第62話 全裸で風を切る

 朝になったのでまた小島に渡る。

 途中、水面が盛り上がり、昨日の大蛇が出て来た。

 懲りない奴だな。

 サクっと水に浮かんでもらった。


 小島に着くと彼女がやはり俺をガン見していた。

 見られるぐらい別にいいけど。

 減るもんじゃないし。


「良く眠れたか」

「いいえ」


 目のくまを見れば聞かなくても分かる。

 やっぱり一人エッチしてたのか。


「なに? なんか変な事を考えたわよね」

「いいや平常運転だが」


「まあいいわ。一晩考えたけど、今朝の大蛇との戦いを見て決めたわ。私の護衛をしてくれない」

「俺の護衛料は高いぜ。なんとエッチな事1回だ」

「あなた、好色なのね。なんとなくあなたという人が分かったわ」

「どうだ」

「分かったわ行きたい所があるの。連れて行ってくれる」


「お安い御用さ。で君は誰で? どこまで連れて行けば良い?」

「私はシャノン。連れて行ってもらいたいのはノルド邸までよ」

「護衛という事は襲い掛かってくる奴がいるんだろ。そいつらは誰だ」


「たぶん襲い掛かってくるのは雇われた人達よ。黒幕の名前は喋れない」

「そうか。まあいいか」


「ちょっとなんで脱ぎだすのよ」

「いや、湖を出ようと思って」

「私が魔法を掛けるわよ」


「全裸で風を切るのもいいかな」

「ほんと変態さんなのね」


「冗談だよ」

「ふふっ」


「女の子は笑った顔が美しい」

「全裸で言われる台詞じゃないわね。早く服を着なさい」


 飛行魔法を掛けてもらい湖を渡った。

 それからは徒歩で移動だ。

 彼女はあまり運動をしないのか、見ていて危なっかしい。


「大丈夫か」

「辛くなったら飛ぶから平気」


「そうか。いつでも言えよ。お姫様だっこしてやろう」

「触るつもりね」

「まあな。役得だ」


「顔に出ているし、このぐらい考えが読めるなら、この先もやっていけそうね」

「そんなに顔に出ているか」

「そうね。好色な顔をしているわ」

「皆に言われるんだよな」


「ところであの小島の事は誰に聞いたの?」

「ノルド老からさ」

「ノルドさんはお元気?」

「ああ、孫娘のリンダと仲良くやっている。ノルド老の息子さんには会った事がないが、家族みんな元気だという話だ」

「そう、それを聞けて嬉しいわ」


 それから進む事、半日。

 鳥が突然、森から大群で飛び立った。


「どうやらお客さんが来たようだ」

「ええ。あなたのお手並み拝見ね」


 黒ずくめの男達が俺達の前に現れた。


 敵に秘孔魔法・滅魔点穴を施し、秘孔魔法・金縛り拳を心臓に打ち込む。


「ぐっ」

「うっ」

「くっ」


 男達はあっけなく全滅した。


「すごいのね。魔力感知で見たけれど、魔法を打ち込んだらみんな死んだわ。魔法の速さが尋常じゃないのね。興味深いわ」

「吹き矢あるだろ、あれの原理だ。風魔法で筒を作って風の弾を撃ち出す」

「なるほどね。でも風の魔法を撃ちこんだにしては傷がないわ」

「そこは企業秘密だ」


 それから、街には簡単に辿り着いたが、ここからが厄介だ。

 俺にとっては人混みだと暗殺者が分かりづらい。


 雰囲気を見て人を判断するなんて芸当は出来ないからな。


「俺におぶされ」

「なによ。まだ歩けるわ」


「隠蔽魔法の範囲が狭いんだよ。一人分がやっとだ」

「仕方ないわね。お尻、触らないでよ」

「触らないとおぶれないだろう」

「好色な顔してるわ」


「場所はわきまえるよ」

「もう、仕方ないわね。手を変に動かしたら、つねってやる」


 シャノンをおぶる。

 胸が背中に当たり、手が尻の感触を伝えて来る。

 おぶるという行為がこんなにもエッチだなんて。

 思わず尻の幻影魔法を展開してしまった。

 尻に囲まれながら、街中を行く。

 転移魔法使いの所に到着した。


 ここで姿を現さないと転移して貰えない。

 だが、俺ならここで見張る。


 魔力感知の範囲はFランクだと一部屋が限度だ。

 俺は魔力感知の魔法陣を見る。

 ポッチだな。

 これはシャノンの桜色のポッチ。


 魔力感知で調べた、シャノンの縦筋を想像。

 魔法をEランクに引き上げた。


 隣の部屋に潜んでいる奴がいる。

 場所が分かればこっちのもの。


 そよ風の手を隣の部屋に侵入させて、秘孔魔法・滅魔点穴を施し、秘孔魔法・金縛り拳を打ち込む。

 殺さなかったのは一般人だと不味いからだ。

 人違いの可能性も捨てきれないからな。


 姿を現し転移魔法を掛けてもらった。

 ノルド邸まであと少しだ。


 だが、ノルド邸まであと少しという所で囲まれた。


「隠蔽魔法が見破られている。合図したら走れ。3、2、1、行け」


 シャノンが走る。

 俺は正面の敵を金縛りにした。


「くそう、逃がしたか。追え」

「俺がいるのを忘れてもらったら困る」


「うわっ」

「うぐっ」

「くそっ」


 十数人があっという間に死んだ。


「何をした」

「心臓を止めさせてもらった。お前も死ね」

「うっ」


 片付いたな。

 死因は心臓麻痺だから当局も悩むだろうな。

 たぶん呪いの仕業とかで片が付くんじゃないかな。


 さて、シャノンは無事に着けただろうか。

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