第55話 蟻走感で濡れ濡れ

 今日はアイナとモーラを連れてノルド老の御屋敷にお邪魔した。

 モーラ邸より数倍広い。

 それに物凄く濃い魔力だ。

 モーラ邸が10倍だとすればここは20倍ぐらいはあるだろう。


「お邪魔してます」

「あれからお加減はどうですか」

「厚かましく押し掛けまして、すいません」


「いらっしゃい。すっかり良くなって、ヒロ先生、さまさまじゃわい。実は見てもらいたい物があるんじゃ」


 差し出された魔道具らしき物を見る。

 どうやら、魔力を集め体内に引き込む魔道具のようだが、これではまるで攻撃だな。


「魔力を溜めるのに良さそうだが」

「おお、分かりましすか。何か不審な点でもおありで」


「これは魔力を叩きつける攻撃だよ。魔力は溜まるが体には良くない」

「なんと」


 ノルド老は呼び鈴を鳴らすと人を呼びつけた。


「これを売り込んだ商人を連れて来い」

「はい、ただいま」


 しばらくして護衛を引き連れた脂ぎっている男がやって来た。


「これはノルド老、商品は気に入って頂けましたか」

「馬鹿もん。この魔道具は魔力で攻撃するものだ。呪物に等しい」


「えっ、そんなはずは」

「ではその魔道具を身に着けて、しばらくこの屋敷で過ごすが良い」

「くっ、出所が怪しかったがそんな事だとは」


「俺がその魔道具をちゃんと作動するように直してやろうか」

「何だこの男は。若造が」


「ヒロ先生になんという暴言を」

「いや、いい。直してもいいか」

「やれるものならやってみろ」


「では」


 そよ風の手で魔道具の魔力の流れをいじる。

 集めた魔力を叩きつけるからいけないんだ。

 優しく包み込むように展開させる。


「できたよ」

「何も変わってないぞ。このイカサマ師が」

「何なら、この魔道具を元に戻す。いいや、数倍凶悪にしてやろうか」

「やってみろ」


 俺は魔道具の叩きつける魔力を鋭くして、商人に向けるようにした。


「うぐっ、この痛みは。攻撃されたのか。魔道具ではなくお前がやったんだ。おい、この男を痛めつけろ」


「先生、ここはわしが」

「いや、いい。こんなのは容易い。見ていろよ」


 秘孔魔法・金縛り拳を連発。

 商人が連れた護衛は金縛りになった。


「先生に敵う訳などない。若くして達人なのじゃ」

「すいませんでした」


 俺は再び魔道具を直してやった。


「魔道具の金がまだだったな。この魔道具は無料だ」

「そんな、元金も回収できない」


「わしの屋敷で暴れておいて良く言えるな」

「分かりました」


「先生にはこの魔道具の代金、金貨100枚をお支払い致します」

「悪いな。貰っておくよ」


「くそう、ヒロとやら覚えておけよ」

「まだいたのか。さっきの魔道具の攻撃で体が痛むだろう。治して欲しかったら金貨100枚持ってくるんだな」


 商人は無言で出て行った。


「わしも老いたのう。人を見抜く自信はあったが、揺らぎましたわい」

「ノルド老は何をしている人なんだ」


「インフィニティの幹部をしております」

「まあ、あのインフィニティ」


 モーラが何か知っているようだ。


「知らないな」

「知らないのは、あなただけよ。5派閥のうちの一つだわ」


 アイナも知っているらしい。


「誰か説明してくれるか」

「ではわしが。インフィニティの目的は魔力を溜める事じゃ。じゃが溜めた魔力は死ぬまでに使わんともったいない。いかにして溜めて、いかにして使うかを求める」


「なるほどね。話に聞いた事だが、交合すると魔力の溜まりが早いらしい」

「魔力の吸引で重要なのは集中力じゃ。インフィニティでは雑念を取り払い集中するのが基本じゃ」


 この考えはエロ魔法道とは相容れないな。

 エロによる集中。

 これに勝る物はないと思っている。


 帰り道。


「臨時収入もあった事だし、リノアの店でぱーっと使うか」

「良いわね」

「そうですわね」


 3人でぬいぐるみコーナーに行った。


「店員さん、ぬいぐるみを端から端まで全部だ。魔法学園の寮まで届けて欲しい」

「全部で金貨24枚になりますが」

「安いな。リノアによろしくと言っておいてくれ」

「お嬢様のご友人でしたか。納得です」


「お礼にエッチな事してあげる。でも本当にえっちなのは駄目。ハグよ。ハグしてあげる」

「一人金貨12枚のハグか。高くはないな。お金じゃ買えないしな」


 マッサージ屋でアイナと抱き合う。

 体温と鼓動が伝わる。

 こういうのもゆったりとした気分になれるな。

 でもエロを忘れたら俺じゃない。

 そよ風をムカデの形にしてアイナの服の隙間に入れる。


「きゃ、虫が入ってきた」

「どれ見てやろうか」

「脱がす気ね。どうせあなたの仕込みでしょう」


「なんだばれたか」

「ちょっと、そんな所に入れないでよ」


※済まない、ここから先は自主規制なんだな。


「本気で素っ裸になろうと思ったわ。虫のムズムズ感、気持ち悪かった」

「でも濡れてるぞ。どこがとは言わないが」


 思いっきり頬を叩かれた。


「酷い」

「もう最低」


「次は私とですわ」


 モーラと抱き合い。

 虫のそよ風を入れる。


風の鞭エアウィップ

「痛い。服の上から叩き潰された。じゃ4匹同時はどうだ」

「甘いですわ」


 虫を正面に集中させる。

 こうすれば俺が盾になって叩けないはずだ。


 風の鞭が俺の背中を叩く。

 くそっ馬じゃないんだぞ。


「あっだめっ」


 こちら、センチピード3、侵入成功。


※済まない、ここから先は自主規制なんだな。


「ずるいですわ」

「ふふっ、盾を使っただけだ」


「仕方ない殿方ですわね。上着を脱いで下さいまし。背中に薬をぬって差し上げます」


 上着を脱いで上半身裸になる。


「痛ったあ。二人して何を塗り込んだ」

「塩よ」

「お仕置きですわ。虫は大嫌いでしたから」


 もう、油断できないな。

 でも照れてる二人は可愛い。

 少し過激な愛情表現だから許せる。

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