腰を折っておいて急かすという、理不尽な沙織の言葉にも逆らわず、亜希子は、慌てて続ける。


「は、はい、それでですね。指を挿入するのは、感染症の恐れもありますので、妊娠中は御控えになられました方が宜しいかと…。

それと、皆さま妊娠中ですので、あまり負担になる体位は御控え頂きまして、お子様が大きくなられてきましたら、行為もやはり、御控えになられました方が良いということですが……」


「そっか……。まあ、そうよね…。龍の祝部の精を受けるのが無事に産むために必要って言ったって、限度があるものね。

まあ、お腹が大きくなってきたらってことね」


「はい、そういうことのようです。

あ、あと…。沙織さん、杏奈さん、環奈さんにですが。お母様が大変心配しておられます。それで、写真が欲しいとの御要望なのですが……。できましたら、皆さまで……」


 皆、並べられた夕食も入れて、にこやかに写真撮影。

 但し、慎也は弾き出された。


 沙織たちの母は、慎也を快く思っていない。というか嫌悪、いや憎悪している。

 当然である。大事な娘を三人も「盗られて」しまったのだ。許せるはずもない。

 ということで、慎也は写真に入れてもらえなかったのだ。


 但し、沙織たち母親に送るのとは別に、皆そろっての写真も撮った。

 これは、後に慎也の部屋に飾られることになる。

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