第43話 レイプ

 座敷…。


 ブリブリ怒っている舞衣に替わって恵美が、記者の来訪と失礼極まりないその言動を告げた。

 恵美は沙織に、父親へ連絡するよう依頼した。

警備を強化してもらうためだ。…沙織の父親は公安警察のトップである。


 とんだ邪魔が入って白けてしまったが、沙織のケーキも切り分け、そろって食べる。

 味も好評。皆、満腹・満足……。


 甘い物は偉大だ。舞衣の機嫌も回復してきた。



 食器と机を片付け、恵美・沙織・杏奈・環奈が、座敷に布団ふとんを敷く。

これだけの人数が寝られる部屋は、この広間だけなのだ。


 美月が手伝おうとしたが、四人の手際についてゆけず、まごまごしている間に、敷き終わってしまった。


「あ、あの…。ホントに、みんな一緒なんですね……」


「そ~よ~。ひめゴトじゃないのよ~。順番に~、公開セックス~!」


「こ、公開セック……」


「恵美、やめなさい! 美月さん赤面してるじゃない」


 沙織にたしなめられ、恵美はペロッと舌を出した。


 美月は、緊張が少し解されるのを感じた。

 が、慎也は軽い頭痛を覚えた。

七号さん誕生。一人増えてしまったのだ……。



「さてと、今日の順番は……」


 舞衣の声に皆、美月を見る。


「えっ、わ、私?」


 美月はキョロキョロと見回し、周りの視線を確認した。

 舞衣が手でうながす。


「美月、どうぞ」


「はい。では、御主人様をお借りします」


「ちょっと、そういう言い方はやめて! みんなの共有物よ」


「あ、あの舞衣さん…。その言い方も、あんまりだと思いますが……」


 慎也の軽い抗議を、舞衣は聞こえないフリしている。

 これが女性陣皆の共通認識だ。仕方がない。


 美月は、サッと裸になって、慎也の布団に入った。


「改めまして。よろしくお願いします」


 恥ずかしそうに小声で言う彼女に、慎也は唇を合わせた。

 舌をからませ合う。


 慎也の手が、美月の柔らかい胸の膨らみを……。


 そして、秘部を……。


 繋がる……。


 舞衣は『みんなの共有物』と言うが、尊敬する先輩の正式な配偶者と肉体関係を結ぶ。しかも、その先輩に見られながら…。

 かなりの背徳感を感じながらも、美月は快感に落ちていった。


 十分に満足させられ、精を注がれた美月。


 続いて沙織、杏奈・環奈、恵美、祥子、そして舞衣。

 途中、祥子から、また祥子経由で杏奈と環奈から気の供給をうけながら、皆、十分に満足して眠りについた。


 慎也は消耗で、そのまま気を失うように眠ってしまった。





 六月一日、朝。


 美月は朝食後に、一旦、滋賀県のアパートへ帰った。

 明日から正式に舞衣たちの仲間入りをする約束をして…。


 午後六時には、実家で誕生会の約束がある。

それまでの時間で、越して間もない部屋の片付けをした。


 片付けといっても、布団ふとんや身の回り品以外の荷物はほとんど梱包状態のまま。

不要なものは出さずに、このまま再発送してしまった方が、手間が無い。


 舞衣のところに、あまりたくさんの私物を持ち込んでも邪魔になりそうな気がする。

 豪邸といっても、何しろ向こうは大人数だ…。


 とりあえず、最低限必要な物を出して、すぐ持って行けるように旅行バックに詰めた。

後の物の処分は、また舞衣に相談することにする。



 頃合いを見計らい、アパートを出て、実家に向かった。


 電車で二十分程度、駅から歩いて一〇分弱。

 足取りは、軽くは無い。

どう説明しようか考えると、憂鬱ゆううつでしかない。


 しかし、到着した実家では、は温かく迎えられた。

 向こうから問い詰めるようなことは一切してこない。


 …まるで、腫物に触るような扱いだったのだが。


 居心地の悪さに耐えながら、美月はとにかく、謝った。心配かけてしまったことを。

 そして、明日からしばらくの間は、舞衣のところへ世話になることにしたと報告した。


 両親からあっさり承諾を得て、少し拍子抜けした感もあったが、真剣に打ち込んでいた芸能活動が出来なくなって傷心中だと、気を使ってくれているのだろう。

 一人になるのではなく、舞衣のところへ世話になるというのも、安心だったのかもしれない。

隣県であるし、具体的にどういうことなのかを話していなかったから…。




 互いに気を使い合っての誕生会も、それなりに進んでいって終了。

泊ってゆけと言われたが何となく後ろめたくて、美月はアパートへ帰ることにした。



 実家を出たのは八時半。既に暗くなっていた。


 電車に乗り二十分、アパートの最寄り駅に着く。

小さな寂しい駅だ。

 この駅で降りたのは美月を含めて五人だけ。美月以外の四人は、彼女と反対方向へ歩いて行った。


 つい先日まで居た東京と違い、田舎の夜は早い。

暗くなってから徒歩で出歩いているような人は、ごくまれだ。

 美月は、街灯も少ない暗い道を一人で歩く。


 アパートまでは、歩いて一〇分くらい。

 それなりに人家が並んでいる道だが、やはり、他には誰も歩いていないし、通りかかる車も少ない。

 だが、丁度、中間くらいまで来たところで、目の前に、急に人が出てきた。


 美月は大いに驚いた。


 ただ人が出て来ただけではないのだ。

腕をつかまれ、そして口を押えられたのだ。


(な、なに? 嫌!)


 叫び声を出すことも出来ない。

そのまま、細い路地に引きずり込まれ、地面に仰向けに押さえつけられる。


 相手は体格の良い男。全く知らない奴だ。

 しかも一人でない。路地奥に、あと二人いる。

 合計三人。

 下卑た笑い顔を美月に向けていた。


 服が破かれる。


 ブラジャーも引きちぎられ、乳房があらわになる。


 見ていた二人も加わって三人がかりで押さえつけられ、ショーツもぎ取られた。


 両脚をつかまれ、股を開かされる…。


 最初の男の股間に屹立きつりつしたグロテスクなモノ。

 それが、いきなり、そして無理やり、美月に……。


(い、イヤー!)


 抵抗しても、男三人の力にはかなわない。

男の気持ち悪い猥褻物が、繰り返し美月を蹂躙じゅうりんする。


 男の激しい動きの後、美月の中へ男の体液が…。



 すぐに、次の男に犯される。

 また次の男……。


 三人に次々と輪姦され、涙を流している美月に、最初の男がつばを吐きかけた。

 そして、美月の下腹部を思いきり踏みつけた。


 …激痛。

 息も出来なくなるような痛み…。

 彼女からは、三人分の白い汚液が噴き出す。


(……だ、ダメ! 赤ちゃんが!)


 必死に抵抗を試みるが敵わない。二人の男が押さえつけているのだ。

 何度も何度も腹を踏みつけられ、股間を蹴られる。


 やがて、白い液に代わって、赤い血が出てきた…。


 意識が遠くなる……。





 美月が気付いた時、彼女は病院のベッドの上だった。

 変な物音に気付いた近くの住人が、通報してくれたのだ。

 救急車で運ばれ、緊急の処置を受け、そのまま眠りについていた。


(……お腹が痛い。ズキズキする。私の赤ちゃんは、どうなったの?)


 美月は、近くにいた看護師を捕まえて問い詰めた。


 看護師からは、言いにくそうに、お腹の赤ちゃんが流れてしまったことが告げられた。


 美月は布団ふとんをかぶって、声を上げて泣いた……。

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